・たっぷり睡眠時間をとったのに、朝起きて疲れが残るのはなぜ?
・高齢者の睡眠の悩みは脳にも影響する!?
睡眠は若者だけの悩みではありません。
高齢者でも睡眠に悩む人はそれなりに多いと心理学の研究では示されています。
例えば、高齢者が日中に眠くなったり、年をとるごとに朝早くに目が覚めたり、朝起きても疲れが残ったりします。
若者でも同様の悩みはありますが、高齢者の場合、睡眠が健康問題に関わります。
では、そもそもなぜ高齢者は睡眠に悩むのでしょうか?
その原因とは何でしょうか?
実は、高齢者の睡眠問題は、高齢者の脳にまで影響するとも最近では言われています。
実際の心理学と脳の研究を紹介しながら、高齢者の睡眠の改善の糸口を探ります。
本記事では以下のことが学べます。

2. 高齢者で睡眠に悩むこと自体が、睡眠問題につながること
3. 高齢者の睡眠問題が脳にまで影響すること
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①高齢者が睡眠で悩む「疲れ」の原因とは?
若者でも高齢者でも、睡眠の研究は古くからあります。
その中でも、高齢者に対象を絞った研究は多いです。
2008年に発表されたGoldmanらの研究は、2000人以上もの高齢者の疲れや睡眠不足を調べた大々的な研究の一つです。
その研究によると、高齢者の「疲れ」の原因候補として4つが主に挙げられています。
1) 睡眠時間が6時間以下の高齢者
2) 一か月で朝早くに目が覚める高齢者
3) BMIが高い高齢者
4) 「自分は健康である」という主観的な健康度が低い高齢者
この四つは、若者の睡眠問題でも共通していますが、高齢者で特に睡眠問題に悩む原因になりやすい要因です。
そのため、運動をしてBMIや主観的健康度を高め、良い疲れを経験し、睡眠時間をたっぷりとるのが、睡眠改善の一つだと言えそうです。
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②高齢者の場合、睡眠不足に悩むこと自体が睡眠問題の原因になりうる!?
少し変わった研究が、2000年に発表されています。
平均年齢73歳の高齢者190人以上を対象にしたAlapinら(2000)の研究です。
彼らは、先ほどの研究と同様に、高齢者の睡眠の実態を調査しています。
しかし、ここで、高齢者の睡眠実態にもとづいて、3つの群に分けています。
1)よく睡眠をとれている高齢者
2)あまり睡眠をとれていないけれど、睡眠に悩んでいない高齢者
3)あまり睡眠をとれておらず、睡眠に悩む高齢者
すると、結果は以下のようにまとめられます。
・あまり睡眠がとれていない高齢者で、睡眠に悩む人は、悩んでいない人よりも、日中に眠気を感じやすく、日中に集中するのが難しいと答える。
・あまり睡眠がとれていない高齢者で、睡眠に悩む人は、悩んでいない人よりも、うつ病の傾向が高い。
この2つが主な結果になります。
つまり、睡眠不足に悩むこと自体が、日中の眠気やうつ病に関係するのです。
睡眠不足なのに、ぴんぴんとして元気な高齢者がいらっしゃいますが、その高齢者は睡眠の悩みに頓着していないのかもしれません。
睡眠の悩みに自覚的になるほど、睡眠に悩んでしまい、さらに睡眠が悪くなる悪循環はありそうです。
「今日はあまり眠れなかったな」と思っても、「明日は眠れるか」と前向きに捉えて、睡眠不足をあまり気にしない方が、高齢者にとっては良さそうです。
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③高齢者の睡眠の悩みは脳にも影響する!?
高齢者の場合、睡眠の悩みが脳に影響することが示されています。
Carvalhoら(2017)の研究では、高齢者が「日中の眠気」と「疲れ」にどれくらい悩んでいるかで、脳の構造に影響が及ぶことを示しました。
全体の結果として大事なのは、日中の眠気よりも疲れの方が脳の全体の構造がより縮むと示されています。
特に、記憶に関する側頭葉や海馬と呼ばれる領域で、「疲れ」があるほど脳の体積がより縮んでいると示されています。

上の図は、論文の図ですが、縦軸が脳がどれくらい縮んでいるのかを示します。
下に行くほど縮む長さが大きいです。
横軸は年齢を表します。
すると、年齢が高くなるほど脳は縮んでいきますが、青(Health Aging: 睡眠に悩みがない)よりも、赤(EDS: 日中眠気)の方がより縮み、むらさき(fatigue: 疲れ)の方がさらにより縮んでいることがわかります。
「日中の眠気」と「疲れ」の睡眠の悩みは、糖尿病(Diabetes)や肥満(Obesity)よりも脳への影響度が高いのです。
そのため、高齢者の睡眠問題は、健康問題と同等か、それ以上に脳にとっては深刻な影響を与えうるのです。
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④まとめ
以上より、高齢者の睡眠の悩みについて見てきました。
まとめると以下のようになります。
- 高齢者が睡眠をとっているのに疲れる原因は、「睡眠時間が6時間以下」「一か月で朝早くに目が覚める」「BMIが高い高齢者」「『自分は健康である』という主観的な健康度が低い」の四つがありそう。
- 高齢者は、睡眠不足で、睡眠に悩むこと自体が睡眠を悪くし、日中の眠気などに関係しうる。
- 高齢者の睡眠の悩みで、「疲れ」があると脳の体積が縮みやすく、それが記憶などの問題に影響しそう。
若者の場合、多少睡眠不足でも、脳への影響は取り返せる気はしますが、高齢者の場合はなかなか縮んだ脳をもとに戻すのは難しそうです。
最近では、睡眠外来があるクリニックや病院も増えてきましたので、もし気になるのなら、一度相談された方が良いと思います。
睡眠問題は、日中の活動に影響し、活き活きと過ごせるかに大きく関わるからです。
一度、睡眠を見直してみるのも良いかもしれませんね。
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参考文献
Alapinら(2000). How is good and poor sleep in older adults and college students related to daytime sleepiness, fatigue, and ability to concentrate? J Psychosomatic Research, 49(5), 381-90.
Carvalhoら(2017). Excessive daytime sleepiness and fatigue may indicate accelerated brain aging in cognitively normal late middle-aged and older adults. Sleep Medicine, 32, 236-243.
Goldmanら(2008). Sleep problems and associated daytime fatigue in community-dwelling older individuals. J Gerontol A Biol Sci Med Sci, 63(10), 1069-75.
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