営業の心理学の研究では、営業戦略の重要性が叫ばれています。
よく行われる営業戦略は、ペルソナ設計がとても多いです。
また、「何十代の女性で」のようなペルソナ設計は営業成績向上にもつながりやすいです。
しかし、なぜ上手く行きやすいと言われる営業戦略をしても、上手く行かない営業マンが多いのでしょうか?
確かに、ペルソナ設計の注意点もありますが、営業マン自身の特徴もあると心理学では言われています。
今回は、営業戦略が上手く行える営業マンの特徴について心理学のエビデンスをもとに紹介します。
本記事では以下のことが学べます。

2. 営業戦略を上手く行うための必須能力とは何か?
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①営業戦略を上手く行える営業マンとそうでない営業マンの二分類
まず、営業マンが行うマクロな営業戦略にはどのようなものがあるのでしょうか?
Kwakら(2019)の研究では、保険会社を対象に、マクロな営業戦略として起業家精神・エンジニアリング精神・管理的精神の三つを想定しています。
各マクロな営業戦略は以下の通りです。
1) 起業家精神:自分が参入して成功する領域の選択
例)「市場や新しい商品の機会を同定する第一人者になる」など2) エンジニアリング精神:自分が参入して成功する領域の方向付け
例)「継続的に売るための新しい商品や技術や方法を勉強する」など3) 管理的精神:自分が参入して成功する領域の方向付け
例) 「定期的に実験して売ったり使い方を探ったりする」など
2)と3)は同じような意味で扱われていますが、エンジニアリング精神は作ることにつながり、管理的精神は試したりPDCAを回したりなどの指示的な役割の違いがそれぞれあります。
これら三つをどれだけ上手く使えるかで二つの営業タイプ(発掘者タイプ:積極的タイプと保護者タイプ:消極的タイプ)を用意し、主観的な営業成績や仕事パフォーマンスとどう結びつくかを調べています。
すると結果は以下のようになりました。

大事なのは、真ん中の白丸で囲まれた項目です。
ここで、発掘者タイプか、保護者タイプが表されています。
右側のグレーで色づけされている上側が、営業パフォーマンス。
グレーで色づけされている下側が、仕事満足度を表します。
すると、真ん中の白丸と営業パフォーマンスがプラスの関係で統計学的に有意です。
これは、発掘者タイプであるほど、営業成績が高くなる傾向だと示しています。
逆に、保護者タイプだと、営業成績は低くなる傾向です。
このように、三つのマクロ戦略を上手く行えるのは、発掘者タイプだと言えます。
発掘者タイプは、具体的には、「ずっと市場の最先端でいたく、いつも新しい商品や市場の第一人者の間にいたい」タイプです。
このように、先端を求め続けて自ら前に出るタイプの人の方が、営業戦略を立てて上手く成果につなげられるのかもしれません。
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②営業マンのミクロ的な戦略:暗黙知を明確知にする人
二つ目の特徴として、営業マンはマーケターとともに暗黙知を明確知にできる能力が必要と思われます。
それを示したのが、Arnett & Wittmann (2015)の研究です。
彼らは、B to Bの営業で活躍する営業マン200人をアンケート調査しました。
すると以下の図のような結果になりました。

まず大事なのは、真ん中の四角で囲まれたTacit knowledge Exchange(暗黙知から明確知にする能力)の項目です。
この項目が高い人ほど、市場でのプログラムのイノベーションに貢献でき(Marketeing Program innovation)、今ある会社のリソースを有効に使え(Relative Efficiency)、他者の競争者よりも顧客のニーズ把握ができる(Relative Effectiveness)傾向にあることです。
つまり、暗黙知を明確知にする人ほど、新規開発や社内リソースの把握や顧客ニーズをよく掴んでいるとも言えそうです。
次に大切なのが、この暗黙知から明確知にする能力はどのような能力があれば高まるかです。
それが以下の三つです。
1) 機能間コミュニケーション(Interfunctional communication):マーケティングと関係しているコミュニケーションが正確で十分。
2) 同僚の信頼(Cowerker Trust):マーケティング部と信頼し合い、正しいことをしようとしている。
3) 社会化機会(Socialization Opportunities):自分たちの成長や訓練プログラムはマーケティング部を巻き込んでやっている、マーケティング部のメンバーと営業が簡単に交流できる。
これらの要因が、営業マンの暗黙知を明確知にするのに役立つと思われます。
三つとも、高ければ高いほど、営業マンの暗黙知を明確知にする能力は高くなります。
要は、営業部とマーケティング部との部門を超えた交流が図られる機会が多いか、あるいは両者の交流を作れるかです。
他の部門や社外との交流が多い人ほど営業成績が良いことを示した研究もあるくらいです(Gonzalez & Claro, 2019)。
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③まとめ
以上より、営業戦略を上手く行える営業マンの特徴を紹介しました。
まとめると以下のようになります。
- 「ずっと市場の最先端でいたく、いつも新しい商品や市場の第一人者の間にいたい」という発掘者タイプの営業ほど、営業戦略を上手く使って営業成果を出せる可能性が高い。
- 暗黙知を明確知にできる営業マンほど、新規開発に貢献し、社内リソースを適切に使え、顧客ニーズをよく掴んでいると言えそう。
- 暗黙知を明確知にする能力を営業マンが鍛えるには、マーケティング部とのコラボで仕事する、部門を越えた交流が必要だと言えそう。
営業には営業戦略が必ずあります。
それを確実にこなして、成果を上げることは営業マンにとっては至上命題です。
それを上手くするためにも、個人的にはマーケティング部との接触は必須で、暗黙知を明確知にできる能力は、営業以外でも活かされます。
ぜひ参考にして、営業成績向上に役立ててください。
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参考文献
Arnett & Wittmann (2015). Improving marketing success: The role of tacit knowledge exchange between sales and marketing. Journal of Business Research, 67(3), 324-331.
Kwak, H., Anderson, R. E., Leigh, T. W., & Bonifield, S. D. (2019). Impact of salesperson macro-adaptive selling strategy on job performance and satisfaction. Journal of Business Research, 94, 42–55.
Gonzalez, G. R., & Claro, D. P. (2019). How intrafirm intermediary salespeople connect sales to marketing and product development. Journal of the Academy of Marketing Science, 47(5), 795–814.
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