心理学・脳科学/Psychology・Neuroscience 記事/Article

語彙力の脳科学:ボキャブラリーを増やす効果的な勉強法とは?

・語彙力が低いです。

・言語化が苦手です。

・ボキャブラリーを増やしたいです!

何かを言葉で表現したいのに、上手く言葉が見つからないことはありませんか?

私はしょっちゅうです。

面白い体験をした時や美味しいものを食べた時に、語彙力が足らず稚拙な表現になってしまいます。

そのような悩みを察してか、最近書店では多くの語彙力に関する本が並んでいます。

でも、そのような本を買って読んでも全然ボキャブラリーが豊富にならない

そんな人のために今回は、語彙力に関する脳科学的知見をご紹介します。

また、ボキャブラリーを増やしたい人のために科学的に効果的な語彙力が上がる勉強法もご紹介します。

本記事では以下のことが学べます。

1. 語彙力の脳内メカニズム

2. 語彙力を増やすための勉強法

3. 結局ボキャブラリー向上に必要なことは何か?

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①語彙力(ボキャブラリー)の脳内メカニズム

語彙力の脳科学的研究は意外と少なく、2010年代に入ってようやく研究が進みました。

数少ない研究でもMacedonia et al. (2010)の研究は語彙力研究の火ぶたを切りました。

彼らは自然言語、ドイツ語や日本語と異なるいわゆる人工言語を実験参加者に学ばせました。

単語と母国語の意味を対呈示して学習させ、後程同自然言語を見せて意味を正しく言えるかをテストしました。

その時に、成績が優れている人と成績がイマイチな人との比較を行い、自然言語の語彙の大小に関連する脳領域を特定したのです。

まずは、学習成績の結果が以下の図です。

vocabulary performance

語彙の学習は4日間続けました。

一番上の段は一日目の学習成績で、一番下が四日目の学習成績です。

Total Performanceの欄を見ると、一日目では20%弱の学習成績だったのが、四日目には8割くらいまで覚えられるようになっています。

重要なのが、High PerformersLow Performersの欄です。

学習成績を見てみると、High Performersの方が早くかつ成績が良いです。

Low Performersは学習成績も四日目で65%くらいです。

このように、同じ言葉を学習しても語彙力に差が見られました

High PerformersLow Performersの語彙力の差の脳活動を調べた結果が以下の図です。

brain activation difference between high performers and low performers vocabulary

図の黄色く光っている部分が語彙力の高い群でより活動した領域です。

図より、いわゆる側頭葉の上の部分が光っていることが分かります。

側頭葉は言語学習等に関わる領域ですが、複数の感覚や知覚を統合する領域でもあります。

自然言語の意味と母国語の意味との統合を行うことが反映されているかもしれません。

そして、High Performersの方が意味の統合に優れていると言えるでしょう。

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Macedonia et al. (2010)の研究は、その場の言語獲得率を調べています。

では、日常生活で使用する意味での語彙力と関係するのでしょうか?

答えは、Yesです。

それを示したのが、Hosoda et al. (2013)です。

彼らは、英語学習者の英語の語彙力を調べてボキャブラリーの脳内メカニズムを調べました。

特に、TOEICを指標に用いています。

まずは、英語のボキャブラリーの成績と脳構造との関係性です。

brain structure and vocabulary

aが脳の表面に当たる灰白質の体積を調べた研究です。

すると、下のグラフのように、英語のボキャブラリーが豊富なほど(EVT scoreが右に行くほど高い)、赤く光る前頭葉の体積が増えていることがわかります(縦軸の上に行くほど体積が大きい)

つまり、英語の語彙力の大きさによって脳構造に違いが生じます。

bは、前頭葉側頭葉などを主につなぐ白質領域のつながり具合についてです。

aと同様にボキャブラリーが豊富なほど前頭葉と側頭葉のつながり具合が強いことがわかります。

英語の学習を進めて、語彙力が上がるほど脳構造も変化します。

特に、前頭葉と側頭葉が関わりそうです。

次に、TOEICを勉強した人とそうでない人のTOEICの成績と脳領域についての結果が以下の図です。

brain structure and TOEIC English study performance

aは縦軸が勉強前と比べたTOEICの成績変化率で、横軸が条件です。

CGはTOEICを勉強しなかった群。

TGはTOEICを勉強をした群です。

ちなみに、post1はTOEIC勉強直後、post2はTOEIC勉強後1年が経過した時です。

すると、TG群で成績変化率がグンと上がっていることがわかります。

しかし、勉強をして一年たつと成績は下がります

この時の脳構造の変化がbの図です。

この領域は、先ほどの前頭葉の領域です。

bで囲んでいる下のグラフを見ると分かりやすいです。

横軸が成績変化率で縦軸が前頭葉の体積の変化です。

すると、TOEICの成績が上がるほど前頭葉の体積は増加していきます。

これも先ほどと整合的な結果ですね。

最後に、TOEICを勉強することによって脳のつながり具合がどうか?

その結果が以下の図です。

brain connectivity and TOEIC study performance vocabulary

この図の上が前頭葉間の脳領域のつながり具合です。

下が前頭葉と側頭葉を結ぶ脳領域間のつながりです。

どちらも、先ほどの図と同様に、TOEICの成績が上がるほどつながりが強くなっています

このように、語彙力の増加は脳構造の変化をも伴います。

特に、前頭葉と側頭葉が関係しそうです。

前頭葉は学習全般や言語に関わります。

前頭葉と側頭葉のつながりが良くなると、外国語学習が容易になるのかもしれません。

ここで重要なのが、語彙力は勉強し続けないと落ちる可能性があることです。

ご紹介した全てのグラフのTGのpost2がそれを物語っています。

つまり、一年後は成績も脳の体積も下がるのです。

何も勉強しなければ、せっかく学んだ語彙もなくなります。

なので、ボキャブラリーが豊富な人になる秘訣は不断の勉強にあると思われます。

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②語彙力アップのために脳科学的に有効な勉強法とは?

ボキャブラリーの脳内メカニズムを見てきたところで、これを応用した効果的な勉強法をご紹介します。

今のところ有効性がありそうなのが、テキストベースでの勉強テストの効果の活用です。

経験ベースよりも教科書などのテキストベースで勉強する方が語彙力アップに効果的!

まずは前者のテキストベースについての研究です。

Jeong et al. (2010)は、テキストベースか経験ベースのどちらの勉強法の方が効果的なのかを調べました。

text base learning or situation base learning

彼らはこの図のように、知らない単語と母国語の意味とを対呈示して実験参加者に学習させました

少しわかりにくい図ですが、SLというのが経験ベースの学習で、単語の意味に合ったシチュエーションの動画を見て意味を学習すします。

他方、TLテキストベースの学習で、人が単語を発言し、母国語の意味を紙に書いて知らせています。

それ以外は無視していただいて結構です。

すると、学習成績は以下のようになりました。

vocabulary performance difference between text based learning and situation based learning

この図の、上の段のAccuracyが正答率です。

すると、SLでSの欄とTLでTの欄を見ると、経験ベースよりテキストベースの方が数値が高く、成績が良いことがわかります。

つまり、外国語を学習するときに、語彙を増やすには自分の経験に基づいて学習するよりも、教科書や単語帳で一生懸命勉強した方が効果的なのです。

この時の脳活動の結果が以下の図です。

the difference of brain activations between text based learning and situation based learning

上の図が経験ベースの場合の脳活動。

下の図がテキストベースの場合の脳活動です。

経験ベースでは側頭葉の上の部分で、テキストベースでは前頭葉が光っていることがわかります。

どちらの領域でも先ほどご紹介したボキャブラリーの脳構造と合致しています。

しかし、前頭葉を駆使したテキストベースの方が成績が良いことから、より有効だとわかります。

過去の研究で。前頭葉をより使った方が記憶の定着に良いという研究があります。

詳細は割愛しますが、その研究とも整合的であり、前頭葉を使うテキストベースの学習が良い事の証拠にもなります。

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テストの効果の活用で語彙力アップ!

最後は、テストの効果の活用です。

テストの効果とは何か?

それは、同じ学習時間でも単に教科書を眺めているより、テストをした方が記憶定着率が高いという効果です。

この効果を応用した外国語学習の研究がvan den Broek et al. (2013)です。

彼らはテストの効果を研究する典型的な手法を外国語学習でも使用しました。

実験参加者に、馴染みのないスワヒリ語と母国語の意味を対呈示して学習させます。

この時、テスト条件では、スワヒリ語のみが呈示されて正しい意味を答えるテストを実施しています。

一方、単なる学習では、ずっとスワヒリ語とその意味の対呈示を見せます。

一定時間後、どれだけ学習したのかをテストしました。

すると成績は以下の通りです。

test effect performance vocabulary

図の左側が学習成績です。

縦軸が正答率、横軸が条件です。

黒がテスト群で、ねずみ色が単なる学習群です。

図の左側半分のみ注目すると、明らかにテスト群の方が単なる学習群よりも正答率が高いです。

つまり、テストの効果は語彙力向上にも役立ちます

この時の脳活動が以下の図です。

the brain activation of test effect vocabulary

図Aは、単なる学習群よりもテスト群の方がより活動した領域です。

すると、一番左の前頭葉の領域で複数活動していることがわかります。

テストの効果は、前頭葉の活動上昇と関係がありそうです。

図Bもテストの効果時に重要な領域です。

上の図だけに注目するとこれまで登場した側頭葉の活動が見られます

今までの研究と整合的で、テストの効果でも前頭葉と側頭葉が関係します。

やはり、メカニズムに沿った勉強法は理にかなっていると言えそうです。

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③まとめ

以上より、語彙力に関する脳科学的知見を見てきました。

まとめると以下のようになります。

  • 語彙力の脳内メカニズムでは前頭葉と側頭葉が重要。
  • ボキャブラリーを増やす勉強をすると前頭葉の体積が増加。
  • ボキャブラリーを増やす勉強をすると前頭葉間と前頭葉―側頭葉間の領域のつながりが強くなる。
  • 語彙力向上に効果的な勉強法は、教科書などのテキストベースで勉強する方がいい。
  • テストの効果はボキャブラリーを豊富にする有効な勉強法。

個人的に最も大事なのは、語彙力を上げるために勉強し続けることだと思います。

実際に、Hosoda et al. (2013)の研究はTOEICを使用してそれを証明しています。

私はドイツ語を学んでいましたが、勉強しなくなると急に忘れてしましました。

これは母国語である日本語でも同様です。

ボキャブラリーが方豊富な方は不断の努力によるところが大きいのではないかと思います。

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参考文献

Hosoda et al. (2013). Dynamic Neural Network Reorganization Associated with Second Language Vocabulary Acquisition: A Multimodal Imaging Study. Journal of Neuroscience, 33(34), 13663-13672.

Jeong et al. (2010). Learning second language vocabulary: Neural dissociation of situation-based learning and text-based learning. NeuroImage, 50, 802-809.

Macedonia et al. (2010). Neural Correlates of High Performance in Foreign Language Vocabulary Learning. Mind, Brain, and Education, 4(3), 125-134.

van den Broek et al. (2013). Neural correlates of testing effects in vocabulary learning. NeuroImage, 78, 94-102.

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