・経営者はサイコパスが多い。
・サイコパスとかは仕事ができるのか?
経営者や人事の方のお悩みの一つが、「採用してはいけない人を決めること」です。
でも、たった一時間の面接で、その人の仕事能力や生産性、職場での態度などわかるはずもありません。
しかし、心理学では、そんな採用してはいけない性格の人をある程度特定しています。
それが、ダークトライアドと呼ばれる三つの性格傾向の人です。
ダークトライアドとは、サイコパス・ナルシスト(ナルシシズム)・マキャベリズムの三つの性格傾向の総称です。
では、そもそもダークトライアドとは何か?
そういう性格の人を採用するとどうなるか?
今回は、ダークトライアドの心理学の研究を紹介します。
本記事では以下のことが学べます。
2. ダークトライアドは、本当に仕事ができるのか?
3. ダークトライアド傾向が高い人と、職場で仲良くなれるのか?
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①心理学が突き止めた「ダークトライアド」とは何か?
ここ最近の性格心理学の研究で注目を集めているのが、ダークトライアドです。
冒頭でも申し上げた通り、ダークトライアドとは、サイコパス・ナルシスト(ナルシシズム)・マキャベリズムの三つの性格傾向の総称です。
では、それぞれ三つの性格傾向は何を表しているのでしょうか?
こちらの記事でも詳しく書いておりますが、もう一度確認しましょう。
1) サイコパス
この名前はご存じの方が多いと思います。
一般的には、非道で全然思いやりのない人のことを指すことが多いと思いますが、心理学や精神医学では少し違います。
サイコパスの特徴は、相手の感情に無関心で、目的を達成するために相手を利用・だますこともいとわない性格の人です。
特に、サイコパス傾向の強い人は、衝動性が高く、犯罪傾向もあったりします。
そんなサイコパスですが、「経営者はサイコパスが多い」とよく言われるように、仕事はできそうな気がします。
本当にそうなのでしょうか?
後ほどまとめて見ていきましょう!
2) ナルシスト(ナルシシズム)
この名前も有名ですね。
自分大好き人間で、他人よりも自分を優先する自己中なイメージが一般的にはあります。
心理学でも似ていて、自分の評判や地位を上げるために他人を利用したりする傾向を持つ人やあまりにも自分の能力や性格の良さを過大視する傾向を持つ人が当てはまります。
ナルシストは、一見厄介ですが、自分が好きなだけであれば他人に迷惑はかけないように思われます。
しかし、心理学の研究で実際にはどうなのでしょうか?
後ほど見ていきましょう。
3) マキャベリズム
この言葉はあまり聞いたことがない人も多いと思います。
マキャベリズムは、簡単に言うと、自分の利益を最大化するために他人を利用することもいとわない傾向の人を指します。
自分の昇進や他人から良い評価をもらうために、他者を平気で踏み台にします。
簡単に言えば、自己中ですよね。
このマキャベリズムの傾向を見ていると、戦略家のイメージがあります。
一見戦略家と言われると仕事ができそうですが、本当はどうなのでしょうか?
後に見ていきましょう!
サイコパス・ナルシスト(ナルシシズム)・マキャベリズムの三つの性格傾向は、一見違うように見えて共通点もあります。
それが、「(他者を)操ること」と「(他者への)無関心」です(Jones & Figueredo, 2013)。
この二つの傾向がダークトライアドのキーポイントになります。
では、ダークトライアドは採用された場合、仕事ができるのでしょうか?
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②心理学が提唱した「ダークトライアド」は仕事ができない!
結論から言いますと、複数の研究でダークトライアド傾向がある人は、仕事ができないと心理学の研究では言われています。
例えば、従業員レベルの人に関するメタ分析の研究では、ダークトライアドの三つとも仕事パフォーマンスとマイナスの関係が示されています(O’Boyle, Jr.ら, 2012)。
では、「経営者はサイコパスが多い」の言説のように、経営者レベルではどうでしょうか?
それを調べたのが、Haar & de Jong (2023)です。
彼らは、840人ものCEOを対象に質問紙調査を行い、ダークトライアド傾向と仕事パフォーマンスの関係を調べました。
この研究での仕事パフォーマンスとは、「管理職を有効に機能させられているか」と「従業員の満足度が高いか」の質問項目を合わせた指標になっています。
すると、ダークトライアドの三つのどの傾向でも、仕事パフォーマンスとマイナスの関係にありました。
つまり、ダークトライアドの傾向が高いCEOほど、仕事パフォーマンスは低いのです。
このように、従業員レベルでもCEOや役員・管理職レベルでも、ダークトライアド傾向の人は仕事ができるとは言いにくいです。
「経営者はサイコパスが多い」というのも、単なる噂程度だと思われます。
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③心理学が明らかにした!「ダークトライアド」は職場で迷惑行動をしやすい!
最後に、ダークトライアドは仕事ができないだけではなく、職場クラッシャーにもなりえることが心理学では言われています。
それを示したのが、Balochら(2017)です。
彼らは、ホスピタリティー部門の149名の従業員に質問紙調査を行い、職場の迷惑行為とダークトライアドの関係を調べました。
すると、下図の通りに、ダークトライアドの三つの傾向とも職場の迷惑行為と関係することが示されました。
つまり、ダークトライアド傾向が高いほど、無断欠勤やさぼりなどをよくしたりして、仕事の邪魔をしやすいのです。
左側の上から順に、サイコパス(Psychopathy)・ナルシシズム(Narcissism)・マキャベリズム(Machiavellianism)が並んでいて、右側に→が出ています。
この→の先が職場の迷惑行動を示します。
そのダークトライアドのそれぞれと迷惑行動とを結びつける→の数値がすべて正になっています。
これは、ダークトライアドであるほど、迷惑行動をよくすることを示しているのです。
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④まとめ
以上より、ダークトライアドの仕事面での心理学の研究を紹介しました。
まとめると以下のようになります。
- ダークトライアドは、サイコパス・ナルシスト(ナルシシズム)・マキャベリズムの三つの性格傾向の総称。
- ダークトライアドは、仕事パフォーマンスが低い傾向にある。
- ダークトライアドは、仕事で迷惑行為をする傾向にある。
ダークトライアドは、仕事の生産性が低いだけではなく、迷惑行為もします。
なので、職場クラッシャーになりやすく、採用では要注意な性格傾向だと言えそうです。
でも、必ずしもダークトライアドが職場クラッシャーになるとは言い切れません。
あくまでも傾向です。
実際に、サイコパスは管理職など職位が高いと職場でも迷惑行為が減る傾向にあるみたいですし(O’Boyle, Jr.ら, 2012)、ダークトライアドはイノベーションのようなブレイクスルーを起こす売り上げを上げる可能性も示唆されています(Haar & de Jong, 2023)。
採用した場合、若干ギャンブルになりますが、ダークトライアドは経営者も人事の方も知っておいた方がいいでしょう。
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参考文献
Balochら(2017). Dark Triad, Perceptions of Organizational Politics and Counterproductive Work Behaviors: The Moderating Effect of Political Skills. Frontiers in Psychology, 8: 1972
Haar & de Jong (2023). Is the dark triad always detrimental to firm performance? Testing different performance outcomes and the moderating effects of competitive rivalry. Frontiers in Psychology, 14: 1061698.
Jones & Figueredo (2013). The core of darkness: Uncovering the heart of the Dark Triad. European Journal of Personality, 27(6), 521–531.
O’Boyle, Jr.ら(2012). A Meta-Analysis of the Dark Triad and Work Behavior: A Social Exchange Perspective. Journal of Applied Psychology, Vol. 97, No. 3, 557–579.
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