・女性は非論理的だ。
・男性は論理に敏感で女性は感情に敏感だ。
男性と女性の間の永遠のテーマが感情です。
世間一般では、女性は感情的で、男性は理性的という認識があります。
経験的にはそう見えるけれども、実際のところどうなのでしょうか?
今回は、感情の男女差について心理学的知見を主に紹介します。
本記事では以下のことが学べます。
2. 女性の方が感情的なのか?
3. ストレスコントロールはどちらの方が得意なのか?
4. うつ病と性別の意外な関係とは?
スポンサーリンク
①女性は男性よりも感情が強く出る?
感情の男女差に関する研究は結構昔からあります。
1990年代初めにはそれなりに体系的な研究も行われています。
その中でも、Grossman & Wood (1992)は、感情の強さと種類を男女で比べています。
彼らが調べたのは、Fear(恐れ)、Joy(喜び)、Sadness(悲しみ)、Anger(怒り)、Love(愛)の五つの感情です。
この五つの感情を普段どのくらい感じているのかを調べた結果が以下の図です。
この図の上半分が恐れ、喜び、愛、悲しみで、下半分が怒りです。
左側が女性の強さで、右側が男性の強さです。
すると上半分はどの指標でも女性の方が数字が高いですが、anger(怒り)のみ男性の方が高いです。
議論の余地はありますが、普段から女性は怒り以外の感情が強い傾向があると言えます。
次に、Grossman & Wood (1992)は、男女の実験参加者に、「一般的に女性はどういう感情傾向にあるか?」や「一般的に男性はどういう感情傾向があるか?」を尋ねました。
その結果が以下の図です。
この図でも、上半分は愛、恐れ、喜び、悲しみです。
下半分は、怒りです。
左側が、一般の女性はどうかで、真中が、一般の男性はどうかを判断させた結果です。
すると上半分では、女性の方が男性よりも感情の強さ(intensity)も強く、表現(expression)もよくするという結果が出ました。
他方、下半分のanger(怒り)では、男性の方が女性よりも強く、表現もよくするという結果です。
つまり、一般的に怒りは男性で、それ以外は女性の方が感情を強く感じ、より頻繁に顔に出したりすると思われています。
また、顔に電球を張り付けた研究も行って、顔面筋の生理的反応も測定しています。
その結果が以下の図です。
これは、男女両方にポジティブ感情を引き起こすスライドとネガティブ感情を引き起こすスライドを見せた時の顔面筋の反応の結果です。
図の上半分のMenが男性の結果で、下半分のWomenが女性の結果です。
なお、Neutralは感情を引き起こさないスライドです。
一番左側の条件は無視で結構です。
すると、MenとWomenを比べると、統計的には女性の方が男性よりもネガティブな感情を引き起こすスライド(emotion inducing)の値が高いことが示されています。
これらの研究結果から、自分の主観的な評価でも生理的な評価でも、女性の方が男性よりも感情が強く、より表情に出やすいことがわかります。
スポンサーリンク
②女性の方が男性よりも恋愛の過ちに対して嫌な思いをする。
恋のトラブルとして、嫉妬は男女間で異なると言われています。
では、実際にどう違うのか?
それを示したのが、Buunk et al. (1996)です。
Buunk et al. (1996)は、恋愛に関する道徳的なジレンマ課題を用いて、自分のパートナーが感情的に別の人を好きなのが嫌なのか、それとも性的な関係を別の人と持たれるのが嫌なのかを男女で比較して調べました。
それをアメリカ、ドイツ、オランダの3か国で調べた結果が以下の図です。
この図は「自分のパートナーが別の人と性的関係を結ぶ方が、感情的に別の人を好きな状態よりも嫌だ」と答えた人の割合を示しています。
黒が男性で、白が女性です。
左がアメリカ、真中がドイツ、右がオランダです。
多少国による違いはありますが、一貫して男性の方が女性よりも嫌だと答えています。
つまり、男性は自分のパートナーが別の人と性的関係を結ぶことを嫌い、女性は自分のパートナーが別の人を感情的に好きになることを嫌うのです。
嫉妬の対象が性別によって異なるのは興味深いです。
スポンサーリンク
③女性は男性よりもストレス源が多くてストレスレベルも高い。ストレスへの対処も苦手。
女性はストレス源が多く、ストレスへの対処が苦手
女性は何かとイライラしやすく、心理的な不調に陥りやすいです。
これは精神医学的にも言われています。
そうでなくても、一般的に女性の方がストレスが多いことが、Brougham et al. (2009)によって示されています。
彼らは大学生を対象にしたストレス調査を行いました。
大学生活でのストレスを、5つのストレス源(Academic勉強、Family家族、Financial経済事情、Daly Hassles日常のイライラ、Social友人などの社会的関係)に分けて男女で比較したのが以下の図です。
縦軸がストレスを感じている高さです。
横軸がそれぞれのストレス源です。
白が女性で、ねずみ色が男性です。
すると、図より、Academic(勉強)以外の項目で女性は男性よりも悩んでいることがわかります。
では、これらのストレスにどのように対処しているのか?
それを示したのが以下の図です。
縦軸がどのくらいその対処法をより行うのかを示します。
横軸は各対処法です。
特に統計的に男女で有意な差があるのが、Self-HelpとSelf-Punishmentです。
Self-Helpは、「友人や家族に感情的なサポートを求める」ことで、慰めてもらったり、相談したりすることだと思われます。
Self-Punishmentは、「自らを責める」ことです。
前者の対処法は、誰かに助けを求めることなので健全ですが、後者の自分を責める方法は心身ともに良くありません。
大まかな傾向ですが、女性はストレス源もストレスも多く、対処法も好ましくない方法を用いる可能性が高いです。
スポンサーリンク
友達や家族などの社会的サポートを求めると女性はうつ病になりにくい。
先ほどの研究から、女性はストレスを感じると他人に助けを求めるか自分を責めるかの極端な方法をとります。
そこで重要なのが、助けを求める相手がいる方がうつ病になりにくいという事実です。
Kendler et al. (2005)は、男女ペアの双子の研究を行い、家族などを含めたサポートがある人と一年以上後のうつ病の発症率との関係性を調べました。
その結果が以下の図です。
縦軸が、うつ病の発症率。
横軸が、家族や友人などの社会的サポートがどれくらいあるかを示します。
赤が女性で、青が男性です。
すると図より、女性の場合、うつ病の発症率が社会的なサポートがあるほど低くなることが顕著にわかります。
一方男性では、社会的サポートとうつ病の発症率とはあまり強い関係性はありません。
この研究のように、女性はストレスを感じたら、誰かを頼る方がいいと思われます。
そのことで、うつ病の発症リスクが下がり、後々健康でいられます。
スポンサーリンク
④まとめ
以上より、感情の男女差について心理学的研究を見てきました。
まとめると以下のようになります。
- 女性は男性よりも感情価が高く、より表に出やすい。
- 男性は怒りの感情については感情価が高い。
- この傾向は一般的にも思われている。
- 女性は、自分のパートナーが感情的に他の人が好きな状態が嫌。
- 男性は、自分のパートナーが性的関係を他の人と結ぶのが嫌。
- 女性は男性よりも、ストレス源が多く、ストレスレベルも高い。
- 女性はストレスに対して、誰かに頼るか自分を責めるかという極端な行動を男性より取りやすい。
- 特に女性では、家族や友人などの社会的サポートがあるとうつ病の発症リスクが下がる。
女性は一般的に感情に悩む傾向がありますが、臆せず友達や家族などの誰かに頼る方が心理的に健康でいられます。
友達に愚痴るでもいいですし、話を聞いてもらうだけでも心が安らぐと思います。
男性も女性もお互いの違いを認め合えるといいなと思います。
スポンサーリンク
参考文献
Brougham et a. (2009). Stress, Sex Differences, and Coping Strategies: Among College Students. Current Psychology, 28, 85-97.
Buunk et al. (1996). SEX DIFFERENCES IN JEALOUSY IN EVOLUTIONARY AND CULURAL PERSPECTIVE: Tests From the Netherland, Germany, and the United States. Psychological Science, 7(6), 359-363.
Grossman & Wood (1992). Sex Differences in Intensity of Emotional Experience: A Social Role Interpretation. Journal of Personality and Social Psychology, 65(5), 1010-1022.
Kendler et al. (2005). Sex Differences in the Relationship Between Social Support and Risk for Major Depression: A Longitudinal Study of Opposite-Sex Twin Pairs. American Journal of Psychiatry, 162(2), 250-256.
スポンサーリンク