・自己肯定感が低くて今の職場にいていいのか…。
・自己肯定感の低さをカバーするにはどうしたらいいのか?
最近よく聞く自己肯定感は、仕事にも影響します。
自己肯定感とは、心理学では「自尊心」や「自尊感情」と呼ばれ、「自分に価値があると思える感覚」を意味します。
自分の価値を感じられなければ、仕事に身が入りません。
自己肯定感が低く、「私なんて…」と言う部下や同僚に悩まされることはありませんか?
今回は、自己肯定感の高低が仕事のパフォーマンスにそもそも影響するのか?
影響するとして、どうしたら良いのか?
そんなお話を、心理学の論文をもとに考えていきます。
本記事では以下のことが学べます。
2. 自己肯定感の高低が離職等にもつながるのか?
3. 自己肯定感が低いことによる影響をどうやってやわらげることができるのか?
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①自己肯定感が低いと仕事パフォーマンスも低いという衝撃の事実!
自己肯定感が仕事に関係するのかは結構昔から研究が行われています。
古くは、1970年代の研究も見つけました。
そんな自己肯定感が仕事のパフォーマンスに影響するかどうかを調べたのが、Judge & Bono (2001)です。
彼らは、自己肯定感と仕事成績の関係性を調べた研究論文を集めて分析しなおし、一定の結論と指針を与える「メタ分析」という方法を駆使して、自己肯定感が仕事成績に影響するのかを調べました。
なお、メタ分析の詳細はこちらの記事をお読みください。
要は、メタ分析は、最もエビデンスレベルの高い研究に位置付けられています。
Judge & Bono (2001)の研究結果が以下の図です。
この図は、縦軸が、仕事満足度との関連性の強さを表します。
上に行けば行くほど、各指標が仕事満足度に影響することを意味します。
横軸は、
Self-esteem(自己肯定感)
Generalized self-efficacy(一般的な自己効力感):「自分でこれはできそうだ」と思える能力の感覚
Locus of control(ローカス・オブ・コントロール):
Emotional stability(感情の安定性)
をそれぞれ表します。
すると、最も仕事満足度と関係するのが、一般的な自己効力感ですが、ほとんど他の項目も大体同じくらの強さで関係します。
大事なのは、どの項目も統計的に有意に仕事満足度と関係していることであり、自己肯定感は仕事満足度を高めます。
こちらの図は、縦軸が仕事パフォーマンスとの関連性の強さを表します。
他の項目は同じです。
こちらは、どの項目も大体同じくらいですが、どれも仕事パフォーマンスと統計的に有意に関係しています。
そのため、自己肯定感が高いと、仕事満足度も仕事パフォーマンスも高い傾向となります。
自己肯定感は実は結構仕事に影響するのです。
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②自己肯定感が低いと離職率が高い⁉ その対策とは?
先ほどの研究のように、自己肯定感は仕事満足度と仕事パフォーマンスの両方に関わります。
しかし、自己肯定感の仕事への影響はそれだけではありません。
それを示したのが、Mossholder et . (1982)の研究です。
結構古い研究ですが、示唆的です。
彼らは、200人以上の看護師さんを対象に質問紙の調査をし、職場環境の把握や上司から仕事パフォーマンスの評価などもデータとして取っています。
自己肯定感の高低と仕事や職場のパフォーマンスとどのような関係があるのか。
その結果が以下の図です。
図の左側が、縦軸が職場の緊張度合いです。
横軸が、同僚とのコミュニケーションの良さで、左側半分が悪い場合で右側半分が良い場合を指します。
High Self-Esteemが自己肯定感の高い人で、Low Self-Esteemが自己肯定感の低い人です。
すると、この図からわかるのは、
1) 同僚とのコミュニケーションが良くない場合は、自己肯定感が低い人の方が高い人よりも職場に緊張しています。
2) 同僚とのコミュニケーションが良い場合は、自己肯定感が高い人の方が低い人よりも職場に緊張しています。
3) 同僚とのコミュニケーションが良好だと、悪い場合に比べて、自己肯定感が高くても低くても緊張しなくなる。
つまり、自己肯定感によって職場に緊張する度合いが変わることと、同僚とのコミュニケーションが良いと職場への緊張が薄れる効果があるということです。
図の右側が、縦軸が離職意向の度合いを示す図です。
その他の項目は同じです。
すると、右側の図からわかることは、
1) 同僚とのコミュニケーションが良くない場合は、自己肯定感が高い人の方が低い人よりも離職意向度が高い。
2) 同僚とのコミュニケーションが良い場合も、自己肯定感が高い人の方が低い人よりも離職意向度が高い。
3) 同僚とのコミュニケーションが良好な場合は、自己肯定感が高くても低くても離職意向が低くなる。
つまり、自己肯定感が高いと離職意向が高い傾向にあるが、同僚とのコミュニケーションが良好だと離職意向がかなり下がるということです。
自己肯定感の高低によって、職場への感じ方が異なります。
こちらの図は、縦軸が仕事パフォーマンスです。
他の項目は同じです。
すると、この図からわかるのは、
1) 同僚とのコミュニケーションが良くない場合は、自己肯定感が高い人の方が低い人よりも仕事パフォーマンスが高い。
2) 同僚とのコミュニケーションが良い場合は、自己肯定感が低い人の方が高い人よりも仕事パフォーマンスが高い。
3) 同僚とのコミュニケーションが良好な場合は、自己肯定感が高くても低くても仕事パフォーマンスが高くなる。
4) 自己肯定感が高いと、仕事パフォーマンスは同僚とのコミュニケーションの良し悪しに関わらず一定。
つまり、自己肯定感は仕事パフォーマンスに影響します。
また、自己肯定感が低いことによって仕事パフォーマンスが低下する状況は、職場の同僚とのコミュニケーションを良くすれば改善することができるのです。
これらの結果から、自己肯定感が低いと職場に緊張して離職意向も高くなり、仕事パフォーマンスも低くなります。
しかし、職場の同僚とのコミュニケーションを良くするとそのマイナスをなくせる可能性があります。
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③職場での自己肯定感を上げるちょっとしたトリビア
最後に、職場での自己肯定感を上げるちょっとしたお話をおまけにします。
Gardner et al. (2004)が研究した結果によると、お給料を上げると職場での自己肯定感が上がると示されています。
また、彼らは同じ研究で、お給料を上げれば仕事パフォーマンスが上がるが、職場での自己肯定感がお給料と仕事パフォーマンスの関係性には重要だと言っています。
単にお給料が上がって仕事のパフォーマンスが上がるのではなく、お給料が上がると職場での自己肯定感も上がり、仕事のパフォーマンスも上がるというメカニズムです。
なので、単にお給料を上げればよいというものではなく、職場での自己肯定感にも配慮することがこれからは求められます。
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④まとめ
以上より、自己肯定感の仕事との関係ついてみてきました。
まとめると以下のようになります。
- 自己肯定感は仕事パフォーマンスに影響する。
- 特に、自己肯定感が低いと仕事パフォーマンスも低い傾向になる。
- 自己肯定感の高低が、職場での緊張度と離職意向に影響する。
- 自己肯定感による悪影響を、職場の同僚とのコミュニケーションを良くすることで防ぐことができる。
- お給料が上がると自己肯定感も上がり、仕事パフォーマンスも上がるというメカニズムもある。
自己肯定感は結構仕事にも影響します。
プライベートや人生にも大きく影響しますので、自己肯定感は無視できないほど大きなものです。
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参考文献
Gardner et al. (2004). The Effects of Pay Level on Organization-Based Self-Esteem and Performance: A Field Study. Journal of Occupational and Organizational Psychology, 77, 307-322.
Judge & Bono. (2001). Relationship of core self-evaluations traits—self-esteem, generalized self-efficacy, locus of control, and emotional stability—with job satisfaction and job performance: A meta-analysis. Journal of Applied Psychology, 86(1), 80–92.
Mossholder et al. (1982). Group Process-Work Outcome Relationships: A Note on the Moderating Impact of Self-Esteem. The Academy of Management Journal, Vol. 25, No. 3, 575-585.
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