・学校の勉強や仕事が眠くて集中できません。
・なぜ日中に眠くなるのですか?
夜によく眠り、朝もすっきり起きたのに、日中に眠たくなることはありませんか?
私はよくあります。
学校の授業中や、仕事中、勉強時間中や趣味の途中でも、眠ってはいけないことが分かっていても眠くなってしまいます。
これが不眠症から来るものなら睡眠を改善すればいいのですが、実は不眠症以外の要因も特定されてきています。
そこで、今回は日中の眠気についての医学的原因と心理学的対策をご紹介します。
最新研究では、日中の眠気が様々な病気に繋がったりします。
また、遺伝も関係することが分かってきています。
本記事では以下のことが学べます。
2. 日中の眠気の様々な要因
3. 日中の眠気の心理学的対策
4. 日中の眠気と病気と自殺の関係性
5. 日中の眠気と遺伝との関係性
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①大規模な医学的研究から解明された日中の眠気の原因
日中に眠くなるというのは、現代の日本人だけではなく、結構前から世界的に悩んでいる方がいます。
それゆえ、1990年代後半から大規模な疫学的(医学的)研究が行われています。
Breslau et al. (1997)は、1000名を超える人々の日中の眠気と様々な生活要因との関係性を調べました。
まず、年齢や性別など、その人の個人的な特性と日中の眠気との関係性を調べた結果が以下の図です。
この図の右端の欄が日中の眠気を示します。
この図から統計学的に重要なのが、結婚の有無(Marital status)と雇用状況(Employment)です。
前者は、結婚している方がしていない方よりも日中の眠気指数が低いです。
つまり、結婚していない人の方が日中の眠気を感じやすいです。
一方後者の雇用状況は、「フルタイム>パートタイム>無職」の順で日中の眠気をよく感じます。
お仕事をしている方が日中の眠気によく悩まされるということです。
これは当然の結果ですね。
結婚については、子供の有無にも関わりそうですが、結婚していると生活リズムも維持できて日中の眠気も少ないと考えられます。
次に、日中の眠気の度合いと生活習慣等との関係を示したのが以下の図です。
この図は、日中の眠気が弱い人(Low)、中くらいの人(Medium)、強い人(High)で分けて各指標の差を調べています。
この図で統計学的に重要なのが、平日の睡眠時間、睡眠開始時間、いびき、抑うつ感情、不安感情の五つです。
まず、平日の睡眠時間は、日中の眠気が強い人ほど短いという結果でした。
睡眠時間が短いと日中眠くなるのは当たり前ですね。
次に、睡眠開始時間は、日中の眠気が強くなるほど遅くなる傾向があります。
ベッドに入って寝付くまでの時間ですが、それが遅いほど日中の眠気も感じるのです。
いびきは、結構重要で、いびきをかく人ほど日中の眠気は強いです。
次に、日中の眠気が強いほど抑うつや不安などのネガティブ感情を抱いています。
つまり、後程ご紹介しますが、日中の眠気は日ごろの感情や気分にまで影響します。
これらの結果から、日中の眠気の原因として、結婚や仕事、普段の睡眠の質や感情が挙げられます。
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一方最近の研究ではどうか?
比較的最近の研究では、これらの要因に加えて、さらに別の要因も特定されています。
Ford et al. (2015)は、2002年、2007年、2012年の十年にわたる調査をそれぞれ約三万人前後の人々に行うことで日中の眠気の原因を調べました。
様々な要因を特定しましたが、その中でも重要だと主張しているのが、以下の図の要因です。
この図は、日中の眠気に関係する要因について、年代ごとにそれらの寄与率を表しています。
つまり、縦軸が寄与率で、高いほど影響度が高い要因だということです。
すると、この図から明らかなように、「肥満(Obesity)>飲酒(drinking)>たばこ(Current smoking)」の順に寄与率が高いことが分かります。
これらの三つの要因が特に日中の眠気に関わるということです。
肥満はどのくらいかというと、BMIでは30以上です。
飲酒とたばこはすればするほど日中の眠気が強まります。
なので、日中の眠気対策としては、日々の健康管理と、お酒とたばこを控えることです。
お酒とたばこは、ストレスや眠気防止のためにしてしまうと逆効果になります。
余計に眠くなってしまいますので、ほどほどにしましょう。
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②日中の眠気の弊害:病気と自殺に関係する
次に、日中の眠気は日常生活に影響するだけではなく、病気や自殺など我々の身の安全にも関係することをご紹介します。
日中の眠気と病気との関係性
まずは、日中の眠気が病気に関係するという研究です。
Van der Spuy et al. (2017)は、800名以上の方を対象に日中の眠気と病気との関係性を調べました。
すると、以下の図のようになりました。
図の太線で示された欄が、その病気を持っていると日中の眠気が強くなることを示しています。
病気を持っていない(No)を基準にして、持っている(Yes)と答えた人が何倍つよく眠気を感じるのかを示しています。
すると、太字で示されているが
- 肺結核
- 慢性的肺疾患
- 呼吸の浅さ(短さ)
- いびきがうるさい
です。
いびきは先ほどご紹介した研究と整合的ですね。
あとの三つは呼吸や肺に関わる病気です。
まとめると、息をすることに関する病気が日中の眠気に繋がるということ。
逆に、日中の眠気が強いとこれらの病気の可能性もあることです。
不眠症の有名な治療として、酸素を送る方法があります。
それと同様で、日中の眠気は息や呼吸と関係するのです。
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日中の眠気は自殺をまねく?
次にご紹介するのが、結構恐ろしい事実です。
つまり、日中の眠気は自殺につながるという研究です。
Liu et al. (2018)は、二年の調査を行い、前年度と比較してどれくらい自殺行動を行ったのかを調べました。
自殺行動は、重度順に、「自殺念慮」「自殺する計画」「自殺企図」の三つの段階が想定されています。
「自殺念慮」は、「死にたい」とか「自殺したい」のように自殺を考えることです。
「自殺する計画」は、自殺を具体的にどう実行するか計画を練る段階。
「自殺企図」は、自分に切り傷をつけたり、実際に自殺に移る行動を行うことです。
これら三つの自殺行動と日中の眠気との関係性が以下の図です。
この図の*がついているところが統計的に有意に日中の眠気と関係する欄です。
注目するのは、一番右端のModel 3だけで結構です。
一番上の欄が、「自殺念慮(Suicide thought)」「自殺する計画(Suicide plan)」「自殺企図(Suicide attempt)」の三つを合わせた指標です。
CASS daytime sleepiness scoreが日中の眠気指標です。
各欄は無視で結構です。
すると、どの自殺指標でも日中の眠気指標と関係性があります。
つまり、日中の眠気が強ければ強いほど、自殺行動にはしりやすいのです。
他に重要なのが、不安/抑うつ感情(Anxiety/Depression)です。
この指標も基本的に自殺行動と関係します。
以前書いた「子どもの自殺と孤独の関係性に関する文献学的考察」の論文では自殺の原因として抑うつ感情を上げています。
それくらい不安や抑うつ傾向は自殺と強い関係性があるのですが、それを考慮しても日中の眠気は自殺行動と関係します。
日中の眠気は生命の危機にも関係するのです。
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③最新研究が示した遺伝と日中の眠気との関係性
最後に、面白い研究をご紹介します。
ズバリ、日中の眠気が遺伝と関係することです。
Szily et al. (2019)は、双子の一卵性双生児と二卵性双生児とを比較することで、日中の眠気の遺伝的影響を調べました。
一卵性双生児は、遺伝子が全く一緒で、育った環境も似ています。
他方、二卵性双生児は遺伝子が異なりますが、育った環境が似ています。
つまり、両者を比較することでどれくらい遺伝の影響があるのかを調べられるのです。
脳波などのいろんな生理指標も調べた結果、日中の眠気や睡眠の遺伝的影響が示されたのが以下の図です。
この図の横軸のhが遺伝の影響率を表しています。
cが環境の影響率で、eがそれ以外の影響率。
縦軸が、各睡眠指標です。
すると、日中の眠気を示すESSでは、遺伝が34%環境が31%です。
つま、遺伝の要因が3割強あるということです。
日中の眠気以外にも、不眠症指数(AHI)などは遺伝の影響が7割を超えています。
なので、日中の眠気や睡眠には遺伝の影響も大いにあります。
もしかしたら、両親の睡眠が悪いと、子供の日中の眠気にも影響するかもしれません。
他にも、遺伝子を採取した研究もありますので(Wang et al., 2019)、これからの研究しだいでは睡眠と遺伝との関係性が解明されるでしょう。
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④まとめ
以上より、日中の眠気の医学的研究を見てきました。
まとめると以下のようになります。
- 日中の眠気の原因は、結婚の有無と職種
- 他には、いびきや不安・抑うつなどの感情も日中の眠気には関係する。
- 比較的最近の研究では、これらの要因に加えて、肥満・飲酒・タバコが挙げられている。
- 日中の眠気は呼吸器の疾患と関係する。
- 日中の眠気は自殺行動とも関係する。
- 日中の眠気などの睡眠の問題は遺伝の影響もある。
睡眠に悩む方は多いです。
とくに、日中の眠気は、仕事パフォーマンスだけではなく、事故にもつながる危険な問題です。
今のところ、日中の眠気を避けるには、健康管理と飲酒やたばこを控える健康行動くらいです。
でも、これだけで日中の眠気がなくなるのなら、やらない手はありません。
本記事が日中の眠気に悩まれる方のお役に立てば幸いです。
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参考文献
Breslau et al. (1997). Daytime Sleepiness: An Epidemiological Study of young Adults. Journal of Public Health, 87, 1649-1653.
Ford et al. (2015). Trends in insomnia and excessive daytime sleepiness among US adults from 2002 to 2012. Sleep Medicine, 16(3), 372-378.
Liu et al. (2019). Daytime sleepiness predicts future suicidal behavior: a longitudinal study of adolescents. SLEEP J, 1-10.
Szily et al. (2019). Genetic influences on the onset of obstructive sleep apnoea and daytime sleepiness: a twin study. Respiratory Research, 20, 125.
Van der Spuy et al. (2017). Determinants of excessive daytime sleepiness in two First Nation communities. BMC Pulmonary Medicine, 192(17).
Wang et al. (2019). Genome-wide association analysis of self-reported daytime sleepiness identifies 42 loci that suggest biological subtypes. Nature Communications, 10, 3503.
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