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暴力をこの世から排除するために:暴力と道徳性の観点から

ベンヤミン「暴力批判論」前半

普段テレビで見かける殴る蹴るといった暴力

いじめの現場で行われている凄惨な暴力

上司が振るう「ことばの暴力」。

国が振るう軍事的暴力

これら全ては、僕らが日常あるいは過去に目にしてきた暴力の例です。

私たちの日常は暴力で溢れています。

しかし、暴力はいけない」とわかっていても、どう対処すればいいのかわからない

結果的に何もできず、暴力を黙認してしまう。

いくら心の中で「暴力はダメだ」言い聞かせても、それを止められない自分に、暴力の現場を見て見ぬ振りする自分に、無力を感じる、嫌気がさす

そのような人に、哲学者ベンヤミンの「暴力批判論」を是非読んでいただきたい。

ベンヤミンの「暴力批判論」は、暴力論研究の土台となる論考です。

暴力について語るには、まずはベンヤミン。

そこで本記事では、ベンヤミンの暴力批判論を参考に暴力について考えます。

本記事では以下のことが学べます。

1. ベンヤミン「暴力批判論」の前半部の要約と概要

2. 暴力を考えるための基礎知識

3. 正義と法と暴力との関係について


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①暴力が関わる現場

ベンヤミンは、冒頭で暴力がどのような場合に当てはまるかを述べています。

暴力の批判的検討という課題は、法と正義に対して暴力がどのような関係にあるかを描きだすこと

というのも、ある原因が・・・道徳的関係のうちに入り込むときはじめて、正確な意味で暴力となるからだ。

つまり、単なる殴る蹴るなどの暴力は、ベンヤミンの言う暴力とは異なります

ある行為が正義や法律などに関わるときに初めて「暴力」と呼ばれるのです。

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②ベンヤミンの法と正義

ベンヤミンは法と正義をどのように考えたのか?

まずはについてです。

まず一つ目のものについていえば、どのような法秩序でも、もっとも根本的な基本的関係をなしているのは目的と手段の関係であることは明らかである。さらにいえば、暴力は目的の領域にではなく、まずは手段の領域において求められるということも明らかだ。

この後の説明にも出てきますが、ベンヤミンは法を目的と手段の関係として捉えます。

つまり、「あるしたいこと(目的)を達成するために、あることをする(手段)」という関係が成り立つのが法です。

ある人がお金が欲しいとします(目的)。

その時に、誰かを脅して(手段)お金を得る(目的)時、暴力が成立するのです。

そして特にこの脅すという手段の領域で暴力は問題になるということ。

しかし、ここで留意するべきことをベンヤミンは指摘します。

暴力が手段だとすれば、暴力の批判的検討の基準はいとも簡単に手にはいるように思われるかもしれない。・・・暴力が正当な目的のための手段であるか、あるいは不当な目的のための手段であるかという問いとなって現れる。このような考え方によれば、暴力の批判的検討は、暗黙のうちに正当な目的の体型のうちに含まれていることになる。しかし、そういうことにはならない。

例えば、人質解放のための警察の突撃や誰かを助けるために人を殴ったりするように、一般的には暴力の目的が正しいかどうかという議論になります。

目的の正しさ如何によって暴力が正当かどうかが判断されます。

しかし、ベンヤミンは、暴力を単なる目的の観点から捉えるのは、議論の矮小化であると批判しています。

なぜでしょうか?

なぜなら、そのような正当な目的の体系が含みもっているのは・・・ある原理としての暴力そのものの判断基準ではなく、暴力を適用する個々のケースのための判断基準だからである。正当な目的のための手段としてでさえ、暴力一般、つまり原理としての暴力が倫理的なものであるかどうかという問いは、依然として答えられていないことになるだろう。

理由は単純で、目的の下で手段を考えるようにして暴力を語ると、暴力一般を考察するのではなく、単なる個別ケースやケースバイケースの暴力の判断をするだけになってしまうからです。

ベンヤミンは、殴る蹴るなどの手段としての暴力に焦点を当てると、「どのような状況で暴力を振るったのか?その場合の暴力は許されるのか?」という議論になり、力一般に共通して言えることや、その暴力一般について語ることができなくなると考えています。

ベンヤミンは、暴力一般を考察して、暴力の原理それ自体が倫理的にOKかどうかを批判的に考察したいのです。

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③暴力一般を語るために

では、暴力一般を考察するにはどうすればいいのでしょうか?

もっと詳細な判断基準が必要となる。つまり、手段が従える目的のことを考慮しないで、手段そのものの領域において区別をつけることが必要である。

つまり、目的のことはいったん置いといて、手段についてのみ切り離して考えてみようという提案です。

手段を精密に考察することで、暴力の考察につなげるという方法をとります。

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④正義も手段へ

正義について以下のように述べています。

正義[正しさ]が目的の判断基準であるとすれば、適法性が手段の判断基準である。しかし、・・・正しい目的は正当な手段によって達せられるものであり、正当な手段は正しい目的に向けられるものである、というドグマ

に陥ると言います。

つまり、正義を目的として考えてしまうと手段が正しい目的のためにあるという議論に陥るというのです。

誰かを助けるために殴りかかる場合、殴ることが誰かを助けるための正しい行為だと無条件に考えてしまうことを想定しています。

しかし、ベンヤミンは、その正当とされる殴るという手段と正当な助けるという目的が相反する場合もあり、その時にはドグマは論理矛盾に陥ると述べています。

結局、法のところと同様に、「目的の領域、またそれとともに正しさの判断基準についての問いは、ここでの考察のためには、さしあたり除外」します。。

法と正義のどちらでも、「手段」の観点から暴力を考えるという方向に進みます。

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⑤自然法的な考えと実定法的な考え

ここで、実は正義のところの議論にも出てきますが、自然法的な考え実定法的な考えをベンヤミンは導入します。

自然法は、名文化されていない常識みたいなある種のルールで、実定法は、法律として明確に文章で規定されている法のことです。

この区分は何なのか?

実定法が目的の絶対性について何もわからないとすれば、自然法は手段の制約について何もわからない

ベンヤミンは目的を考察から排除し手段の考察に心血を注ぎたいので、実定法的考察を選びます。

というのも、自然法的考察だと、手段がわからないからです。

自然法的考えは、極端に言えば、「人間の自由は尊重されるべきだ。自由に行動するのは正しい(目的)、だから他人の家に土足で入っても文句言うな」みたいなのを肯定してしまう可能性があるからです。

目的は自然法の性質上わかっていますが、手段に規定がなく何でもありになってしまうので、今回の暴力の考察には合わないからです。

他方、実定法は、自然法の逆です。

日本の法律のように、「何をしていいか」「何をしてはいけないか」が名文化されています。

しかし、それが正しいかどうかや何のためにという目的は実定法だけではわかりません

なので、目的を問わずに、手段を問えるのです。

ベンヤミンの議論にとって都合がいい。

さらに、

実定法はあらゆる暴力に対して、ある特定の条件下で暴力が適法性あるいは承認を手にすることになる歴史的起源についての証明を求める。・・・暴力の目的が一般にまた歴史的に認められているか、あるいはそういった承認が欠如しているか、ということにもとづいたものでなければならない。

と、考察を深めてます。

実定法で定められていることは、「たとえば過去の過ちからその過ちを取り締まる法律を作ろう」というように、歴史的起源があります。

それにもとるかどうかという話をしているのです。

ここで目的の投入です。

その歴史的な承認がない目的を、「自然目的」とし、そのような承認のある目的を、「法的目的」と呼んでいます。

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⑥まとめと整理

いろいろややこしい言葉が出てきましたので、整理します。

ベンヤミンは、暴力の一般的な性質、つまり暴力を原理的に批判的に考察することを目指しています。

そのときに、暴力を目的から考えると、暴力一般の考察はできず、さらにドグマに陥ることになります。

なので、手段に議論を集中して暴力を述べます。

そこで参考になるのが、(自然法的考え方と対比させた)実定法的考え方です。

実定法的考えだと、法の目的を考えずに済みます。

そして、実定法の下では、暴力に対しての適法性と歴史的起源が明らかになります。

実定法的考えの下で目的を導入します。

実定法的な適法性・歴史的起源に基づく承認を得た目的を「法的目的」と呼び、承認がない場合「自然目的」と定義します。

かなり長くなりそうなので、今回は、ここまでにします。

序論的な感じで、後半への準備段階ですね。

後半は、いよいよ暴力の一般考察を行います。

後半では、具体例なども出てきて比較的わかりやすいと思いますので、お楽しみに~。

追記:後半部分も作成しましたので「ベンヤミン「暴力批判論」の要約と解説 後半」をクリック。

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