緊張や不安であがる心理学のメカニズム

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2024/10/15

プロもオリンピック選手も心理学的にあがる!(Youtube専門家対談企画スポーツ心理学与太話の第二十一回目)

・サッカーのPKの分析から、プロの選手でもよく「あがる」! ・「あがる」のは、○○を置くとか、そんなささいなことで起こる! ・普段から「あがる」ことを意識した練習が必要! 現場に携わる専門家をお招きして、専門家同士が対談するYoutube専門家対談企画。 今回は、パーソナルトレーナーでスポーツ選手も指導される前田さんとスポーツ心理学についてお話します。 今回のトピックは、「試合前に『あがる』のはなぜ?心理学的メカニズム編」 日々日常で経験する、緊張や不安などで「あがる」現象の心理学的エビデンスをめぐって、 ...

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赤ちゃんの記憶力はおしゃべりに影響する

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2024/10/13

赤ちゃんのサインは発語やコミュニケーション力を促進する!?(Youtube専門家対談企画子育ての心理学の第十五回目)

・赤ちゃんの物まねは発語を促す! ・ベビーサインなど自分の意思を伝えられる方法は発語を促すのに有効!? ・赤ちゃんの機嫌は○○で静まる傾向がある! 現場に携わる専門家をお招きして、専門家同士が対談するYoutube専門家対談企画。 今回は、保育歴7年で「親子の愛情構築専門家」保育士ライターのゆうさんと子育ての心理学についてお話します。 トピックは、「赤ちゃんの記憶」です。 赤ちゃんの記憶の心理学シリーズの第二弾として「赤ちゃんの記憶力はおしゃべりに影響する!?」を心理学のエビデンスをもとに、保育と育児の現 ...

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緊張や不安であがる心理学のメカニズム

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2024/10/12

スポーツの試合前に経験する「あがる」状態とは?(Youtube専門家対談企画スポーツ心理学与太話の第二十回目)

・「あがる」とは何か? ・どの選手も「あがる」ことはある!? ・パニックやイップスとはどう違うの? 現場に携わる専門家をお招きして、専門家同士が対談するYoutube専門家対談企画。 今回は、パーソナルトレーナーでスポーツ選手も指導される前田さんとスポーツ心理学についてお話します。 今回のトピックは、「試合前に『あがる』のはなぜ?心理学的メカニズム編」 日々の日常で経験する、緊張や不安などで「あがる」現象の心理学的エビデンスをめぐって、大激論を交わしています! 前田さんのご紹介は、下記記事に詳細を書いてい ...

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精神医学/Psychiatry 記事/Article

自閉症スペクトラム障害者(ASD)から知る子育ての教訓と必要な支援のあり方

・子育で重要なことは何ですか?

・必要な子育て支援とは何か?

・子育てに伴う苦労を軽くしたい。

子育てはとても大変です。

夫婦そろって協力し、やっとこさできるようになります。

自分の子供が健康的で良く育つことは親の願いでもあります。

それゆえ、子育てにはより力を入れます。

しかし、子育てに正解はありません

今の科学をもってしても理想の子育ては未だにわからない状態です。

しかし、子育ての教訓は今の心理学や精神医学から学べることが多いです。

特に、発達障害の一つである自閉症スペクトラム障害(ASD)児の親は、健常児よりも子育てにストレスや苦労を感じる傾向にあります。

それが以前の記事です↓

この記事では、子育ての極意として、問題行動をユーモラスに考えたり、悲観視せずに、どっしりと構えることが挙げられました。

では、どのようにしたらこの状態へと至ることができるのでしょうか?

また、ASD児を育てる上で必要となる支援とは何でしょうか?

今回は、ASD者の子育てから子育ての教訓と必要な支援を考えます。

本記事では以下のことが学べます。

1. ASD児の子育てで必要な心理学的資質

2. 楽観的であることが子育てのストレスや苦労の緩和につながる!?

3. ASD者の子育てで必要な支援とは何か?

4. 必要なのに十分でない支援とは何か?

5. 今、子育てで必要なこととは?

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①自閉症スペクトラム障害(ASD)児の両親は、楽観的であるほど、子育てのストレスが減り、心理的・身体的に健康になる。

以前の記事で、自分の子供に障害が見られる場合、子育てにかかるストレスや苦労はかなり大きくなることを示しました。

そのような苦労が多いからこそ、我々は親が子育てを上手くするための極意を学ぶことができます。

その中で、楽観性楽観的楽観主義(optimism)であることが子育て成功の極意として複数の研究で報告されています。

Greenberg et al. (2004)は、自閉症スペクトラム障害・ダウン症・統合失調症を持つ子供の両親にアンケート調査を実施し、特に楽観主義の強さが子育ての負担を軽減し、親の生活の質を上げることを示しました。

その結果が以下の複数の図です。

autism parenting optimism

この図は、うつ尺度と関係する項目を表しています。

縦が各項目で、*がついているところが統計学的に関係性があることを示します。

また、数字の-は、うつ尺度とその項目が負の関係性にあることを示します。

つまり、その項目が強いほどうつ度合いが下がるという関係性です。

なお、Model 1は無視で、Model 2のみ見てください。

すると、一番右のAutism、つまり、自閉症スペクトラム障害の欄を見ますと、楽観主義(optimism)の項目が-の関係性であることが分かります。

つまり、楽観的であればあるほど、子育て時のうつ傾向が下がるという結果です。

他にも、下図は、心理学的なよりよく生きること。つまり、幸福度との関係性を示します。

autism parenting well-being

見方は同じです。

楽観主義の項目を見ると、正の値になっています

楽観的であればあるほど、子育てによる心理的幸福度は上がります

また、下図は、身体的な健康度との関係性を示します。

autism parenting physical health

見方は同じです。

楽観主義の項目を見ると、正の値になっています

楽観的であればあるほど、身体的な健康度さえも良くなるのです。

これら三つの図から分かることは、楽観的な親であれば、子育てのネガティブな感情が減り、ポジティブな感情が増える傾向にあることです。

どっしりと構えるために、楽観的であることは必須です。

楽観的だからこそ、子供の問題行動にも寛容になれるのかもしれません。

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この研究をさらに裏付けたのが、Ekas et al. (2010)です。

彼らも、質問紙調査を行い、ASDの子育てに関する感情と楽観主義との関係性をさらに深く調べました。

まず、楽観主義と各質問紙項目との関係性が以下の図です。

autism parenting optimism negative positive affect

この図よりわかることは今回のテーマに絞ると二つです。

  • 横軸の4(optimism:楽観視主義)の欄を見ると、Depression(抑うつ)、Negative affect(ネガティブ感情)、Parenting stress(子育てのストレス)という子育て時のマイナス面と負の関係にあります。

つまり、楽観的であるほど、うつもネガティブ感情も子育てのストレスも感じにくいのです。これは、先ほどの研究とも一致します。

  • 横軸の4(optimism:楽観視主義)の欄を見ると、Positive affect(ポジティブ感情)、Life satisfaction(生活満足度)、Psychological well-being(心理的幸福)という子育てによるプラス面と正の関係性にあります。

つまり、楽観的であるほどポジティブ感情も生活満足度も心理的幸福も感じるようになります。

楽観主義はマイナス感情の軽減だけではなく、プラス感情を押し上げる効果もあります。

これらのように、楽観主義には二つの役目があって、ポジティブな感情を上げて、ネガティブな感情を下げます。

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②自閉症スペクトラム障害者の子育てに必要な支援とは何か?子育て支援の実態

これまで見てきたように、ASD児の子育てには楽観性・楽観主義が必要であることがわかります。

子育ては、人生でも長期にわたることなので、ストレスや苦労で問題が生じる前に考え直す必要があります。

では、そのような子育てにおいて必要な支援とは何でしょうか?

最近ではいろんな支援機関がありますが、本当に必要な支援を必要な人に必要な分だけ届けられているのでしょうか?

Hartley & Schultz (2015)は、質問紙調査で自閉症スペクトラム障害者の両親に必要な支援と足りていない支援について聞きました。

すると必要な支援として上位に挙げられたのが以下の図です。

autism parenting support needs

Importantの欄を見ると、どの項目も90%以上の人が必要だと答えています。

しかし、重要なのは、Unmet, Importantの欄です。

この欄は、必要なのに支援が十分でない項目を指します。

上位の項目でも十分な支援ができていない項目として、「Have my spouse and me agree on decisions regarding my child」と「Have time to spend alone with my partner」の二つが上がっています。

前者は、自分の子供に関して意志決定を同意させる支援が不足しているということです。

つまり、ASD児のご両親は子育てに関する決断に不安を抱えており、「これ!」という後押しがほしいのです。

子育てに正解不正解はありませんが、何をするにも親の判断が必要になります。

健常児ではないがゆえに、わからないことが多く、困る場面もあります。

なので、親の意志決定について相談できる支援などがあればいいかもしれません。

後者は、一人の時間が欲しい、あるいは、パートナーとの時間が欲しいというものです。

日々子育てに夫婦そろって奮闘しているため、自分一人の時間や夫婦水入らずの時間がないということです。

この場合、必要なのは適切な保育所などの子供預かり支援でしょうか?

親も一人の人間です。

たまには、一人の時間を持ってゆっくりしたいところです。

リフレッシュの時間という意味でも必要だとわかります。

他の項目は、省略します。

大体、この二つの項目と関連するからです。

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他にも、Kiami & Goodgold (2017)も同様の方法で、以下の8つが必要なのに足りていないことを突き止めました。

  1. 子供のケアや治療などへの金銭的支援
  2. 責任からの解放
  3. 各子供が自分の特別なニーズを理解していること
  4. 十分な休憩と睡眠
  5. 子供の将来に前向きになれるように助けてほしい
  6. カウンセリング
  7. 子供の問題を理解している家族・親族
  8. 母親が自分の健康をいたわることができる時間

これらの8つの内、(5)は先ほどの意志決定者としての支援や最初にご紹介した楽観性と関係します。

(2)(4)(6)(8)は先ほどの一人の時間が欲しいことと関係していて、やはりリフレッシュする時間が必要です。

他に、(3)(7)は障害への他人の理解が関係しています。

このようにまとめてみると、必要な支援とは、

  • 他者の障害への理解
  • 意志決定や子育てに関する相談機関
  • リフレッシュするための一人の時間

の三つです。

他者の障害への理解」は、やはり研究者や医師の積極的な啓蒙活動が必要だと思われます。

書籍などのように当事者やご家族さんからの声はたくさんありますが、未だに一般的には知られていない状態です。

個人的な体験談になりますが、今の日本では教育業界の人でもそれほど詳しくないのが現状です。

意志決定や子育てに関する相談機関」は、気軽に相談できない場合が多いことが反映されていそうです。

相談することで解決はしなくても、子供の将来に楽観的になれるようにすれば、子育てに関しての苦労やストレスは大きく減ります

これは、他者の理解が得られるかとも関係します。

繊細な問題であるため、知識と理解のある方が必要なのですが、少ないのが現状です。

リフレッシュするための一人の時間」は、子育ての大きな苦労やストレスが反映されています。

たまには自分一人の時間を持って、ストレスや責任から解放される時間は必要です。

ずっと、子供のことで神経を張りつめていたら、余計にしんどくなります。

だからこそ、理解者に預けることができたり、信頼できる人に相談することができたりすると子育てのストレスや苦労はまだ軽減されると思います。

ストレスや苦労から子育てに悲観的にならずに、子供の未来に楽観的になれるようにするのが今の心理学の役目だと思います。

三つの要素は、一見バラバランに見えて関係しています

一つでも支援できれば、他の要素も楽になるかもしれません。

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③まとめ

以上より、自閉症スペクトラム障害者の子育てと支援の実態から、子育てに重要なことが何かを見てきました。

まとめると以下のようになります。

  • 自閉症スペクトラム障害児の子育てには、両親が楽観的であることや楽観主義をとると抑うつ感情が減る。
  • 同じく、両親が楽観的であれば、心理的幸福度も高まる。
  • 同じく、両親が楽観主義であれば、身体的にも健康である。
  • 楽観主義は、ネガティブ感情を下げて、ポジティブ感情を上げる。
  • 必要なのに足りていない支援は、複数あるが、「他者の障害への理解」「意志決定や子育てに関する相談機関」「リフレッシュするための一人の時間」の三つにまとめられる。
  • これら三つの要素は、バラバラな問題ではなく、それぞれ関係しており、一つでも軽減できれば他も軽減されうる。

これらの研究結果から、子育ての極意とは何か?

楽観主義」と「相談できる理解者を作ること」だと思えます。

親は子育てをするときに、ASD児であれ健常児であれ、多くの問題にあたります。

それすらも、面白くとらえられるような懐の広さという楽観主義がまず必要です。

次に、子供の将来への楽観性も必要です。

今は大変だけれども、将来はきっと幸せになるだろうと楽観的になれると子育ての苦労やストレスは少し軽減されるかもしれません。

最後に、相談できる理解者は必ずといっていいほど必要です。

子供の障害や問題行動について理解があり、いざとなったら子供を預けられて相談もできる。

この人が一人でも家族や自分の周りにいると、安心感が生まれます。

この安心感が楽観主義へとつながるかもしれません。

やはり、必要なのが、まず障害への理解者を増やすことです。

そこから全てが始まります。

今回、2021年6月12日(土)に発達障害を楽しく学べるセミナーを開催しました。

今回のテーマは「想像力」です。

他者の立場を思いやる、言葉から情景をシミュレーションする、これから起こることを考え計画を立てる。

すべて想像力が関係します。

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参考文献

Ekas et al. (2010). Optimism, Social Support, and Well-Being in mothers of Children with Autism Spectrum Disorder. Journal of Autism and Developmental Disabilities, 40, 1274-1284.

Greenberg et al. (2004). The Effect of Quality of the Relationship Between Mothers and Adult Children With Schizophrenia, Autism, or Down Syndrome on Maternal Well-Being: the Mediating Role of Optimism. American Journal of Orthopsychiatry, 74(1), 14-25.

Hartley & Schultz (2015). Support Needs of Fathers and Mothers of Children and Adolescents with Autism Spectrum Disorder. Journal of Autism and Developmental Disabilities, 45(6), 1636-1648.

Kiami & Goodgold (2017). Support Needs and Coping Strategies as Predictors of Stress Level among Mothers of Children with Autism Spectrum Disorder. Hindawi Autism Research and Treatment, 2017.

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