スポーツ心理学「朝練は必要なのか」

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2024/4/27

「睡眠を削ってまで朝練がそんなに大事なのか?」(Youtube専門家対談企画スポーツ心理学与太話の第四回目)

・朝練はある程度は効果はありそうだけど睡眠を削ってまでするべきか? ・早すぎる朝練は意味あるの? ・朝練の時間に合わせて睡眠リズムを整えられるか? 朝練をするには早起きをしないといけません。 貴重な睡眠時間を削ってまで朝練に行く学生やスポーツ選手も多いのではないでしょうか? では果たして、睡眠を削ってまで朝練をする意味はあるのでしょうか? 現場に携わる専門家をお招きして、専門家同士が対談するYoutube専門家対談企画。 今回も、パーソナルトレーナーでスポーツ選手も指導される前田さんとスポーツ心理学につい ...

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スポーツ心理学「朝練は必要なのか」

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2024/4/19

「朝練でやるべきこととは?」(Youtube専門家対談企画スポーツ心理学与太話の第三回目)

・パワー系のスポーツで試合前にやると効果的なトレーニングとは? ・本番で最高のパフォーマンスを発揮するためには何時に起きればいいの? ・プロとセミプロの違いとは? 現場に携わる専門家をお招きして、専門家同士が対談するYoutube専門家対談企画。 今回は、パーソナルトレーナーでスポーツ選手も指導される前田さんとスポーツ心理学についてお話します。 本対談は、先日行われたセミナー「現場を科学するスポーツ心理学夜話」のスピンオフ企画です! セミナーにご興味のある方はぜひ下記のリンクから見逃し配信動画をお申込みく ...

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スポーツ心理学「朝練は必要なのか」

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2024/4/14

「朝練の効果にはエビデンスがある!?」(Youtube専門家対談企画スポーツ心理学与太話の第二回目)

・睡眠を削ってまで朝練するほど効果があるのか? ・朝練が昼のパフォーマンスを上げるエビデンスがある? ・朝練の効果を示したエビデンスは信用できるのか? 学校の部活やスポーツクラブチームなどで、朝練をするところは多い。 早起きで眠たいのに、朝から練習しないといけないつらさがあります。 日中の練習に加えて朝にも練習ができるため、スポーツ技能やパフォーマンス・記録は伸びるはず...。 しかし、本当にそうなのでしょうか? そんなに朝練をガンバルことでスポーツパフォーマンスが伸びるなどというエビデンスがあるのか? ...

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精神医学/Psychiatry 記事/Article

うつ病の認知脳科学:中核症状の一つである気分の落ち込みの脳内メカニズム

・やる気がでません。

・気分的に喜びの感情が薄れている気がする。

・うつ病の嬉しさの減退のメカニズムを知りたい。

今日本でも世界的にも患者さんが増加していると言われているうつ病

そのうつ病の中核症状の一つがアンへドニア(Anhedonia)と呼ばれます。

アンへドニアとは、

ポジティブ感情の低下、意欲の減退、報酬に対する感受性の低下、喜びの喪失

を総称したものです。

失感情症とも呼ばれており、うつ病の方が苦しんでいる症状です。

他人と喜びを共有できない。

そもそも意欲や喜びすら起きない。

そんな苦しみを解決するために、日々脳科学(神経科学)の研究が行われています。

そこで今回は、現在分かっている失感情症(アンへドニア)の脳内メカニズムを解説します

脳内メカニズムが分かれば、そのメカニズムに沿ってアンへドニア解消の方法も見つかるかもしれません。

本記事では以下のことが学べます。

1. アンへドニアと報酬系の関係

2. うつ病患者の喜びの減退と報酬系の活動低下について

3. 報酬に対する感受性の低下が意志決定にも関係すること

4. うつ病の報酬系の研究における限界点

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①うつ病の症状と報酬系に関わる行動との関係性

うつ病のアンへドニアに関する研究は結構行われています。

これからご紹介するように、様々な角度から研究が行われています。

その中でも、うつ病の研究をまとめたKeren et al. (2018)は、うつ病の症状と報酬系に関わる行動として以下の図のようにまとめています。

depression behavior anhedonia reward

この図は、報酬が得られる場面(Reward Phase)とその場面で現れる症状(Associated Symptom)、そして必要とされる行動(Translational Term)を表しています。

まずは、Prediction(予測)です。

この場合、報酬が貰えるだろうという場面が当てはまります。

報酬を得るか報酬を失うかを期待する状態と言えます。

しかし、うつ病患者は、この報酬の期待に対してアンへドニアを示します。

報酬が貰えるというのに、楽しみや期待値が低いということです。

二つ目が、Decision(意思決定)です。

この場合、報酬を最大にするべく最適な選択を行う場面が当てはまります。

しかし、うつ病患者は、報酬への感受性が低いため最適な意思決定ができないことが多いです。

三つ目が、Action(意欲的な行動)です。

この場合、努力したり、自分のやりたいことを行動に移す場面が当てはまります。

しかし、うつ病患者は、意欲ややる気が減退していますので、なかなか行動に移せません

自分のやりたいこともできないもどかしさがあります。

最後は、Experience(経験)です。

この場合、自分が体験から楽しかったという感情が芽生える場面が当てはまります。

しかし、うつ病患者は、喜びの減退があり、経験を有意義なモノと思えないのです。

また、失敗や成功体験を基にして新たに行動を修正したりすることも苦手になります。

要は、フィードバックを活用できないのです。

このように、四つの報酬系に関わる行動においてうつ病患者はアンへドニアのため上手くできずに苦しんでいます。

これらの行動は日常を豊かにすることにも欠かせません。

よく、うつ病患者さんは「世界が灰色に見える」とおっしゃいますが、これらの行動ができないと生活も色づきませんよね。

なので、これからご紹介するように、うつ病の報酬系の研究は大事なのです。

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②うつ病のアンへドニアと報酬系に関する脳内メカニズム

それでは、具体的に四つの行動を基に、うつ病患者さんのアンへドニアと報酬系に関する研究をご紹介します。

うつ病患者の喜び感情の減退は報酬系の活動低下にあり。

Epstein et al. (2006)は、うつ病患者と健常者を比較して、うつ病患者の喜びの減退に関する脳内メカニズムを探りました。

実験はシンプルなもので、ポジティブな単語、ネガティブな単語、ニュートラルな単語をそれぞれ見せて報酬系の活動をfMRIを用いて評価しました。

すると結果が以下のようになりました。

reward system depression brain positive

図Aがポジティブな単語を呈示された時に活動する脳領域です。

健常者と比較したうつ病患者の活動ですが、紫色になっており、活動が低下していることがわかります。

実際に、この領域の活動量と単語ごとで健常者と比較したのが、図Bです。

縦軸は脳活動量。

横軸は、左側がうつ病患者(Depressed Subjects)。

右側が、健常者(Healthy Comparison Subjects)です

赤が、ポジティブな単語を呈示した時。

緑が、ニュートラルな単語を呈示した時。

青が、ネガティブな単語を呈示した時です。

すると、赤のポジティブな単語を呈示した時に、健常者よりもうつ病患者の方が活動量が低いことがわかります。

ニュートラルとネガティブな単語では違いはありません。

二つの領域の図が示されていますが、両領域とも同様の結果です。

つまり、ポジティブな刺激による喜びの感情が低下していることが示されたのです。

そして、その脳内メカニズムとして線条体などの報酬系の低下が関係していることが示されました。

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うつ病患者の報酬に対する感受性の低下も脳の報酬系にあり

次に、報酬を得ることに対する感受性の低下についてです。

Pizzagalli et al. (2009)は、うつ病患者と健常者を比較することでうつ病患者の報酬に対する感受性の低下について調べました。

実験はシンプルなもので、最初に報酬が得られるかそれとも報酬を失うか、あるいは、報酬には何も変化がないかを知らせるカードが呈示されます。

その後、そのカードに沿った結果が得られます。

この時の報酬への感受性をfMRIを用いて調べています。

すると結果は以下のようになりました。

anhedonia gains brain depression reward system

図のAとBはそれぞれ報酬系の異なる領域を示しているだけです。

結果に大きな違いはありません。

いずれも、一番右側の図だけ見てもらえると大丈夫です。

右の図は、「健常者の脳活動-うつ病患者の脳活動」です。

つまり、活動が高く示されているほど、うつ病患者の脳活動が健常者よりも弱いことを示しています。

それを条件ごとに分かりやすくグラフにしたのが、図CとDです。

どちらも同じ結果ですので図Cのみご覧ください。

縦軸は脳活動の高さ。

横軸は条件を表します。

具体的には、報酬とは関係ない(No Change)、報酬を失う(Penalties)、報酬を得る(Gains)です。

赤がうつ病患者で、青が健常者です。

すると、報酬を得る(Gains)条件で、うつ病患者は健常者よりもはるかに活動量が少ないことがわかります。

つまり、報酬を十分に報酬として受け取っておらず、喜んでいないと考えられます。

うつ病は、報酬の感受性が低下している状態であり、このことは次の意思決定にまで影響します。

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報酬に基づく意思決定でうつ病患者は健常者と異なる傾向が見られる。

Rupprechter et al. (2018)は、うつ病患者と健常者に経済的意思決定課題を行わせて、うつ病患者の報酬に基づく意思決定の傾向を調べました。

実験はシンプルで、様々な割合で得られる報酬価と紐づいた画像か提示され、報酬を得ないかその画像かを選びます。

報酬の中にはマイナスになるものもあります。

今回は脳の画像は撮っていませんが行動傾向として出た結果が以下の図です。

depression decision making

縦軸が、報酬が得られる画像を選んだ割合。

横軸が、得られる報酬価です。

青が健常者で、赤がうつ病患者です。

破線は無視で結構です。

もちろん、本来合理的な人間だとマイナスの報酬をできるだけ避けて、プラスの報酬を選ぶ傾向が見られます

傾きが大きいことが報酬を最大にする戦略を取っていることを表します。

すると、図から健常者の傾きよりもうつ病患者の傾きの方がなだらかになっているのがわかります。

つまり、うつ病患者は、報酬への感受性が低く、合理的な戦略を取れていないのです。

もちろん、図形と報酬価との関係性を記憶しないといけないので、その記憶があいまになっている可能性はありますが、うつ病患者は報酬を基にした意思決定に困難を抱えることが示されています。

うつ病に罹患すると言われるのが、人生で大きな決断をしないことです。

合理的に考えることができず、悲惨なことになる可能性が高いからです。

経験談として言われてきましたが、こうして実験で示されたのは大きな成果です。

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③うつ病のアンへドニアと報酬系の関する研究の問題点

これまでうつ病の四つの行動(予測、意志決定、行動、体験)が報酬系の低下と関係していることを見てきました。

しかし、これらの研究には注意が必要だと警鐘を鳴らしているのがKeren et al. (2018)です。

四つの行動を示した研究ですね。

彼らは、同じトピックについて様々な研究を集めて分析し直し、一定の結論を得るメタ分析を、うつ病の報酬系の研究に行いました。

ちなみに、メタ分析については「メタ分析とは何か?心理学論文から見るメタ分析の方法と限界」こちらの記事に詳しく記述しております。

合わせて読んでいただけると幸いです。

彼らのメタ分析によると、唯一健常者とうつ病患者で統計的に差があるのが、報酬のフィードバックに関する研究のみだと言います。

それを示したのが、下図です。

depression meta-analysis reward system

図Aはまさしく報酬系を示しています。

図Bは、一番下の赤いを見てください。

縦線の0より左側が、うつ病患者の方が健常者よりも活動が低下していることを示します。

報酬のフィードバックの研究だとうつ病患者の方が報酬系の活動が低いことがわかります。

報酬のフィードバックとは、報酬に基づいた意思決定や課題を行って報酬が得られる場合です。

要は、報酬への感受性の低下についてです。

なので、報酬への感受性の研究では、メタ分析により健常者よりもうつ病患者の方が低いことが確かめられています。

しかし、それ以外の報酬系の研究では、結果が錯綜している状態です。

私も調べましたが、なかなか良い研究がないのが実情です。

これからの研究しだいですが、少し懐疑的になって見てみないといけないかもしれません。

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④まとめ

以上より、うつ病の報酬系の研究についてご紹介しました。

まとめると以下のようになります。

  • うつ病患者のポジティブな刺激に対する喜びの減退が報酬系の低下によって生じている。
  • うつ病患者の報酬への感受性の低さも報酬系の活動の低下によって示されている。
  • うつ病患者は、報酬に基づく意思決定を合理的にできない。
  • うつ病のアンへドニアと報酬系に関する研究はたくさんあるが、メタ分析でちゃんと示されているのは今のところ報酬のフィードバック研究のみ。

うつ病患者が本当に辛く思っているアンへドニアの研究は結構多くされています。

しかし、これらの試みもむなしく、本当に役立つ研究は少ない印象です。

あるいは、膨大に研究したからこそ、報酬のフィードバックに対する報酬系の活動低下という成果が得られたのかもしれません。

これからは、報酬のフィードバックに対して適切な価値づけを行える訓練などが開発されると、うつ病のアンへドニアは克服される可能性があります。

この記事が、うつ病の治療への大きな一歩になれば幸いです。

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参考文献

Epstein et al. (2006). Lack of Ventral Striatal Response to Positive Stimuli in Depression Versus Normal Subjects. American Journal of Psychiatry, 163(10), 1784-1790.

Keren et al. (2018). Reward Processing in Depression: A Conceptual and Meta-Analytic Review Across fMRI and EEG Studies. American Journal of Psychiatry, 175(11), 1111-1120.

Pizzagalli et al. (2009). Reduced Caudate and Nucleus Accumbens Response to Reward in Unmedicated Individuals With Major Depressive Disorder. American Journal of Psychiatry, 166(6), 702-710.

Rupprechter et al. (2018). Major Depression Impairs the Use of Reward Values for Decision-Making. Scientific Reports, 13798(8).

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