overgeneralization of fear and anxiety eye

心理学・脳科学/Psychology・Neuroscience 精神医学/Psychiatry 記事/Article

2023/3/29

不安や恐怖の対象が広がって一般化する脳のメカニズム

・一回不安になるとどんなことも不安になる。 ・怖いと感じたらどんどん怖いものが増えていく。 ・なんで不安や恐怖は一般化していくのか? 大事な試合やプレゼン前で、失敗の不安や恐怖に駆られて眠れなくなることはよくあります。 その時、普段不安に感じないことでも不安になったりしませんか? あるいは、ホラー映画を見た後は普段は怖くないものも怖くなったりしませんか? このように、不安や恐怖を抱くと普段は不安や恐怖を抱かない対象にまでそれらを感じてしまうことを心理学や脳科学では「一般化」と呼ばれます。 この一般化はどの ...

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age and working memory eye

心理学・脳科学/Psychology・Neuroscience 記事/Article

2023/3/9

心理学が解明!年齢が上がると記憶力が低下するのはなぜか?

・記憶力が年々悪くなっている。 ・年をとうるごとに、物忘れがひどくなってきている。 ・なぜ年齢が上がると記憶力が下がるのか? 年齢が上がるにつれ、記憶力の低下が激しくなっていきます。 もともと記憶力がよくなかったのにと落胆する人は多いです。 「若い頃は、教科書を一回読めば覚えられたのに」と過去を懐かしむことも。 では、なぜ年齢が上がると忘れっぽくなるのでしょうか? そもそも年齢が上がるにつれ、記憶力が下がることは本当なのでしょうか? 年齢による記憶力の低下は防ぐことができるのでしょうか? そんな疑問を心理 ...

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study method eye

心理学・脳科学/Psychology・Neuroscience 記事/Article

2023/2/24

勉強ができる生徒はどんな勉強法をしているのか?心理学が認める効果的な勉強法とは

・どんな勉強法がよいのかわからない。 ・皆がどんな勉強法をしているのかを知りたい。 ・本当にその勉強法は効果があるの? 受験や資格試験など、人生には勉強が必要です。 でも、勉強が苦手な人が多く、どんな勉強法をしていいのかわからない人がたくさんいます。 では、勉強ができる生徒がどんな勉強法をしているのか? また、普段皆がどんな勉強をしているのか? そして、その勉強法が本当に効果的なのか? 今回はこれらのことを心理学で検証してみます。 本記事では以下のことが学べます。 1. 普段皆がどんな勉強法をしているのか ...

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精神医学/Psychiatry 記事/Article

カウンセリングはうつ病に効果があるのか?抗うつ薬と心理療法との比較

・カウンセリングは意味あるの?

・カウンセリングはそもそも心の病に有効なのか?

・抗うつ薬治療や心理療法と比べてどうなの?

人が心や対人関係で悩んだ時に利用するのがカウンセリングです。

カウンセリングは、話を聞いてもらって心の健康を回復させるイメージがある。

では、近年増え続けるうつ病にもカウンセリングは効果的なのでしょうか?

精神科に通って抗うつ薬治療をするものの、医師には薬の調整をしてもらうだけで長時間話を聞いてもらえない。

そんなうっぷんが溜まっている人も多いと思います。

それなら、カウンセリングでもしうつ病にも効果があるのなら、話も聞いてもらえるし一石二鳥ですよね。

今回はそんなカウンセリングのうつ病への効果についてエビデンスを基に考えます。

本記事では以下のことがわかります。

1. そもそもカウンセリングはうつ病に効果的なのか?

2. カウンセリングは抗うつ薬治療と比べて有効なのか?

3. カウンセリングは他の心理療法と比べてどうなのか?

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①カウンセリングはうつ病患者のうつ病度合いを下げるのに効果的である。

そもそもカウンセリングを含めた心理的治療はうつ病に有効なのか?

多くの論文を集めて分析しなおし、その研究分野の方向性を探るメタ分析という手法を使って、心理的治療がうつ病に有効なのかを調べたのが、Cuijpers et al. (2006)である。

ちなみに、メタ分析の詳細は以下の記事に詳しく書いております。

合わせてお読みください。

彼らは高齢者のうつ病患者を対象にしています。

彼らの研究結果は以下の図の通りです。

the psychological treatment effect on depression

この図は、様々な研究報告の効果度をそれぞれ示しています。

■が右に行くほど効果的だということが示されています。

大事なのは、一番下のFixedの欄で、全体の効果度合いを総括している指標です。

すると、0.72くらいの数値ですが、これはまあまあ大きな効果がある数値です。

なので、心理的治療自体はうつ病に有効なのがわかります。

ちなみに、同研究で抗うつ薬治療と心理的治療との効果の違いも比較分析しています。

結果は、抗うつ薬治療と心理的治療とでは統計的な差があるとは言えず、同程度くらいうつ病度合いを下げる効果がありそうです。

しかし、心理的治療の中でも、カウンセリングや他の心理療法などを分析してみても、特に差は見られなかったという結果です。

要は、カウンセリングでもそれなりにうつ病度合いを下げるのに有効そうですが、過去の研究を調べるといくつか注意が必要そうです。

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②カウンセリングがうつ病に有効だとする知見への注意点

まず大切なのは、カウンセリングが抗うつ薬治療と比べて有効とされる条件です(Menchetti et al., 2014)。

それは…

1. うつ病の重症度が比較的軽度であること

2. 記憶や注意など他の認知機能に支障がきたしていないこと

3. 不安障害などの合併症がないこと

などです。

特に上記の条件に当てはまる場合で、抗うつ薬治療よりかはカウンセリングの方がうつ病度合いを下げるのに有効だとMenchetti et al. (2014)は主張しています。

研究によっては、もう少し条件が変わりますが、だいたいこれらのことが共通しています(Magnani et al., 2016)。

一方、カウンセリングと他の心理療法との比較はどうでしょうか?

特に日本でも保険点数化されている認知行動療法(CBT)という心理療法と比べた研究がPybis et al. (2017)です。

彼らの研究では、100以上のサイト(施設)で3万人以上ものデータを分析しています。

すると、カウンセリングは認知行動療法と同程度うつ病度合いを下げる効果があると示されています。

まとめると、確かに、抗うつ薬治療や認知行動療法と比べてカウンセリングはうつ病患者さんのうつ病度合いを下げる効果があるかもしれません。

しかし、カウンセリングによって「どれくらいのうつ病患者さんが治ったのか?」「うつ病が再発しないのか?」といって大切な指標はあまり過去の研究では扱われていない印象です。

なので、カウンセリングはうつ病度合いを下げるけれども、根本治療できるのかは疑問です。

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③まとめ

以上より、カウンセリングがうつ病に有効なのかを見てきました。

まとめると以下のようになります。

  • カウンセリングには一定程度うつ病患者のうつ度合いを下げる効果がある。
  • カウンセリングは抗うつ薬治療と同じくらい効果的である。
  • しかし、それにはいくつか条件があると思われる。
  • カウンセリングは認知行動療法という他の心理療法と同じくらい効果的だと思われる。
  • しかし、以上の知見は全てうつ病患者のうつ度合いを調べているだけで、根本的な治療になるのかどうかは謎のまま

今後、カウンセリングの長期的な研究が必要とされています。

これはカウンセリングの可能性でもありますが、純粋に生物学的医学的な問題であるうつ病にどれくらい効果的なのかはまだまだわからないことが多いです。

私のスタンスとしては、うつ病手前までのグレーゾーンであればカウンセリングでも構わないと思いますが、うつ病の診断が下れば精神科医に任せた方が良い気がします。

それくらい、カウンセリングのうつ病への効果のエビデンスはまだ弱いと思います。

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参考文献

Cuijpers et al. (2006). Psychological treatment of late-life depression: a meta-analysis of randomized controlled trials. International Journal of Geriatric Psychiatry, 21, 1139-1149.

Magnani et al. (2016). Treating Depression: What Patients Want; Findings From a Randomized Controlled Trial in Primary Care. Psychosomatics, 57, 616-623.

Menchetti et al. (2014). Moderators of remission with interpersonal counselling or drug treatment in primary care patients with depression: randomised controlled trial. The British Journal of Psychiatry, 204, 144-150.

Pybis et al. (2017). The comparative effectness and efficiency of cognitive behavior therapy and generic counselling in the treatment of depression: evidence from 2nd Uk National Audit of psychological therapies. BMC Psychiatry, 7: 215.

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