心理学・脳科学/Psychology・Neuroscience 記事/Article

匂いと嗅覚の心理学:香りを制する者は魅力と能力UPにつながる

・どんな香りが人を惹きつけるのか

・くさい匂いは嫌だ

・体臭に悩んでます

・香りの効果ってよく聞くけど実際どうなのだろう?

私たちの五感の中でも大きな割合を占めるのが、嗅覚です。

町中には、香水や香り付き洗剤など、匂いにまつわる商品でいっぱいです。

最近では、香りが集中力やリラックスに効果があるなんて言われています。

でも、これらは噂や個人的体験談にすぎません

本当にそうなのかは疑問です。

そこで今回は、エビデンスに基づいて、匂いと嗅覚に関する心理学的知見をご紹介します

香りは本当に私たちの記憶や集中力などの認知機能に影響するのか?

良い匂いは人を惹きつけて、モテにつながるのか?

こういった疑問に答えます。

本記事では以下のことが学べます。

1. 香りが記憶に関係すること

2. 嗅覚には年齢差があること

3. 香りや匂いの様々な心理学的効果について

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①匂いや香りは、過去の懐かしい記憶を思い出させる:匂いの記憶への効果

匂いや香りが記憶に影響するという研究は結構古くからあります。

その中でも、匂いや香りが記憶を誘発することは日常生活でもよくあること

紅茶の香りが昔の淡い記憶を思い出させたり。

お味噌汁の優しい匂いが昔の母親との記憶を想いださせたり。

匂いや香りはそれくらい記憶と強く結びついていると言えます。

この経験を実験で体系的に調べたのが、Herz & Cupchik (1992)です。

彼らは、様々な匂いを実験参加者に嗅がせて、どのような記憶を思い出したのかを報告させました。

すると以下のような特徴が見られました。

  • 匂いを嗅いで思い出した記憶の内

53%がポジティブな記憶・7.4%がネガティブな記憶・39.6%が感情に関係のないニュートラルな記憶です。

  • 50.9%の人が、匂いによって鮮明に記憶を思い出し、14%の人があいまいな記憶を思い出す。
  • 思い出した記憶の47.8%が特定の出来事の記憶で、25.3%が一般的な感情を思い出す。
  • 63.2%の人が四年以上前の記憶を思い出す。その中でも大半が子供の時の記憶。
  • 身近な匂いほど記憶を思い出しやすい。

これらの五つの知見が示されました。

匂いや香りによってノスタルジーに浸るのは良くあることです

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匂いや香りは記憶力を上げる

次の匂いと香りにまつわる記憶のお話は、記憶成績UPに匂いや香りが関わることです。

Herz (1997)は、バイオレットリーフというお花の香りがする実験室と何の香りもしない実験室とで実験参加者の記憶力テストを行いました。

実験では、さらにスピーチを後にすることを伝えた不安群と部屋でそのまま待機するニュートラル群も設けられています。

つまり、「不安群・香りあり(Anxiety-Odor)」「不安群・香り無し(Anxiety- No Odor)」「ニュートラル群・香りあり(Neutral-Odor)」「ニュートラル群・香り無し(Neutral-No Odor)」の四つの条件があります。

それぞれの記憶テストの成績が以下の図です。

odor memory

縦軸が記憶成績で上に行くほど成績が良いことを示します。

横軸は条件の違いです。

図によると記憶成績を良い順に並べると

 

「不安群・香りあり」「ニュートラル群・香りあり」「不安群・香り無し」「ニュートラル群・香り無し」

 

上記のようになります。

重要なのが、記憶成績1位と2位が「香りあり」だということ

つまり、香りが記憶成績の向上に関係しているのです。

受験の噂で部屋に良い香りのあるものを置くと勉強がはかどると言いますが、バイオレットリーフというお花の香りに関してはそれが当てはまりそうです。

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②嗅覚は年齢によって差が生じる。

次に、嗅覚のお話です。

嗅覚は、年齢とともに敏感さが変化します。

子供は匂いに鈍感?大人と比較した子供の嗅覚

Stevenson et al. (2007)は、平均6歳の小学生の被験者と平均26歳の大人に匂いの識別実験を行いました。

すると結果は以下のようになります。

odor children

縦軸は、嗅覚の敏感さを示しています。

横軸は、実験の種類と年齢群を表しています。

黒の棒グラフが小学生。

白の棒グラフが大人です。

すると、どの実験でも小学生よりも大人の方が嗅覚が良いことが分かります

つまり、小学生は大人に比べて嗅覚が鈍感なのです

論文では、経験の差が原因だとしていますが、嗅覚にも成熟はあります。

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お年寄りは匂いに鈍感?若者と比較したお年寄りの嗅覚

Larsson et al. (2009)は、平均27歳の若者・平均68歳のお年寄り・平均84歳のお年寄りに対して嗅覚テストをしました。

その結果が以下の図です。

odor elderly

この図は、各年齢群の基礎データを示しています。

左が若者、真中が年齢が若めのお年寄り、右が年齢が高めのお年寄りのデータです。

図の一番下の欄であるOlfactory thresholdをご覧ください。

この欄が、嗅覚の敏感さを示す指標です。

高いほど嗅覚が鋭いことを示します。

すると、図のように、若者>若めのお年寄り>年齢高めのお年寄りの順に成績が並んでいます。

このことから、匂いは成熟するが、年齢が一定を超えると嗅覚が鈍感になっていくことが分かります。

先ほどの小学生の研究を合わせて考えると、年齢と嗅覚の鋭さの関係性は逆U字型になりそうです。

子供時代は嗅覚が発達しきれず嗅覚が鈍感であり、大人になると嗅覚が成熟して鋭くなる。しかし、年齢を重ねて定年後までいくと嗅覚が鈍感になっていくのです。

年齢によって、嗅覚に違いが生じます。

なので、香りや匂いを扱う職業の方々は注意が必要です。

必要以上に、香りを強くしたり、逆に弱くしたりしがちになるからです。

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③匂いや香りの様々な心理学的効果

匂いや香りの心理学的効果は様々ありますが、今回は日常生活で身近なものだけ取り上げます。

匂いや香りは疲労回復効果と注意力喚起の効果がある

Raudenbush et al. (2009)は、ドライブシミュレーターを使ってペッパーミントとシナモンの香りが心理学的にどのように影響するのかを調べました。

すると、彼らは、疲労の数値がペッパーミントでもシナモンでも下がることを報告しています。

また、注意力の向上にも両方の匂いは関係します。

odor alertness

この図は、注意力と時間経過の関係性を示しています。

縦軸が注意力です。

上に行くほど注意力が高い状態を表します。

横軸が、左がシミュレーターを始めた時、真中が中盤、右がシミュレーターが終わった時を示しています。

赤がペッパーミント。

黄色がシナモンを嗅いだ時です。

図から、時間が経過するごとに注意力は落ちてきますが、ペッパーミントとシナモンを嗅いでいると、注意力の落ち込みが少ないことが分かります。

つまり、注意力の維持にも匂いは関係しています

疲れて注意力が散漫な時には、ペッパーミントかシナモンを嗅ぐといいでしょう。

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香りや匂いは異性の魅力度につながる。匂いでモテる?

最後は、誰もが気になる匂いと異性としての魅力度との関係です。

Lenocova et al. (2012)は、男性が数日着たTシャツを用意し、香水の匂いがある条件とない条件とで女性被験者がどのくらいその男性が魅力的なのかを匂いで判断しました。

すると以下の結果になりました。

odor perfume

上の図が魅力度。

下の図が心地よさです。

白が香水なし。

縞模様が香水ありです。

一番右端のAll Donorsの欄をご覧ください。

香水ありの方が、魅力度も心地よさも高いです。

さらに、彼らは、男性に香水を自分で選ばせた条件と実験者が配った条件とを比較しました。

それが下図です。

odor own perfume

この図も先ほどと同じ見方で結構です。

白が、自分で選んだ香水をつけた場合。

縞模様が実験者が選んだ香水をつけた場合です。

すると、自分で選んだものの方が魅力度も心地よさも高いです。

つまり、女性は香水をつけている男性を好み、さらに自分で選んで自分に合っている香水をつけている男性をより魅力的に感じるのです。

匂いや香りはこれほどまでに影響します。

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④まとめ

以上より、匂いと嗅覚の心理学的知見を見てきました。

まとめると以下のようになります。

  • 匂いや香りから過去の記憶を思い出しノスタルジーに浸る現象は実験で確かめられている。
  • 香りによって記憶力が向上する。
  • 嗅覚には年齢差があり、子供とお年寄りは大人に比べ嗅覚が鈍感である。
  • 匂いや香りは疲労回復と注意力向上に役立つ。
  • 匂いや香りは異性としての魅力度を高める。

匂いや香りには様々な可能性があります。

まだまだ研究途上ですが、人間の幸せに匂いや香りは欠かせません。

嗅覚ももちろん大事です。

良い香りを楽しんだり、匂いから過去を思い出したり。

これらの知見が人間の幸福に生かされることを願っています。

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参考文献

Herz (1997). Emotion experienced during encoding enhances odor retrieval cue effectiveness. American Journal of psychology, 110(4), 489-505.

Herz & Cupchik (1992). An experimental characterization of odor-evoked memories in humans. Chemical Senses, 17(5), 519-528.

Larsson et al. (2009). Bad Odors Sticks Better Than Good Ones olfactory Qualities and Odor Recognition. Experimental Psychology, 56(6), 375-380.

Lenochova et al. (2012). Psychology of Fragrance Use: Perception of Individual Odor and Perfume Blends Reveals a Mechanism for Idiosyncratic Effects on Fragrance Choice. Plos One, 7(3), e33810.

Raudenbush et al. (2009). Effects of Peppermint and Cinnamon Odor Administration on Simulated Driving Alertness, Mood and Workload. North American Journal of Psychology, 11(2), 245-256.

Stevenson et al. (2007). Age-Related Changes in Odor Discrimination. Developmental Psychology, 43(1), 253-260.

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