
・離婚は親のことだから、子どもには関係ないのでは?
・離婚が子どもの発達に影響するのか?
子どもの人生で大きなショックの一つが親の離婚です。
この離婚の影響は、心理的にも能力的にもあると最近の心理学の研究では言われています。
前回の記事では、研究対象が大学生などある程度大きく成長した後なので、離婚の影響はそれほどあるとは言えませんでした。
しかし、小中高などの思春期やそれ以下の子どもの場合、親の離婚の影響はどうなのでしょうか?
今回は、そんな思春期や青年期の子どもがいるご家庭で離婚が生じた場合の影響を心理学のエビデンスをもとに紹介します。
本記事では、以下のことが学べます。

2. 親の離婚は思春期・青年期の子どもの勉強面や行動面に影響があるか?
3. 親の離婚の影響を受けるとして、親はどんな対策がとれるのか?
- もくじ
- ①親の離婚は思春期・青年期の子どもの心理面に悪影響⁉心理学のエビデンスが語る!
- ②親の離婚は思春期・青年期の子どもの勉強面や行動面に悪影響!?心理学の大規模調査が語る。
- ③まとめ:親の離婚の悪影響に、親はどんな対策がとれるのか?
- 参考文献
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①親の離婚は思春期・青年期の子どもの心理面に悪影響⁉心理学のエビデンスが語る!
心理学では、昔から親の離婚の影響を調べた研究があります。
前回の記事にもある通り、1990年代から親の離婚や両親の不仲が比較的大きくなった子どもでも悪い影響が生じることが示されています。
では、まだ小さい子や思春期・青年期の子どもだとどうなのか?
それを調べたのが、Tulliusら(2022)の研究です。
彼らは、1800以上もの10歳~12歳の子どもがいる家族を調べ、その子どもが21~23歳になるまで合計4回もの追跡調査を行っています。
その結果、以下のことがわかりました。
1) 親が離婚した家庭はそうでない家庭よりも、子どもが攻撃的になったり、引っ込み思案(消極的になる)や不安・抑うつに悩まれたりしやすい。
2) 親の離婚前よりも離婚後の方が、子供への心理的な悪影響は大きい。
3) 親の離婚の悪影響は、子どもが20代前後の若者世代になるまで続く可能性がある。
このように、この研究では親の離婚時期を詳細に調べることによって、複数のことを示しています。
以前の記事や過去の研究では、親の不仲が子どもに悪影響を及ぼすことが示されていましたが、親の離婚それ自体が子どもの心理面に悪い影響を与える可能性があります。
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②親の離婚は思春期・青年期の子どもの勉強面や行動面に悪影響!?心理学の大規模調査が語る。
親の離婚の影響は、思春期・青年期の子どもの心理面だけには留まりません。
実は、子どもの勉強面にも影響があるのです。
それを示したのが、Guettoら(2022)の研究です。
彼らは、国の大規模データを利用して、10万人以上ものヨーロッパ人と2万6000人以上ものアメリカ人を調査しました。
彼らの研究では、中等教育(中学・高校)以上の大学まで行けた人の割合を調べて、親の離婚が子供の勉強面に影響するかを調べました。
その結果が以下の図です。
グラフの▲がヨーロッパ人のデータで、+がアメリカ人のデータです。
縦軸は、上が親の教育歴が浅い家庭、真ん中が親の教育歴が中くらいの家庭、下が親の教育歴が長い家庭を表します。
つまり、下に行くほど親の学歴が高く、家庭教育も良く子どもにされている可能性を示します。
この図は、離婚した家庭のみを示しますが、横軸がマイナスになっていることに注目してください。
つまり、どの教育歴の家庭でも、親が離婚すると大学まで子どもが行ける割合が下がります。
また、重要なのは、親の教育歴が長く、家庭教育がよく施されているであろう子どもほど悪影響を受けやすいことです。
なので、高学歴のご家庭は、子どもが離婚すると子どもの勉強面での将来がより危ぶまれるかもしれません。
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③まとめ:親の離婚の悪影響に、親はどんな対策がとれるのか?
以上より、親の離婚が思春期や青年期の子どもにどんな影響を与えるかを心理学のエビデンスをもとに見てきました。
まとめると以下のようになります。
- 親の離婚は、思春期・青年期の子どもの心理面に悪影響を及ぼしうる。
- 親の離婚は、思春期・青年期の子どもの勉強面・行動面にも悪影響を及ぼしうる。
特に、大学など高等学校に進学する割合が減る。 - 親の離婚が子どもの勉強面に悪く影響するのは、親が高学歴で、家庭教育に力を入れているほど強まる可能性が高い。
ここまで親の離婚が子どもの心理面と教育・行動面に悪影響が及ぶ可能性が示唆されました。
では、その悪影響を取り除いたり、悪影響を弱めるために、親ができることはあるのか?
一応、あると言えます。
今回紹介した論文ではなく、またうろ覚えで申し訳ないですが、「両親の仲」が悪くなければ、離婚の影響が薄まるとの研究結果があったはずです。
しかし、離婚するのは、何らかの両親の不仲でなる可能性の方が高いので、基本的には対策として期待できません。
円満離婚や子どもの前では仲の良い夫婦を演じられる親くらいだと思います。
前回の記事のように、親の不仲も子どもに悪影響です。
せめて、子どもの前では仲の良い親の姿を見せてほしいです。
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参考文献
Guettoら(2022). Parental education, divorce, and children’s educational attainment: Evidence from a comparative analysi. Demographic Research, 46(3), 65-96.
Tulliusら(2022). Adolescents' mental health problems increase after parental divorce, not before, and persist until adulthood: a longitudinal TRAILS study. European Child & Adolescent Psychiatry, 31(6), 969-978.
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