心理学・脳科学/Psychology・Neuroscience 記事/Article

記憶が持続する心理学と脳科学:長期記憶の研究からら知る科学的学習法と記憶法

・すぐに忘れてしまいます。

・覚えるように言い聞かせてもなかなか覚えられません。

・仕事を覚えるのが遅いです。

勉強でも仕事でも、「覚えろ!」と言われてもなかなか覚えられないのが悩みです。

小さい頃は聞いてすぐ覚えられたのに、大人になるにつれて覚えが悪くなる。

そんな経験は誰にでもあると思います。

記憶は誰もが欲する能力であり、巷には記憶術や学習法などの書籍や話題でもちきりです。

しかし、それらには確かな証拠があるのでしょうか?

単に頭のいい人が実践していた記憶術なんて頭が良いからできることです。

普通の人にはできません。

そこで、本記事では、心理学と脳科学に基づく長期的に記憶が持続する方法をご紹介します。

本記事記載のことを行えば多少は覚えるべきことを頭に定着することができます。

本記事では、以下のことが学べます。

1. 人間は意外と多くのことを記憶できること

2. 記憶を持続させる方法

3. 長期記憶にとって有効な学習法

4. 長期記憶になりやすい脳内メカニズム

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①人間は意外とたくさんのことを覚えられる。

人間の記憶には、大きく分けて二つの種類があります。

それが、短期記憶長期記憶です。

前者は、パッと言われて一定期間覚えておけますが、すぐに忘れる記憶のことです。

一方、長期記憶は、言われたり学習したことを覚えて、数日、数か月、長いと何年も覚えておける記憶のことです。

仕事でも、資格試験でも、勉強でも、この長期記憶に移行させることが重要です。

まず、そもそも長期記憶はどのくらいのことを覚えられるのでしょうか?

それを調べたのが、Brady et al. (2008)です。

彼らは、約2500もの絵を見せて覚えさせ、後程テストして長期記憶の容量を調べました。

すると、面白いことに以下のような結果になりました。

long term memory capacity

この図は、下の図のように対になった絵を見せられて、学習したものを選ぶテストの結果です。

左が、学習したものと全く異なる絵とを対で呈示されたときの記憶成績。

真中が、学習したものと似た絵とを対で呈示されたときの記憶成績。

右が、学習した絵と同じものですが、少し配置が異なる絵が提示されたときの記憶成績です。

二つの内どちらかを選ぶ課題ですので、分からなくても50%の確率で当たります

しかし、この50%を優に超える成績をどの条件でもたたき出しています

左の課題は簡単で成績も高いです。

しかし、真中と右の課題では統計的に有意な差は見られません。

つまり、単に「見たことあるな」ということで選んでいるのではなく、はっきりと見たことあるかどうかを判断できているのです。

2500個も覚えられることは示されましたが、経験上もっと覚えているのではないか?

そうです。

今回は、実験の性質上2500個まででしたが、本来はもっとたくさん覚えています。

記憶は無限大とは言いますが、ほぼそれに近いくらいは覚えることができるかもしれません。

意外と人間の記憶力は侮れないのです。

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②長期記憶として学習したものを持続させやすくする方法:脳科学的記憶術

では、どのようにすれば、長期記憶として記憶が長持ちするのでしょうか?

その方法を脳科学の研究から見ていきます。

1) 覚えることを頭の中でいろいろと操作したり、妄想したりする。

まず最初は、覚えることを想像する方法です。

Blumenfeld & Ranganath (2006)は、下図のように覚え方によって長期記憶の成績が変わることを示しました。

long term memory experiment

下の図は、比較のためのコントロール条件で、三つ単語を覚えてそのまま何度も頭の中で繰り返して(リハーサルして)、テスト時にそのまま三つを言う条件です。

上の図は、実験条件で、三つの単語を覚えて重さの順の並べて(覚えたものを操作して)、テスト時に三つの単語を言う条件です。

つまり、覚えて頭の中にあるときにどのような処理をしたかによって記憶成績に違いが出るかどうかを調べています。

実験結果は以下の図のようになりました。

long term memory performance

この図は、後にテストした時に覚えているかどうかを調べた結果です。

縦軸が、記憶した単語の割合。

左のrehearseが、何度も頭の中で繰り返すコントロール条件。

右のreorderが、重さの順に並べる実験条件です。

ねずみ色の棒グラフだけに注目してください。

右の実験条件の方が左のコントロール条件よりも、かなり記憶成績が良くなっています。

つまり、覚える時に、覚えるものを使って操作したり妄想したりすることが後々まで覚える秘訣です。

その時の脳活動が以下の図です。

long term memory brain activation

重要なのが、赤く光っている前頭葉の活動と、右図の黄色の線グラフです。

黄色の線グラフが実験条件で、ねずみ色の線グラフがコントロール条件です。

すると、図から前頭葉の活動が実験条件の時に有意に高くなっていることがわかります。

この論文では、記憶するときに前頭葉の活動を活性化させると記憶が持続することを主張しています。

今回は「重さの順に並べる」という前頭葉を使いそうな操作をしましたが、他には、時系列順に並べたり、逆順にしてみたりなど、いろいろな方法が考えられます。

個人的には、妄想が一番楽しくて役立つような気がします

妄想の時の脳内メカニズムについて書いた記事「妄想している時の脳内はどうなっているのか?」にもありますように、覚えるものを使って「どのように応用できるか」とか「どんなことに役立つか」などを考えたりすると前頭葉が活動するので、長期記憶として定着しやすいと思います。

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2) 覚えたことをテストすると長期記憶として定着しやすい。

次は、いわゆる「テストの効果」と呼ばれるものです。

Jonker et al. (2018)は、二対の絵を覚えさせ、練習として絵の穴埋め問題をさせた条件と絵のペアを何度も見せて学習させる条件とを設けて、最後に試験を行い、問題を練習する効果を確かめました。

すると、以下のような結果になりました。

long term memory testing effect

この図の、縦軸は記憶成績。

左の図は、一回練習を行ったもの。

右の図は、三回練習を行ったものです。

オレンジが、穴埋め問題で練習をした条件。

青が、何度も見て学習した条件です。

Testing effectは、実際に穴埋め問題で練習した刺激で、RIFAは練習したものと関連した刺激です。

すると、左右どちらのグラフでも、穴埋め問題を実際に行ってテスト練習した方が、そうでない場合よりもより多く覚えていたことがわかります。

特に、三回も練習すると覚える刺激に関連した刺激もより覚えるようになるという効果も見られます。

この時の脳活動の結果が以下の図です。

long term memory hippocampus

この図は、脳の海馬のという記憶に関する領域の後ろの方が穴埋め問題をしてテスト練習した場合により活動することが示されています。

右の図は、海馬のという領域を前・真中・後ろの三つに区分けしただけの図です。

後ろの方がより活動していることが分かります。

海馬は、記憶をするときに必須の領域です。

テスト練習によって、覚えることを担当する海馬がより活性化して長期記憶として定着しやすくなることがわかります。

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重要なのが、先ほどの1)と2)を合わせて、覚える時には前頭葉海馬の活動が重要だということが分かりました。

このことを記憶の脳活動の研究を集めて分析し直すメタ分析という方法で調べたのがKim (2011)の研究です。

ちなみに、メタ分析については「メタ分析とは何か?心理学論文から見るメタ分析の方法と限界」こちらの記事で詳しく解説しています。

合わせて読んでいただけると幸いです。

では、記憶時にどのような脳活動が生じれば長期記憶として定着しやすいのでしょうか?

それが以下の図です。

long term memory encoding brain

この図のように、主に、前頭葉と一番下の海馬の領域が赤く光っていることがわかります。

つまり、1)と2)を裏付けする結果です。

この前頭葉と海馬を、覚える時に活性化させれば、長期記憶として頭に定着しそうだと言えそうです。

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3) 感情を刺激されて偏桃体が活動すると長期記憶として定着しやすい。

感情的な記憶は覚えられやすいことが知られています。

Cahill et al. (1996)は、感情的な映画とそうでない普通のニュートラルな映画を見せた時に、後程まで内容をどのくらい覚えているのかを調べました。

すると、以下の図のようになりました。

long term memory emotional

左がニュートラルな映画で、右が感情的な映画。

縦軸は、どれくらい映画を覚えていたかを示しています。

すると、感情的な映画の方がかなり頭に残っていることがわかります。

この時の脳活動が下図です。

long term memory amygdala brain

この図の矢印のところが偏桃体という脳領域です。

左側が感情的な映画で、右側がニュートラルな映画の時の脳活動です。

感情的な映画の方が赤く光っています。

つまり、偏桃体の活動が記憶の定着に一躍買っていることを示しています。

感情価を含むものほど覚えやすくなります。

覚えるものを感情と結びつけてみるのもいいかもしれません。

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4) ドーパミンなどの報酬系に紐づいたものは覚えやすい。

最後に、いわゆるドーパミン等が関わる報酬系の活動が記憶時に伴うと、長期記憶として定着しやすいことを示した研究を見ます。

Wittmann et al. (2005)は、絵を見せてその後それを覚えていたらどのくらいの報酬が貰えるかを提示して、報酬の高低により覚えているかどうかを調べました。

すると、報酬の高いものほどよく覚える傾向が見られました。

その時の脳活動が以下の図です。

long term memory reward brain

図Aが海馬

図Bが報酬系を表しています。

図Dは、左の図が海馬の活動で、右図が報酬系の活動を表しています。

ねずみ色が覚えていた場合の活動。

黒色が忘れていた場合の活動です。

Rewardが報酬が高い刺激。

Neutralが報酬が低い刺激です。

すると、海馬も報酬系も覚えている場合に活動が高くなっています

つまり、報酬系の活動により、海馬の覚える機能が促進されたと解釈できます。

お金で釣るわけではありませんが、自分にとってご褒美となることを覚えることは簡単にできそうです。

あるいは、覚えること自体がモチベーションや動機づけに結びつく場合に長期記憶として定着しやすいと思われます。

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③まとめ

以上より、長期記憶の脳科学について見てきました。

まとめると以下のようになります。

  • 長期記憶の容量はかなり大きい。
  • 覚えるものを頭の中で操作すると長期記憶として定着しやすい。
  • 妄想はその方法の一つ。
  • 覚えたものをテストしたり練習して使ったりすると、覚えやすい。
  • 脳内メカニズムとしては、前頭葉と海馬の活動が重要。
  • 感情がともなうものは覚えやすい。
  • 偏桃体か海馬の活動を助ける。
  • 報酬がともなうものは覚えやすい。
  • 報酬系が海馬の活動を助ける。

なかなか覚えられず苦労される方はたくさんいらっしゃいます。

私もその一人です。

記憶が苦手な方に本記事がお役に立てば幸いです。

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参考文献

Blumenfeld & Ranganath (2006). Dorsolateral Prefrontal Cortex Promotes Long-Term Memory Formation through Its Role in Working Memory Organization. Journal of Neuroscience, 26(3), 916-925.

Brady et al. (2008). Visual long-term memory has a massive storage capacity for object details. PNAS, 105(38), 14325-14329.

Cahill et al. (1996). Amygdala activity at encoding correlated with long-term, free recall of emotional information. PNAS, 93, 8016-8021.

Jonker et al. (2018). Neural reactivation in parietal cortex enhances memory for episodically linked information. PNAS, 115(43), 11084-11089.

Kim (2011). Neural activity that predicts subsequent memory and forgetting: A meta-analysis of 74 fMRI studies. NeuroImage, 54, 2446-2461.

Wittmann et al. (2005). Reward-Related fMRI Activation of Dopaminergic Midbrain Is Associated with Enhanced Hippocampus- Dependent Long-Term Memory Formation. Neuron, 45, 459-467.

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