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心理学・脳科学/Psychology・Neuroscience 記事/Article

ストレスは報酬への喜びとやる気を下げる!前頭葉と報酬系の低下の脳科学

・ストレスはどのように脳に影響するのか?

・ストレスでやる気が出ない…

・どんなストレスが特に悪いのか?

多くの現代人を悩ませるのが「ストレス」です。

仕事のストレスや家庭でのストレス、友人などとの人間関係のストレスなど様々なものがあります。

電車の隣の席に着くおじさんのマナーにストレスを感じる短期的なものもあれば、何か月も何年もイライラする慢性的なストレスもあります。

ストレスは心理的にだけではなく、脳科学的にも大きな影響を及ぼします

ストレスは、特に、誰かから贈り物をもらった時の喜びの感情や仕事・勉強を頑張るモチベーション下げると言われています。

今回はストレスの脳への影響についてまとめました。

本記事では以下のことが学べます。

1. ストレスがやる気や感情に影響を与える。

2. 刹那的なストレスは、脳の報酬系に影響を与える。

3. 小さなころや幼い頃のストレスも現在の意志決定や脳に影響を与える。

4. 現在の報酬系の活動が、未来のうつ病と関係する⁉

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①ストレスは脳の報酬系と前頭葉の活動を下げ、ポジティブ感情とやる気を下げる。

ストレスで話題になるのが健康への被害です。

テレビやネットでもたくさんの情報が載っています。

しかし、意外と話題にならないのが、ストレスが心理や脳にどう影響するかです

動物での実験を含めると、昔から研究はありましたが、人間の脳の研究は比較的最近です。

その中で一貫して示されているのが、ストレスが脳の報酬系と前頭葉に影響することです。

一過性の短期的なストレスは喜びに関係する報酬系の活動を下げる。

まず初めは、一瞬でもイラっとしたり、ちょっと前の不快な思いをしたりなどの一過性のストレスが脳の報酬系に影響することです。

Porcelli et al. (2012)は、氷水に片手を入れさせて不快な思いをさせることでストレスを与え、その後にギャンブル課題で報酬が得られた時の脳活動を記録しました。

4℃の氷水に手を入れたストレス群(Acute Stress)と室温と同じぬるま湯に手を入れたコントロール群(No Stress)とを比べています。

その結果が以下の図です。

acute stress and reward brain

左の赤く光っている脳部位が、いわゆる報酬系と呼ばれる脳の領域です。

報酬系は、例えば、ギャンブルに勝利してお金をもらえる時などで活動する部位です。

右側の上下の図Bと図Cは、報酬系の別の部位の図です。

縦軸が、脳活動量。

横軸が、条件で、左がぬるま湯のコントロール群、右が氷水のストレス群です。

ねずみ色の棒グラフは無視して、報酬を受けた時を示す白色の棒グラフだけに注目してください。

すると、左側のコントロール群の方が右側のストレス群よりも棒グラフが高く、活動量が大きいことがわかります。

つまり、ストレスによって、ギャンブル課題で報酬を得た時の脳活動が下がるのです。

もしかしたら、報酬の喜び度合いも低い可能性もあります。

acute stress and prefrontal cortex

上図の図Aは、右上の前頭葉の活動量を表す図です。

図Bを見ると、コントロール群では報酬を受けた時に活動量が上がっていますが、ストレス群では活動量が報酬で高まりません

前頭葉は、ある報酬がどれくらいの価値があるかを評価することと関連していると言われています。

なので、ストレスで前頭葉の活動が上がらず、ちゃんと報酬を評価できていない可能性もあります。

ストレスは、一過性のものでも報酬や喜び度合いに影響するのです。

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慢性的なストレスでも喜びに関係する報酬系の活動を下げる。

先ほどは一過性の短期的なストレスでしたが、同様の研究結果が慢性的なストレスでも生じると言われています。

Treadway et al. (2013)は、質問紙でここ一か月でのストレス度合いとギャンブル課題をした時の脳活動との関係性を調べました。

つまり、月単位でどれくらいストレスが溜まっているのかとその時に報酬系などの脳部位の活動にどう影響するのかを調べています。

その結果が以下の図です。

chronic stress and prefrontal cortex

図Aでは、前頭葉の活動が青くなっていることがわかります。

つまり、ストレスが高いほど活動量が下がることを示しています。

図Bは、縦軸が前頭葉の活動量で、横軸が慢性的なストレス度合いを示します。

図から、ストレス度合いが高いほど、前頭葉の活動が下がっていることがわかります。

つまり、ここ一か月レベルの慢性的なストレスでも先ほどと同様に前頭葉の活動に影響します

特に、報酬を得た時の前頭葉の活動がストレスで下がるので、報酬への評価がちゃんとできていない可能性があります。

chronic stress and prefrontal and insla

図Aでは、報酬を得た時ではなく、失った時の脳活動領域を示しています。

左側が先ほどと同様の前頭葉で、右側が感情価に関わる島皮質を示します。

図Bは、それぞれの活動量と、慢性的なストレス度合いとの関係性です。

すると、いずれの領域でも、ストレス度合いが高いほど活動が下がっていることが分かります。

つまり、本来、報酬を失った時に活動する領域が、慢性的なストレスによってあまり活動しなくなることになります。

なので、先ほどの研究を考慮すると、ストレスは報酬を得た時も失った時も、前頭葉と報酬系の活動量を下げて、報酬への正当な評価を乱すのです。

報酬系はやる気や喜びなどの感情と関係します。

もちろん機器察知能力とも関係しますので、正常に評価できなくなると、人生が味気なく思えるのかもしれません。

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②幼い頃に受けたストレスが現在の脳活動にも影響する。

先ほどは、比較的最近受けたストレスについての研究でしたが、小学生くらいの昔受けたストレスが現在の脳に影響するという衝撃的な研究もあります。

それが、Birn et al. (2017)の研究です。

彼らは、10歳くらいに研究室で実験を受けた被験者に、10年後も同じ実験室で実験を受けてもらうことで、10年前のストレスが脳にどのように影響するのかを調べました。

10年越しの研究なので、かなり長期的な価値のある研究です。

先ほど紹介したのと同様にギャンブル課題を行い、幼い頃のストレスが報酬系や前頭葉にどのように影響するのかを見ています。

その結果が以下の図です。

early child stress and prefrontal cortex

この図は、報酬がもらえる状態を今か今かと待っている時の脳活動を示しています。

青く光っている部分が、報酬を期待している時にストレスの影響を受けている脳領域を示しています。

見てみると、前頭葉や脳の奥の部分や後頭葉などで青くなっています

特に重要なのが、前頭葉の領域です。

これは先ほどと同様の領域で、幼い頃の過去のストレスでも前頭葉の領域の活動が下がることを示しています。

early child stress and reward brain

この図は、報酬を失うことが予想される時に活動する脳領域を示しています。

青く光っている部分が、報酬を失うことを予期している時にストレスの影響を受けている脳領域です。

すると、脳の奥の部分が青く光っており、ここは報酬系に関係します

先ほどと同様、幼い頃の過去のストレスが報酬系の活動を下げるのです。

まとめると、10年前の幼い頃のストレスが現在の脳に影響を及ぼすことがわかります。

特に前頭葉と報酬系の活動を下げるので、報酬に対して正当な評価ができず、喜び等の感情価も低い可能性があります。

なお、そのことを間接的に示しているのが、以下の図です。

childhood stress and risky behavior

この図は、縦軸がギャンブルでリスキーな大胆な賭けに出た行動の多さを示します。

横軸が、幼い頃のストレス度合いです。

すると、幼い頃のストレス度合いが高いとよりリスキーな行動に出ることがわかります。

なので、もしかしたら、リスキーな行動に出ることで、前頭葉や報酬系の活動を上げようとしているのかもしれません。

ストレスで下がった脳活動や評価を、さらなる刺激で埋め合わせている可能性が示唆されます。

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③現在の脳の報酬系の活動の大きさが、未来のうつ病と関係する。

最後は、報酬系の活動量から将来のうつ病を予測する研究を紹介します。

うつ病の症状として、「世界がモノクロで味気ない」と感じたり、「喜びなどのポジティブな感情がなく辛い」と感じることがあります。

ストレスが、喜びに関する脳の報酬系の活動に影響を与えることを考えると、うつ病と関連する可能性があると思えます。

その関係性を示したのが、Mackin et al. (2019)です。

彼らは18か月の間に三回実験することで、ギャンブル課題中の脳活動、一回目と二回目の間のストレス度合い、二回目と三回目のストレス度合いをそれぞれ計測しています。

まず、ギャンブル課題中の脳活動の結果です。

EEG and reward ERP

この図は、脳波の活動を示したものです。

縦軸が活動量、横軸が脳波測定中の時間軸です。

濃い線が報酬を得た時の脳活動。

薄い線が報酬を失った時の脳活動です。

破線は、報酬を得た時から失った時の脳活動の差を示しています。

なお、脳活動は下に行くほど活動していることを示します。

この図から、一般的に報酬を受けた時は失った時と比べて、高くなります

この報酬を受けた時と失った時の脳活動の差を、RewPと呼びます。

このRewPの大きさが、うつ病やストレスと関係すると著者は言っています。

それを示したのが、以下の図です。

path analysis of depression and EEG reward

この図の左端がRewPです。

図の矢印は、両方の項目が関係していることを示しています。

例えば、下のRewP→T3 Depressionは、一回目で計測した脳波のRewPが、18か月後にうつ病に繋がることを示しています。

bの値は気にせず、プラスかマイナスかに注目してください。

すると、RewP→T3 Depressionはマイナスの値になっています。

これは、RewPが小さいほど18か月後にうつ病になりやすいことを表しています。

これと同様に、上の二つの項目が関係していることを示しています。

両方の項目を合体させると、RewP→T1-T3 Life Stress→T3 Depressionとなり、一つ目の矢印がマイナスで、二つ目の矢印がプラスになっています。

つまり、一回目で計測した脳波のRewPが低いほど18か月間の生活上のストレスが高くなり、18か月間の生活上のストレスが高いほど18か月後のうつ病レベルが高いということです。

なので、RewPの大きさとストレス、そしてうつ病との関連性がわかります。

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④まとめ

以上より、ストレスが脳に与える影響について見てきました。

まとめると以下のようになります。

  • 一過性の短期的なストレスは、脳の報酬系の活動を下げる。
  • 一過性の短期的なストレスは、前頭葉の活動を下げ、報酬への正当な評価に影響を及ぼす。
  • 慢性的なストレスも、同様の影響を脳に与える。
  • 10代の幼い頃のストレスレベルが、現在の前頭葉や報酬系の活動を下げる。
  • 幼い頃のストレスが多いほどリスキーな行動に出やすい。
  • 現在の報酬系の活動が将来的なうつ病傾向と関係する。

ストレスは体だけではなく、心と脳にも影響を与えます

特に、前頭葉と報酬系への影響は正常な判断や評価を鈍らせる可能性があります。

幼い頃のストレスが現在のリスキーな行動と関係するように、ストレスで報酬価や感情価が低くなることが刺激を求める傾向と関係しそうです。

いろんな環境要因などでストレスは生じます。

ストレスの影響を知れば、自分の行動を俯瞰視でき、良くない行動を防ぐことができるようになると思います。

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参考文献

Birn et al. (2017). Early childhood stress exposure, reward pathways, and adult decision making. PNAS, 114(51), 13549-13554.

Mackin et al. (2019). Reward processing and future life stress: Stress generation pathway to depression. Journal of Abnormal Psychology, 128(4), 305-314.

Porcelli et al. (2012). Acute stress influences neural circuits of reward processing. Frontiers in Neuroscience, 6, 157.

Treadway et al. (2013). Perceived stress predicts altered reward and loss feedback processing in medial prefrontal cortex. Frontiers in Human Neuroscience, 7, 180.

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