心理学・脳科学/Psychology・Neuroscience 記事/Article

気になる他者の目が人を利他的に行動させる?評判とカッコつける監視の心理学

こんなことありませんか?

・他人が見ているとソワソワする。

・他者の目が気になってしょうがない。

・誰かに見られているとしっかりしなきゃと思う。

これは人間誰しも経験があることです。

誰も見ていない一人の状態誰かが見ている状態では、心理面も行動面も異なると。

ある人は、落ち着かないかもしれませんし、またある人は、誰かが見ているからこそ仕事や作業に集中できるようになります。

では、心理学的に、他者に見られると人間はどうなるのでしょうか?

心理学の研究では、他者の目が利己的か利他的かに関わることが言われています。

では、他人の目の有る無しでどう変わるのか?

それを今回ご紹介します。

本記事では以下のことが学べます。

1. 他者の目があると、利他的に行動しやすくなる。

2. 仲間集団の数によって、他者の目の効果は変化する。

3. カメラが向けられていたり、神などの神聖な心理状態でも他者の目と同様の効果が見られる。

4. 他者の目の効果は、他人への評判に繋がるかどうかで変わる。

5. 他者の目の効果は確実ではない。

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①他者の目の効果:他人の視線があると、人は利他的で寛容な行動に出る。

他人の視線を感じると、何かソワソワしてしまいます。

このソワソワは誰もが感じることですが、ソワソワ感じなくても他者の目があるだけで人は利他的で寛容になります

それを示したのが、Haley & Fessler (2005)です。

彼らは、行動経済学の典型的なゲームを行い、もらったお金をどれくらい他人に渡すのかを調べました。

この時、明らかに他者の目がある条件とそうでない条件と二つあります。

その結果が以下の図です。

watching eye effect psychology

縦軸が、他者に一円でもお金を渡した割合です。

横軸が、条件で、Eyespotと書かれたものが他者の目がある条件です。

すると、他者の目がある右三つの棒グラフは、他者の目がない左二つの棒グラフと比べて高くなっています。

つまり、他者の目がある条件では、他人にお金を渡すようになり、利他的な行動をとるようになるのです。

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実験室を出た実際の場面でも他者の目は利他性に効果あり。

この研究は実験室での研究です。

中には、「実験室だからでしょ?」と批判的になる方もいらっしゃいますが、現実の場面でも応用された研究があります。

それが、Bateson et al. (2006)です。

彼らは、カフェで他人の目が描かれているカードと花の絵が描かれているカードのどちらかによって、ミルクを使用した時にどれくらいの金額を払うのかを確かめました。

すると、以下のような結果になりました。

watching eye effect psychology in field research

横軸が、金額で、右に行くほど多くの金額を払っていることを示します。

図より、結果は歴然で、他者の目が描かれている方がより多くの金額を支払っていることがわかります。

つまり、普通のカフェの場面で、他者の目が人々をより利他的に行動させたのです。

他者の目の効果は、実験室を飛び出して、現実世界でも当てはまる効果かもしれません。

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また、他者の目の効果は、以下の図のようなものでも若干効果があることが示されています(Rigdon et al., 2008)。

watching effect eye cue

左の図形はなんとなく人間の顔に見えて、上の二つの●が目のように見えます。

右の図形は何ともありません。

このように、目のように見える図でも他者の目と同様の効果が見られることが示されています。

他者の目ではなく、他者の目のようなものであれば効果は期待できます。

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他者の目の効果は自分の仲間集団がその場でどれくらいいるかで変化する。

これまで他者の目の効果を確認してきましたが、実は、何人の仲間と一緒にいるかで、この効果の強さが変わります

それを示したのが、Ernest-Jones et al. (2011)です。

彼らは、カフェで、他者の目がある張り紙と花の絵が描かれた張り紙を使い、どのくらい自分の飲み物を片付けるかを調べました。

結果は、先ほどのカフェの研究と同様に、他者の目が描かれた張り紙の場合により片付けるようになるのですが、

問題は、仲間集団が何人かによって片付ける割合が変わることです。

それが以下の図です。

watching eye effect psychology in parties

縦軸は、片付けなかった人の割合です。飲みっぱなしの割合です。

横軸が、仲間の数です。つまり、何人と一緒に来店したのかです。

■が実際のデータです。

すると、四人までは横ばいですが、五人以上になると急に片付けなくなります

つまり、他者の目の効果は大体四人までが限界のようです。

次の図は、仲間集団が多い場合と少ない場合とで飲みっぱなしの割合が異なることを示しています。

watching eye effect psychology in parties above and below average

縦軸は、片付けなかった割合。

横軸は、左側が仲間集団が多い場合で、右側が少ない場合。

白が、他者の目の張り紙で、ねずみ色が花の絵の張り紙です。

すると、白い棒グラフに注目すると、右側よりも左側の方が飲みっぱなしの割合が多くなっています

つまり、来店した時の仲間の人数が多くなると、他者の目の効果は薄くなるのです。

他者の目の効果も万能ではりません。

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②他者の目以外でも同様の効果を示すもの:カメラと神?

先ほどまでの研究では、他者の目が直接的に描かれていた場合です。

しかし、心理学の研究では、他者の目がなくても同様の効果を示すものがあります。

監視カメラは他者の目と同様の効果を生む。

その一つがカメラです。

van Rompay et al. (2009)は、カメラの有無が他者を助ける行動の頻度に差があることを示しました。

それが以下の図です。

watching eye effect psychology in helping behavior

縦軸は、他者を助ける行動をどれくらい行ったか。

横軸は気にしなくても構いません。

黒がカメラ有りで、ねずみ色がカメラ無しです。

すると、カメラがないねずみ色よりもカメラがある黒の方がより人を助ける行動をするようになります

直接他者に見られなくても、カメラが代用するようになりまそうです。

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神様や神聖さが他者の目と同様の利他的行動を生む。

次に興味深いのが、神の概念や神聖さを意識させると人は利他的に行動するようになります。

それを示したのが、Shariff & Norenzayan (2007)です。

彼らは、実験参加者をニュートラル条件と神条件の二つの条件に分けました。

神条件では、文法的にバラバラの単語を正しい順番に並べ替える課題を行います。

この時に、単語の中に、「神」や「神聖な」という宗教的な言葉がちりばめられています。

この手続きによって、神の概念や神聖さを意識させます。

その後、典型的な行動経済学の実験を行い、もらったお金をどれくらい多く他人に渡すのかを確かめました。

すると以下のような結果になりました。

watching eye effect psychology in god concept

上の図がニュートラル条件で、下の図が神条件です。

縦軸は、人数を表します。

横軸は、どのくらいのお金を払ったかです。

つまり、この図はどれくらいの人がどの金額を支払ったのかを示します。

すると、上のニュートラル条件では、グラフがほとんど左の方に寄っています

あまり、他人に多くの金額を渡さないことがわかります。

他人に全くお金を渡さない0の人も多くいます。

利己的ですね。

一方、下の神条件では、グラフがまばらになっており、お金をある程度渡す傾向にあることがわかります。

他人に全く渡さない0の人も少ないです。

他者にお金を支払った平均額も神条件の方が統計的に高いです。

これらの研究から何が言えるのか?

解釈は難しいですが、他者に見られているという意識を相手に与えることで、他者の目を見せるのと同等の効果があると考えられます。

後者の神条件では、「神様が見ている」という意識が芽生えたからかもしれません。

もちろん、宗教の戒律意識を高めたかもしれませんが、どちらかというと誰かに見られているという意識の方が研究の解釈としてしっくりきます。

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③他者の評価や評判に繋がらないと、他者の目の効果は限定的になる。

最後は、他者の目の効果が機能するかどうかに関わることです。

これまで、様々な研究から、他者の目が人に利他的で寛大な行動を引き起こすことがわかりました。

しかし、この効果はかなり限定的だということが示されています。

Fehr & Schneider (2010)は、他者の目があり、明らかに他者の評価に関係する条件と、他者の目があり、あまり他者の評価に関係しない条件と、他者の目がない条件とを比べて、人間の利他的行動が変化するかどうかを調べました。

具体的には、他者からお金をもらって、どれくらい返金するかを調べています。

その結果が下図です。

watching eye effect psychology in explicit and implicit eye

縦軸は、返金金額を示しています。

横軸は、上に示されているように、どれくらいのお金を受け取ったかです。

Baseは、他者の目がない条件。

impは、他者の目があり、あまり他者の評価に関係しない条件。

expは、他者の目があり、他者の評価に関係する条件です。

すると、図より、もらった金額が高いほど返金する額も高まります。

しかし、他者の目があっても、他者の評価に関係しない場合(imp)は、他者の目がない場合(base)と返金額はあまり変わりません

他方、他者の目があり、他者の評価に関係する場合は群を抜いて返金額が高まっています

つまり、他者の目の効果は、自分の行動が他者の評価や評判に関係しない場合、機能しないのです。

実際に、Nettle et al. (2013)は、たくさんの同様の研究を集めて分析し直すメタ分析という手法を使用して、他者の目の効果はあまり見られないことを示しています。

もちろん、Nettle et al. (2013)の研究には批判点もありますが、他者の評価や評判が他者の目の効果に関係している可能性が高いです。

なお、メタ分析に関する詳しい解説は以下の記事にあります。

合わせて読んでいただけると幸いです。

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④まとめ

以上より、他者の目の心理的効果について見てきました。

まとめると以下のようになります。

  • 他者の目は、利他的な行動を引き起こす。
  • 他者の目に似ていれば、他者の目の効果が生じる。
  • しかし、他者の目の効果は仲間集団が多いと薄くなる。
  • カメラも他者の目と同等の効果を発揮する。
  • 神の概念や神聖さを意識させることも他者の目と同様の効果を示す。
  • 他者の目の効果は、他者の評価や評判に関係しないと機能しない可能性が高い。

他人からの視線にソワソワする理由は、これまでの研究を総合すると、他人の評価や評判に繋がるという意識が頭の中で生まれるからだと考えられます。

他人の評価・評判が気になって落ち着かないのです。

誰かに噂されていないかなどですね。

では、最終的な結論としてはどのようなことが言えるのでしょうか?

それは、「他者の目の効果は、他者からの評価・評判を良くするためにあるかもしれない」ということです。

他人の評価や評判に結びつかない場合、他者の目があろうとなかろうと関係ありません。

なので、他者の目をどこにでも使えばいいというわけではなく、あくまでもドーピングのように一時的で限定的な効果しかないと思われます。

確かに、他者の目があると利他的になりやすいですが、見られていても見られていなくても利他的でありたいものです。

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参考文献

Bateson et al. (2006). Cues of being watched enhanced cooperation in a real-world setting. Biology Letters, 2, 412-414.

Ernest-Jones et al. (2011). Effects of eye image on everyday cooperative behavior: a field experiment. Evolution and Human Behavior, 32, 172-178.

Fehr & Schneider (2010). Eyes are on us, but nobody cares: are eye cues relevant for strong reciprocity? Proceeding of The Royal Society B, 277, 1315-1323.

Haley & Fessler (2005). Nobody's watching? Subtle cues affect generosity in an anonymous economic game. Evolution and Human Behavior, 26, 245-256.

Nettle et al. (2013). The watching eyes effect in the Dictator Game: it's not how much you give, it's being seen to give something. Evolution and Human Behavior, 34, 35-40.

Rigdon et al. (2008). Minimal Social Cues in the Dictator Game. MRPA Paper No. 8439.

Shariff & Norenzayan. (2007). God Is Watching You: Priming God Concepts Increases Prosocial Behavior in an Anonymous Economic Game. Psychological Science, 18(9), 803-809.

van Rompay et al. (2009). The Eye of Camera: Effects of Security Cameras on Prosocial Behavior. Environment and Behavior, 41(1), 60-74.

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