・目を見れば相手が分かっていることが分かるのか?
・「目は口ほどにものを言う」諺は本当なのか?
私たちの最も身近な体の部位は、目だと言っても過言ではありません。
普段意識しないですが、五感の中でも日常生活で目に頼ることはとても多いです。
そんな「目は口ほどにものを言う」とことわざでよく言われますが、バツが悪く目を逸らしたり、何か隠し事をして目を背けたりする姿を見ると、何となく目と心はつながっている気がします。
心理学では、目は記憶力と関係することを示した研究が近年盛んです。
もしかしたら目を見れば、相手がちゃんと分かっているのかがわかるようになる可能性もあります。
今回は、そんな目と記憶力の関係性を示した研究をご紹介します。
本記事では以下のことが学べます。

2. 記憶した時にたどった視線をたどれば、記憶したことを思い出しやすくなる⁉
3. 「目は口ほどにものを言う」諺はどうやら本当かもしれない。
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①目と記憶力:記憶力の良い人は記憶する時と思い出す時で目の使い方を分けている⁉
目と記憶力を扱う研究は昔からありましたが、近年になって盛んに研究されるようになりました。
記憶力の良い人は、覚えるべきものをボーッと見ていないのです。
心理学では、目の動きを測るアイトラッカーという装置があり、目の視線や瞳孔の大きさなどを計測できます。
アイトラッカーを使用して、風景の画像をどのように目で追って記憶しているのかを調べたのが、Damiano & Walther(2019)の研究です。
彼らは、道路・建物などの町や海岸・山などの風景の写真を見せ実験参加者に覚えさせて記憶テストをしました。
同時に、アイトラッカーで覚えている時と記憶テストをしている時の視線を計測しました。
すると結果は以下のようになりました。

図の左側が覚えている時の視線の動きで、右側が記憶テストで思い出している時の視線の動きです。
a)とd)は、どこをどれだけ注視して見ていたのかをアイトラッカーで調べた結果です。
色が赤に近づくほどよく見ていることを示します。
すると、赤く光る部分がd)よりa)の方が広く、記憶テストで思い出す時より画像を見て覚えている時の方が、より幅広く視線を動かしていろんなところを注視していることがわかります。

b)は、記憶テストでいくつの地点で目を注視したのか、その回数とテストで覚えていたのかどうかを比べています。
すると、左の記憶テストで思い出せた時の方が、右の思い出せなかった時と比べて、よりいろんなところを注視している数が多いことがわかります。
c)は、記憶テストでいろんなところを幅広く見ているかの指標です。
左の記憶テストで思い出せた時の方が、右の思い出せなかった時と比べて、よりいろんなところを幅広く見ていることが伺えます。
この実験結果より、
- 覚える時は、幅広くいろんなところを注視した方が記憶成績が上がりやすい。
- テストなどで思い出す時は、あまり視線を動かさない方が記憶成績が良い。
このような傾向があることが分かります。
確かに、記憶テスト時に見たはずの画像を忘れていたら、まるで新しい画像を見せられた時のように慌てていろんなところを見ますよね。
ちなみに、この論文では、過去の研究で顔の記憶でも、顔のいろんな特徴を見る人の方が顔を覚える傾向があることが言及されています。
覚える時は、いろんなところを見るのが記憶力向上のコツかもしれません。
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②覚える時の視線の移動を再現すると思い出しやすくなる⁉
次の研究は、視線の移動が関係します。
よく日常で、友達とビーチで遊んだ記憶など過去のエピソードを思い出す時に、視線を動かして思い出す人がいると思います。
そんな感じで、記憶した時の視線を同じように再現すると思い出しやすくなることを示した研究があります。
それが、Johansonら(2022)です。
彼らはアイトラッカーを利用して、覚える時にどういう経路で視線を追っているのかを計測・分析しています。
例えば、以下の図のように、覚える写真を見ている時の視線の経路を右側のグレーの空間に再現しています。

このように、視線がどこを通っているのかを見ることで、より詳細に視線と記憶力との関係を知ることができます。
結果として、視線経路を見てみると以下のように記憶する時に大事な要素が見えてきました。

この図のように、左の物の場所(position)、形(shape)、方向(direction)の三つが統計学的に大事であることが示されています。
これら三つの要素は、それぞれ記憶成績の向上にも関係していることが示されていました。
そのため、自分が何か記憶した時の視線経路を再現して、思い出す時に同じ視線経路をたどると思い出しやすくなります。
過去の友人とのビーチのエピソードを思い出す時に、視線を動かして思い出そうとするのは理にかなっているのかもしれませんね。
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③まとめ
以上より、目の視線と記憶力との関係を見てきました。
まとめると以下のようになります。
- 覚える時は、視線を広く、たくさん注視して見ると後に思い出しやすくなる。
- 思い出す時は、視線を固定した方が思い出しやすくなる。
- 逆に、忘れている時ほど視線があちこち泳ぐ可能性がある。
- 覚える時の視線経路を思い出す時にたどれば、当時の記憶を思い出しやすくなる。
目や視線は記憶力ととても大事な結びつきがあります。
覚えるのも忘れるのも、視線が関わると考えると、結構目線は重要な役割を果たします。
この記事では、覚える時は「あちこちと注視する」ことを述べましたが、それも記憶術の一つかもしれまません。
覚える時に視線を意識してみると、いつもとはまた違う発見があるかもしれませんね。
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参考文献
Damiano & Walther. (2019). Distinct roles of eye movements during memory encoding and retrieval. Cognition, 184, 119-129.
Johansonら(2022). Eye-movement replay supports episodic remembering. Proc. R. Soc. B 289, 20220964.
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