「もう一回」|谷田 仁
https://note.com/tanijin_creation/n/na613c2a6bf70?sub_rt=share_pw
私が今まで生きてきて怒った顔を一度も見たことがない人がいる。 それが私の母方の祖父である。 祖父は穏やかで普段から動作はゆっくりしている。年のせいなのか忘れぽい所があり、「しまったしまった」と禿げた頭を自分の大きな左手でポンポン叩く癖があった。 そんな祖父は、自宅の一階に工房を持つ機械工だった。 お正月に、家族で母方の実家に行くと、昔に自作して特許を取った南極大陸探索船のエンジンのパンフレットを配る。「ハイハイ」となだめて、祖父の自慢話を聞きながら美味しいおせち料理やお寿司など食べるのが恒例と...