
・なかなか優秀な営業マンが育ちません。
・営業人材育成の方法を教えてください。
営業の心理学を発信していると、優秀な営業マンの育成に困っている方が多いと気づきました。
自分と同じか、それ以上に営業ができる若手の人材育成は、企業の喫緊の課題です。
営業が育成できなければ、いくら優れた製品やサービスを作っても売上は立ちません。
そこで、今回は、優れた営業マンの特徴を5つ上げ、営業人材育成の場面でどの能力を育成すれば、仕事パフォーマンスが上がるのか?
その心理学の研究を紹介します。
本記事では以下のことが学べます。

2. 仕事パフォーマンスにつながる、育成すべき2つの能力
3. 営業スクール等に通わせる意味はあるのか?
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①仕事パフォーマンスが高い優秀な営業人材に共通する5つの能力
営業マンを育成するには、まず営業で必要などの能力が営業パフォーマンスに関係しているかを知らないといけません。
それを教えてくれる研究が、Verbekeら(2011)の研究です。
彼らは、営業で必要とされる能力を研究した論文を集めて分析し直し、一定の研究の宝庫性を探るメタ分析の手法を使って、営業で仕事パフォーマンスに関係する要因を5つ見つけました。
メタ分析は、正確に行われれば、最もエビデンスレベルが高い研究と言われています。
詳しくはこちらの記事をご覧ください↓
メタ分析の結果、以下のような図の結果になりました。
※以下二つの図は、私が論文の数値を参考に作成しました。
この図のように、「役割の明確さ」「認知的適性」「適応度」「販売知識」「仕事のエンゲージメント」の5つの能力を持つ営業マンが、仕事パフォーマンスが高い傾向にあります。
「役割の明確さ」とは、役割が不明瞭なことと反対の能力です。つまり、効率的に仕事で能力が発揮できるのに十分な情報を持っていて、どんな役割を期待されているか明確な状態です。
次に、「認知的適性」とは、IQや言語的知能のように、一般的な頭の良さを示します。例えば、言語化が上手な人や計算力のある人、計画性が高い人などがあります。
次に、「適応度」とは、実際に商談の時に、お客さんとの会話やお客さんからの情報から営業の仕方を変えられる能力を意味します。つまり、柔軟にお客さんに対応できるかですね。
次は、「販売知識」です。これは、商品知識と顧客に対して最適な商材を提示できるかも含めた能力です。営業のテクニック的な能力も入ります。
最後は、「仕事のエンゲージメント」で、これは、営業行為を達成するまで一貫してポジティブな感情的モチベーションを保てるかです。つまり、前向きでずっと仕事に臨めるかですね。
この5つの能力が優れた営業マンに共通していると、この研究では示されていました。
では、この5つの能力で、どの能力を優先的に育成すれば、優れた営業マンに育ってもらえるのでしょうか?
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②仕事パフォーマンスが高い優秀な営業マンを育てる2つの要因
実際に、営業スクールのテキストを分析して、営業育成の要因と仕事パフォーマンスの関連を調べた研究があります。
それが、Bolanderら(2014)の研究です。
分析結果は以下の図のようになりました。
この図によると、営業マンで重要とされる「信頼(ラポール)形成」や「相談的なコミュニケーション」は、営業スクール卒業後の仕事パフォーマンスに結び付くとは言えません。
一方、「利益の提示」と「感情的反応」は、営業スクール卒業後の仕事パフォーマンスに結び付くと考えられます。
前者の「利益の提示」とは、顧客に自社の商材を使うメリットを商談の時に示せるかどうかです。
後者の「感情的反応は」とは、説得的で、かつより記憶に残るように自社の商材を紹介できるかを示しています。つまり、提案の熱量であったり、共感的な頷きなど、感情的な反応が顧客に伝わるかです。
他方、「金銭的インセンティブの提示」はマイナスになっています。
つまり、「買えばこれだけキャッシュバックが受けられる」ような金銭的な利益を提示することは、有効とは言えなさそうです。
この結果と先ほどの研究を考慮すると、適応度を高くし、販売知識を豊富にした営業育成のカリキュラムが良いと思われます。
営業育成では、特に商品のことと顧客の反応に気を付けるように注意して、育成するのが良いかもしれませんね。
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③まとめ
以上より、優秀な営業マンの育成で必要な能力について見てきました。
まとめると以下のようになります。
- 優秀な営業マンには、「役割の明確さ」「認知的適性」「適応度」「販売知識」「仕事のエンゲージメント」の5つの能力が備わっている可能性が高い。
- 営業の育成では、特に、「利益の提示」と「感情的反応」を養う必要がある。
- 仕事パフォーマンスの高い優秀な営業マンの育成には、適応度と販売知識を優先して育成するのが最も仕事パフォーマンスに結び付きやすい。
もちろん、これらの要因だけではないです。
また、扱う商材や企業方針、個人の特性などにより、最適な人材育成方法は変わる可能性があります。
あくまでも、目安として、適応度と販売知識の二つの能力を育成するようにすればいいかなという感じです。
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参考文献
Bolanderら(2014). Sales Education Efficacy: Examining the Relationship Between Sales Education and Sales Success. Journal of Marketing Education, 36(2), 169 –181.
Verbekeら(2011). Drivers of sales performance: A contemporary meta-analysis. Have salespeople become knowledge brokers? Journal of the Academy of Marketing Science, 39(3), 407-428.
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