スポーツ心理学「朝練は必要なのか」

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2024/4/19

「朝練でやるべきこととは?」(Youtube専門家対談企画スポーツ心理学与太話の第三回目)

・パワー系のスポーツで試合前にやると効果的なトレーニングとは? ・本番で最高のパフォーマンスを発揮するためには何時に起きればいいの? ・プロとセミプロの違いとは? 現場に携わる専門家をお招きして、専門家同士が対談するYoutube専門家対談企画。 今回は、パーソナルトレーナーでスポーツ選手も指導される前田さんとスポーツ心理学についてお話します。 本対談は、先日行われたセミナー「現場を科学するスポーツ心理学夜話」のスピンオフ企画です! セミナーにご興味のある方はぜひ下記のリンクから見逃し配信動画をお申込みく ...

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スポーツ心理学「朝練は必要なのか」

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2024/4/14

「朝練の効果にはエビデンスがある!?」(Youtube専門家対談企画スポーツ心理学与太話の第二回目)

・睡眠を削ってまで朝練するほど効果があるのか? ・朝練が昼のパフォーマンスを上げるエビデンスがある? ・朝練の効果を示したエビデンスは信用できるのか? 学校の部活やスポーツクラブチームなどで、朝練をするところは多い。 早起きで眠たいのに、朝から練習しないといけないつらさがあります。 日中の練習に加えて朝にも練習ができるため、スポーツ技能やパフォーマンス・記録は伸びるはず...。 しかし、本当にそうなのでしょうか? そんなに朝練をガンバルことでスポーツパフォーマンスが伸びるなどというエビデンスがあるのか? ...

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スポーツ心理学「朝練は必要なのか」

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2024/4/7

「朝練とは何か?」(Youtube専門家対談企画スポーツ心理学与太話の第一回目)

・睡眠を削ってまで朝練することはそんなに大事なのか? ・朝練によって昼のパフォーマンスは上がるのか? ・朝練と睡眠の関係を調べたエビデンスの紹介 学校の部活やスポーツクラブチームなどで、朝練をするところも多いと思います。 早起きして眠たいのに、朝から練習しないといけないつらさがあります。 しかし、日中の練習にさらに朝に練習できるため、スポーツ技能やパフォーマンス・記録は伸びるはず...。 本当にそうなのでしょうか? 今回は、スポーツ現場に携わる専門家をお招きして、専門家同士が対談するYoutube専門家対 ...

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心理学・脳科学/Psychology・Neuroscience 記事/Article

ついついやってしまう衝動的な行動の心理学・脳科学

・つい衝動買いしちゃうのよね。

・カッとなって衝動的に行動してしまう。

・衝動に駆られてやってしまった。

このように、人間は自身の衝動性に悩まされることがあります。

買う気がなかったけれども、衝動買いをしてしまう。

それはもはや本能です。

衝動性と言えば「ついついやってしまう」という意味で使われます。

しかし、ADHDの方は、それが日常生活にまで影響するくらい思ったことを行動に移してしまいます。

ここまで病的でなくても、お金のことや性に関して衝動性を抑制したいものです。

そこで、今回は、心理学と脳科学(神経科学)の知見を参考に、衝動性の正体と脳内メカニズム、そして衝動的な選択を減らすための方法を見ていきます。

本記事では以下のことが学べます。

1. 衝動性の種類

2. 衝動性の脳内メカニズム

3. 衝動性の抑制メカニズム

4. 衝動的な行動を減らす具体的な方法

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①衝動性には二つの意味がある:機能的な衝動性と機能不全的な衝動性

衝動性の研究はかなり昔からあります。

1970年代の研究とかもあるくらいです。

なので、衝動性に関しては皆昔から困っていたということです。

そんな中、衝動性には問題となる場合とならない場合の二種類あると主張した研究者がいます。

それが、Dickman (1990)です。

彼は、過去の研究で、衝動性が認知機能にプラスに働くことに気づいていました。

例えば、衝動性の高い人は頭の回転が早いといったことです。

そこで、衝動性には二つの意味があると言いました。

一つ目が、機能的(functional)な衝動です。

彼の定義によると「この衝動性が最適な状況下で早いけど不正確なパフォーマンスを生む」衝動性です。

例えば、職場でそんなに正確にしなくてもいいから、とにかく早くしてほしい場合、この衝動性があると役立ちます。

二つ目が、機能不全的(dysfunctional)な衝動です。

彼の定義によると、「この衝動性が最適ではない状況下で早いけど不正確なパフォーマンスを生む」衝動性です。

例えば、やたらと仕事が早く終わっているけど、見直してみると誤字脱字がやたら多い場合などが当てはまります。

この衝動性は仕事に対して不適切です。

これら二つの衝動性を提唱しました。

そして、実際に認知機能テストをしてこれらの衝動性を持っている人がどのようなパフォーマンスを示すのかを実証しました。

その結果が下図です。

impulsive brain 1

この図は、四つの区分が設けられています。

機能的な衝動性と機能不全的な衝動性の両方とも低い人(low)。

両方とも高い人(high)。

機能的な衝動性のみ高い人。

機能不全的な衝動性のみ高い人。

この4タイプです。

すると統計的に意味のある違いが表れたのが、機能的な衝動性が高いか低いかという違いだけでした。

つまり、図の上半分と下半分に差があるということです。

この図の成績(Score)を見ると、機能的な衝動性がある方がスコアが高いことが分かります。

このことから、機能的な衝動性があることとそれが認知機能にプラスに働くことが証明されました。

ここまで衝動性には二つの意味があることがわかりましたが、大抵の人は、機能不全的な衝動性に悩まされます。

なので、ここからは、その衝動性についての脳内メカニズムを見ていきます。

なぜ衝動的に行動してしまうのかがよくわかります。

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②衝動性の脳内メカニズム

衝動性自体の研究は古くからありますが、脳科学的研究は比較的最近からです。

1) 衝動性の脳領域

Buckholtz et al. (2010)は、PETという大きな機械を使って、衝動性に関係する脳領域を特定しました。

それの結果が下の図です。

impulsive brain 2

左の図Aは、脳をパカッと開いた時の図です。

赤く光っている脳部位は衝動性が高いほど活動する領域です。

一方、青く光っている脳部位は衝動性が高いとあまり活動しない領域です。

いずれも脳の奥の方が関係しています。

これらの衝動性に関する領域は、よくテレビなどでも取り上げられるドーパミンを放出する領域です。

では、衝動性と二つの脳領域との関係性はどうなのか?

それが右図のBになります。

三角形になっていますが、上の経路を通って衝動性に繋がることが示されています。

青い部分の活動が弱くなると、赤い部分の活動が強まり、そして、衝動性として現れます。

青い部分は、ドーパミンの抑制にも関わる部分であり、ドーパミンを抑制する脳領域が弱まると衝動的な行動をしてしまうのです。

このように脳の奥の部分の相互関係により衝動性が生まれます。

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2) 衝動性と自己抑制(self-control)との関係

脳領域はわかりましたが、では衝動性を抑えるにはどうしたらよいのでしょうか?

実は、先ほどご紹介した脳領域以外の領域が重要だと言われています。

Jimura et al. (2013)は、実験参加者に低い報酬をすぐに貰うか後で高い報酬をもらうかという選択をさせて、衝動的な選択と自己抑制の関係について調べました。

この実験課題は、例えば、「今すぐに1000円もらうか、明日1100円もらうか」を選んだりする課題です。

Jimura et al. (2013)はこれを少し変形させて、のどが渇いている人にすぐにジュースを飲むか少し待ってからより多くのジュースを飲むか選択を行わせています。

すると実験結果は以下のようになりました。

impulsive brain 3

Aが衝動性の高低による成績の違いを表しています。

Bが典型的な選択行動を表しています。

Bのように、すぐに貰える報酬が高いほど後でもらうという選択をしなくなります。

また、Aのように、基本的には、報酬を貰える時間が長くなるほど満足度が下がります

つまり、もらえるまで長い間我慢できて、後で報酬をもらっても満足度が下がらない人は、衝動性が低いと言えます。

それが、Aの青色です。

逆に、後で報酬をもらっても満足しない人は、すぐの報酬を選ぶということであり、衝動性が高いと言えます。

それが、Aの赤色です。

衝動性が普通の人が、A図の紫色です。

Jimura et al. (2013)は、このように実際の選択行動から衝動性を特定しました。

大事なのは、この次で、これらの衝動性の高低によって脳活動が異なることです。

それが下図です。

impulsive brain 4

Aは、先ほど1)のBuckholtz et al. (2010)で赤く光っていた脳部位の活動です。

Bは、自己抑制に関わる前頭葉の脳活動です。

(ちなみに、自己抑制についてはこちらの記事を是非読んでみてください。「科学的に正しい感情コントロールの方法:EQを高めて怒らない自分になる」)

Aのように、衝動性が高いグループ(赤)の方が衝動性の低いグループ(青)よりも活動が高いことが示されています。

つまり、1)のBuckholtz et al. (2010)の研究と整合的な結果です。

さらに、Bのように、衝動性の低いグループ(青)は、衝動性の高いグループ(赤と紫)よりも、前頭葉の活動が高いことが示されています。

衝動性の低い人は自己抑制が上手くできているということです。

「今1000円もらう」という衝動性を抑えて、「明日もらう1100円の方が得だからそれを選ぼう」という決断が衝動性の低い人はできるということです。

これらをまとめたのが以下の図です。

impulsive brain 5

図の下の方の点線で結ばれているところを見てください。

前頭葉がマイナスに働いています

つまり、衝動性を生み出す脳領域を前頭葉が抑え込んでいるのです。

これらの研究より、衝動性の脳内メカニズムは、脳の奥の部分と前頭葉が関係します。

特に衝動性を生み出す脳領域は前頭葉と深く関係していて、衝動性の高低により前頭葉の抑制力が変わります。

前頭葉の抑制力が働くかどうかによって、衝動に駆られるかどうかが決まるということです。

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③衝動的な行動を抑えるためには、お金の教育を受けることが効果的

衝動性のメカニズムについて理解できました。

最後に、衝動性を抑える具体的な方法について見ていきます。

衝動性を抑える方法の研究は、まだそんなに蓄積されていません。

過去の研究では、将来のことについて考えることが衝動的な選択をしないようになるというものあれば、ワーキングメモリという前頭葉に関係する能力を鍛えると衝動的にならないという研究もあります。

しかし、一石二鳥の方法として、お金についての教育を受けることが衝動性の低下につながることが示唆されています。

DeHart et al. (2016)は、お金に関する講義を受けた学生とそうでない学生とを比較して、講義を一通り受ける前と後とで衝動的な選択をするかどうかを調べました。

すると以下の結果になりました。

impulsive brain 6

■がお金の授業を受けた学生。

〇がそうでない学生。

縦軸が、後で多くの報酬をもらう選択をする確率。

横軸が、講義を受ける前(1)と受けた後(2)の選択行動を表しています。

この図から、お金の講義を受けた後の方がそうでない学生よりも、統計的に有意に衝動性が低くなっていることがわかります。

つまり、お金の教育により、将来的なことを考えたり計画的になり、「後からもらう1100円の方が得だ」と考えるようになったということです。

この研究が本当だと、将来的なお金のことも学べるし、衝動に駆られることも少なくなるし一石二鳥じゃんと思えます。

しかし、この研究にはいくつか問題点があり、鵜呑みにはできません。

例えば、お金の講義のどのような内容が衝動性に関係しているのかがわかりません。

それでも、お金の講義を受けることは一定程度効果はありそうです。

最近では、YouTubeとかでもお金に関する動画はありますので、それを見てみるのもいいかもしれませんね。

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④まとめ

以上が衝動性や衝動買いに関する心理学と脳科学の研究です。

まとめると以下のようになります。

  • 衝動性には、問題となる機能不全的な衝動性と認知機能にプラスとなる機能的な衝動性の二つの意味がある。
  • 衝動性には、ドーパミンと脳の奥の部分が関係する。
  • 衝動性を抑えるのには前頭葉の活動が不可欠
  • 衝動性を抑える方法の一つとしてお金に関することを学ぶと良い

衝動性は諸刃の剣です。

機能的な衝動性だと頭の回転が早いと言われますが、衝動買いにより自己破産なんてことも普通にありえます。

これを機会に衝動性と自己抑制について考えていただければ幸いです。

ちなみに、感情抑制や自己抑制については「科学的に正しい感情コントロールの方法:EQを高めて怒らない自分になる」の記事でご紹介しています。

合わせて読んでいただけると嬉しいです。

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参考文献

Buckholtz et al. (2010). Dopaminergic Network Differences in Human Impulsivity. Science, 329(5991).

DeHart et al. (2016). The Effects of Financial Education on Impulsive Decision Making. Plos One, 11(7), e0159561.

Dickman (1990). Functional and Dysfunctional Impulsivity: Personality and Cognitive Correlates. Journal of Personality and Social Psychology, 58(1), 95-102.

Jimura et al. (2013). Impulsivity and Self-Control during Intertemporal Decision Making Linked to the Neural Dynamics of Reward Value Representation. Journal of Neuroscience, 33(1), 344-357.

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