・いろんなストレス解消法があるけどどれが効果的なのだろう?
・ストレス発散のいい方法教えて!
こういった悩みをお抱えの方は多いはず。
職場や学校での人間関係でストレスはたまる一方。
しかし、時間や労力がなくストレスをなかなか解消できない。
さらに、ストレス解消法という名のつくものが多すぎる。
うさんくさいモノもあり、どれが効果的なのかわかりません。
そこで今回は、脳科学(神経科学)的に正しいストレス解消法についてストレスの脳内メカニズムとともに解説します。
本記事で以下のことが学べます。
2. ストレスの詳細な脳内メカニズム
3. ストレスに強い性格タイプ
4. 脳科学的に正しいストレス解消法
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①ストレスは記憶力に悪影響
ストレスと健康の話題は世の中にたくさんあります。
しかし、ストレスが認知機能にどのように影響するのかを知っている方は少ないと思います。
日頃から溜まっているストレスが、記憶力に影響することがLyons et al. (2010)によって明らかにされています。
彼らはサルを使にストレスを与えて脳や記憶へのストレスの影響を調べました。
まずサルを二つの条件に分けます。
一方が、ずっと同じ相手と一緒に過ごすというストレス条件。
もう一方が、一人の時や新しい相手と一緒に過ごしたりするストレス解消条件。
数か月過ごした後、記憶力のテストを実施しました。
すると以下の結果になりました。
この図は、縦軸が記憶テストの成績です。
黒がストレス解消条件。
白がストレス条件です。
明らかにストレス解消条件の方が成績が良いです。
逆にストレス条件は何度テストしても成績も上がらずのまま。
そして重要なのが、ストレスの条件によって脳内の細胞数にも影響があることです。
縦軸が細胞数です。
黒い棒がストレス解消条件。
白い棒がストレス条件です。
明らかにストレス条件の方が細胞数が少なくなっています。
つまり、ストレスは脳細胞レベルで我々の体に悪影響を及ぼすのです。
ストレスは仕事のパフォーマンスも下げます。
まさに、ストレス解消は喫緊の課題なのです。
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②ストレスの脳内メカニズム
正しいストレス解消法を知るには、そのメカニズムを知らないといけません。
そうしないと、効果のないストレス解消法に手を出したり、あやしい商品を買わされたりします。
(A) 急性的な一時的ストレスの脳内メカニズム
ストレスには、その時に感じる一時的なものとずっと感じる慢性的なものとがあります。
まずは、一時的なストレスに関してです。
Henckens et al. (2016)は、実験参加者にストレスを感じさせるような不快な映像を見せて、ストレスを感じている時の脳状態を解明しました。
まず、この図より、様々な指標で映像を見た後にストレスが溜まったことを示しています。
図Bの左上は血中コルチゾールという指標です。
ストレスを測る代名詞です。
他にも、左下は映像を見た後に心理的に負の感情を感じたことを示しています。
右下は、心拍です。
ストレス映像を見た時には心拍が上がっています。
そして、ストレスを感じている時の脳活動が以下の図です。
この図では、脳の下側でかつ内側が活動していることがわかります。
感情に関する偏桃体や昔からストレスに関わると言われている海馬などの活動が見られます。
ちなみに、海馬は、先ほどサルの研究でご紹介した記憶に関係する脳領域です。
先ほどの細胞も海馬の細胞でした。
なので、過去の研究と整合的ですね。
右側の図は、これらの部位の脳活動が、血中コルチゾールと関係があることを示しています。
これらの脳領域の活動が高いほど、血中コルチゾールも高くストレスを感じているということです。
Henckens et al. (2016)は、この他にもストレスを感じにくい性格タイプを突き止めています。
それが、外向性の高い方です。
外向性が高いほど血中コルチゾールが低く、ストレスを感じない。
外向性の高い人とは、例えば、家で引きこもったりせずに、外へよく出かけたり、他人とよくコミュニケーションを取ったりするタイプの方が当てはまります。
新しい人と出会ったりするのが多いのもこのタイプです。
新しい人と出会うと言えば、先ほどのサルの研究のストレス解消条件と同じです。
つまり、間接的ですが、新しい環境や新しい人と会うことはストレス解消につながるのかもしれません。
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(B) 慢性的な持続的ストレスの脳内メカニズム
次は、比較的長時間のストレスにさらされている時の脳内メカニズムです。
Sinha et al. (2016)は、ストレスを与える不快な写真をずっと見せられている時と感情的に何も起こさないニュートラルな写真を見ている時の脳活動を比較することでストレスの脳内メカニズムを突き止めました。
この図は、条件ごとの様々なストレス指標を示しています。
赤がストレス条件。
黒がニュートラル条件です。
ストレス度や感情がどれくらい喚起されたか。
心拍や血中コルチゾールまであります。
全ての指標でストレス条件の方が高いです。
この図は、代表的なストレス指標である血中コルチゾールと関係する脳領域です。
つまり、ストレスと関連する領域。
左は、前頭葉で、ストレスを感じると脳活動が下がることが示されています。
前頭葉は理性や抑制をつかさどります。
ストレス状態では理性や抑制が働かないことを示しています。
真中と右は、(A)のところで示された脳領域と同様の領域です。
なので、過去の研究と整合的です。
重要なのは、前頭葉の活動パターンです。
これがストレス解消と関わります。
この図は、ストレスを感じさせる画像を見せられているときの脳活動を時系列的に表したものです。
Bの左上が前頭葉の活動パターンです。
赤い線がストレス画像を見せられているときの脳活動。
この図から、前頭葉は、ストレスを与えられた時、最初は脳活動が下がり、徐々に活動が上がっていきます。
様々な解釈がありますが、このパターンはストレスへの慣れとストレス解消法の導入を表していると思います。
最初ストレスにさらされると、前頭葉は影響を受けます。
そのストレスの影響からのショックに慣れてきて活動が上がります。
そして、受けたストレスへの対処のためにひと肌ぬぐという感じです。
脳内メカニズムをまとめますと、ストレスを受けると、前頭葉の脳活動が下がり、偏桃体や海馬など脳の奥の部分の活動が上がります。
重要なのは前頭葉の活動パターンで、ストレスへの慣れと解消法の導入を示しています。
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③脳科学的に正しいストレス解消法
最後に、科学的に正しいストレス解消法について見ていきます。
Sinha et al. (2016)は、脳内メカニズムだけではなく、ストレス解消法と脳活動との関係性も調べています。
彼ら、論文でストレス解消法には二種類あると言っています。
一つ目は、アクティブ・コーピング(Active Coping)で、ストレス刺激の解釈を変えたり、ストレスを感じている時に考えを変えたりして積極的に認知の仕方や行動を変える方法です。
二つ目は、ストレスを感じている時に、感情を抑圧したり、何度もそのことについて考えたりする方法です。
もちろん、一つ目の方法を彼らは推奨しています。
その理由が以下の図に表れています。
この図は、前頭葉の活動を示しています。
先ほど、前頭葉の活動パターンとしてストレス解消法をしようかなという時に活動が上がってくることを説明しました。
つまり、ストレスを感じているときに前頭葉の活動が上がれば、ストレス解消に成功しているということです。
様々なストレス解消法と前頭葉の活動との関係を見たのがこの図になります。
Bはアクティブ・コーピングと前頭葉の活動との関係です。
アクティブ・コーピングを上手くするほど前頭葉の活動は上がります。
つまり、アクティブ・コーピングはストレス解消に効果的なのです。
Cは、ストレス解消のためのバク食いです。
バク食いをする人ほど前頭葉の活動が下がっていることが分かります。
バク食いはよくストレス解消法として挙げられますが、逆効果なのです。
Dがストレス解消のためにお酒を飲むことです。
これは、お酒を多く飲む人ほど前頭葉の活動が下がっています。
つまり、お酒もストレス解消には効果ありません。
まとめると、脳科学的に効果的なストレス解消法はアクティブ・コーピングだという結論になります。
アクティブ・コーピングの代表的な方法を以下に書きます。
・再評価法:物事を一旦冷静に考え直して別の意味合いを与える方法
・リフレーミング法:ある刺激を普通とは違うように捉える方法
詳しくは、過去の記事「科学的に正しい感情コントロールの方法:EQを高めて怒らない自分になる」に載せています。
合わせて読んでいただければ幸いです。
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④まとめ
まとめると以下のようになります。
- ストレスは記憶力低下に繋がる。
- ストレスは脳細胞の減少を招く。
- ストレスに強い人は、外向的な人。
- ストレスの脳内メカニズムは、ストレスを受けた時に前頭葉が抑制され、偏桃体や海馬など脳の奥の部分の活動が増大する。
- ストレス解消には、前頭葉がカギ。
- 正しいストレス解消法は、アクティブ・コーピングで、バク食いやお酒はストレス解消にならない。
ストレスは、脳だけではなく、体のさまざまなところに影響します。
ストレス解消法の記事は山ほどありますが、ストレスのメカニズムと解消法を検証した記事はあまりありません。
本記事が、正しいストレスの解消に少しでも貢献できれば幸いです。
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参考文献
Henckens et al. (2016). Interindividual differences in stress sensitivity: basal and stress-induced cortisol levels differentially predict neural vigilance processing under stress. Social Cognitive and Affective Neuroscience,11(4), 663-673.
Lyons et al. (2010). Stress coping stimulates hippocampal neurogenesis in adult monkeys. PNAS, 107(3), 14823-14827.
Sinha et al. (2016). Dynamic neural activity during stress signals resilient coping. PNAS, 113(31), 8837-8842.
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