・自閉症スペクトラム障害の具体的な症状と診断基準を知りたい。
・発達障害なんて自分には関係ないのでは?
来る4月2日は、「世界自閉症啓発デー」として国連で定められています。
その世界自閉症啓発デーでも取り上げられているのがなんとセサミストリートです!
ユニバーサルスタジオジャパン(USJ)でよく見るあのセサミストリートです。
実は、セサミストリートでは、2017年に自閉症のキャラである「ジュリア」が誕生しました。
ジュリアと対面したビッグバードが初めての相手で戸惑うシーンが幾度も描かれています。
その会話を通して、自閉症の特徴を分かりやすく上手く伝えています。
自閉症とは、自閉症スペクトラム障害(ASD)という発達障害の一つです。
聞いたことがある方も多いと思います。
では、発達障害とは何でしょうか?
この質問に答えられる方はそれほど多くないと思います。
また、一言で発達障害と言っても症状は個人によって様々です。
今回は、この発達障害について自閉症スペクトラム障害を取り上げて具体的に見ていきます。
本記事では以下のことが学べます。
2. 自閉症スペクトラム障害(ASD)とは何か?
3. ASDの具体的な症状と診断基準
4. どれくらいの症状があればASDに該当するのか?
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①セサミストリートで自閉症キャラが登場⁈
一時期、日本でも「大人の発達障害」とともに自閉症が注目されました。
しかし、自閉症スペクトラム障害と聞いて、具体的にどんな障害なのかわかる人は少なくありません。
自閉症スペクトラム障害はやっと認知されてきましたが、啓蒙活動は行われ続けています。
なんと、あのセサミストリートでも取り上げられていたのです。
セサミストリートでは、自閉症キャラである「ジュリア」の回があります。
まずは、動画をご覧ください。
動画は、http://www.sesamestreetjapan.org/diversity/videos/meet-julia からの引用です。
女の子や子供に絶大な人気を誇るセサミストリートでも発達障害は注目されています。
この動画を通して、なんとなく「普通とはちょっと変わっている」という感覚は持てたかと思います。
では、具体的にどの点が自閉症スペクトラム障害に当てはまるのでしょうか?
ジュリアの言動と合わせて、その感覚の正体を見ていきます。
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②ジュリアの言動から見る自閉症スペクトラム障害(ASD)の具体的な症状と診断基準。
精神医学の世界的な診断基準として、DSM-Ⅴというものがあります。
精神科医のお医者さんは、このDSM-Ⅴに照らして診断をくだします。
では、自閉症スペクトラム障害の診断基準とは何か?
現在では、
A) コミュニケーション及び対人的相互反応の障害
B) 限局的な興味・関心(こだわり)
の二つです。
A) コミュニケーション及び対人的相互反応の障害
この症状には以下の基準が設けられています。
(1)相互の対人的―情緒的関係の欠落で、例えば、対人的に異常な近づき方や通常の会話のやりとりのできないことといったものから、興味、情動、または感情を共有することの少なさ、社会的相互反応を開始したり応じたりすることができないことに及ぶ。
(2)対人的相互反応で非言語的コミュニケーション行動を用いることの欠陥、例えば、統合のよくない言語的と非言語的コミュニケーションから、視線を合わせることと身振りの異常、または身振りの理解やその使用の欠陥、顔の表情や非言語的コミュニケーションの完全な欠陥に及ぶ。
(3)人間関係を発展させ、維持し、それを理解することの欠陥で、例えば、さまざまな社会的状況に合った行動に調整することの困難さから、想像遊びを他者と一緒にしたり友人を作ることの困難さ、または仲間に対する興味の欠如に及ぶ。
文言が難しく抽象的なので分かりづらいですが、ジュリアの例を当てはめて考えてみます。
ⅰ) 声をかけてもこちらが意図したように応答しない。
まず初めは、一般的なコミュニケーションとは異なる反応を示すことです。
動画では、ビッグバードが何度呼んでも応答せず、応答してもハイタッチをしないシーンがありました。
他人の声に応答せず、他人が期待する反応を示さないと他人は不思議に思ってしまいます。
ビッグバードがジュリアとの関係で悩んでいたみたいに、他人と不和になり、トラブルになる可能性もあります。
なかなか友達ができないことも、自閉症スペクトラム障害の特徴です。
私が現場でお会いした方では、生きてきて何十年も友達がいないという方もいます。
一般的に想定される反応とは異なる反応を示すことはASDの方も親御さんも悩まれています。
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ⅱ) 視線が基本的に合わない。
少し細かい点かもしれませんが、この症状は大切です。
実は、動画を通してジュリアはほとんど他のキャラと視線を合わせていません。
他のキャラの顔すらほとんど見ていないことがわかります。
自分の興味がおもむくものや関心に目を向けてばかりです。
他人との対面場面では、視線が合わないと「この人とは合わないかも」と思われてしまいます。
視線が合わないことに関する研究は膨大にあるくらいです。
ASDかどうかを判断する場合に視線の方向は結構重要視されます。
それくらい、ASDには特徴的なことです。
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ⅲ) 言葉が単語レベル(言葉の発達の遅れ)
これも少し細かいですが、かなり重要な症状です。
一般的に赤ちゃんは生まれると、一歳で「ブーブー」などの初語を話します。
二歳で「ブーブーとって」などの二語文を話すようになります。
しかし、ASDの子供の中には、一歳を過ぎても初語が出ず、二歳になっても二語文が出ない子がいます。
そのまま言葉の発達が遅れてしまい、話すのが単語レベルの子供も見受けられます。
他には、言葉を話しても、まるで機会で録音したような話し方の子もいます。
具体的には以下の記事も合わせて読んでいただけると分かりますが、言葉の発達はコミュニケーションに関わる大事な能力です。
言葉の発達の遅れは大事なポイントなのです。
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Ⅳ) 身振り手振りが不自然。
最後は、身振り手振りが不自然なところです。
ジュリアの行動を見ますと、両手を開いて閉じてという身振りを文脈関係なくよくします。
身振り手振りも、相手とコミュニケーションをするには大事な要素となります。
適切な身振り手振りをしないと、相手は不思議に思ってしまいます。
ASDの子の中には、身振り手振りを全くしない子もいます。
ずっと言葉だけで説明しているような子です。
相手に伝わりづらく、誤解を生む原因にもなりえます。
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B) 限局的な興味・関心(こだわり)
この症状には以下の基準が設けられています。
(1)常同的または反射的な新t内の運動、物の使用、または会話(例:おもちゃを一列に並べたり物を叩いたりするなどの単調な常同運動、反響言語、独特な言い回し)
(2)同一性への固執、習慣への頑ななこだわり、または言語的、非言語的な儀式的行動様式(例:小さな変化に対する極度の苦痛、移行することの困難さ、柔軟性に欠ける思考様式、儀式のようなあいさつの習慣、毎日同じ道順をたどったり、同じ食物を食べたりすることへの要求)
(3)強度または対象において異常なほど、きわめて限定され執着する興味(例:一般的ではない対象への強い愛着または役割、過度に限局しまたは固執した興味)
(4)感覚刺激に対する過敏さまたは鈍感さ、または環境の感覚的側面に対する並外れた興味(例:痛みや温度に無関心のように見える、特定の音または触感に逆の反応をする、対象を過度に嗅いだり触れたりする、光または動きを見ることに熱中する)
こちらも文言が難しく抽象的なので分かりづらいですが、ジュリアの例を当てはめて考えてみます。
ⅰ) 自分のやり方にこだわり、他のやり方を極端に嫌う。
ほぼこの説明がこだわりの核心です。
ジュリアの動画で言いますと、皆で手に絵具をつけてペイントする遊びなのに、ジュリアは嫌って筆で絵を描いているシーンです。
「このやり方ではなく別のやり方」という柔軟な切り替えが難しく、「自分の慣れ親しんだ方法でやる!」と固執します。
自分なりのやり方でないと、癇癪を起したりするほどです。
親御さんや周りの方と、このこだわりの強さでトラブルになることがしばしば見受けられます。
別の方法を受け入れるにも時間がかかります。
自閉症スペクトラム障害の主な症状と言ってもいいかもしれません。
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ⅱ) 自分の絵に集中して声をかけられても反応しない。
いわゆる集中のし過ぎですが、これもASDでは重要です。
四六時中ずっと車のタイヤを回しているという例もあります。
良い意味では、集中力が他の人よりもあるということですが、悪い意味だと、ずっと同じことばかりしているということになります。
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ⅲ) 音に敏感。
動画では、ジュリアがサイレンの音を聞いてしんどくなる場面が描かれていました。
ビッグバードらも言っているように、普通のサイレンの音でも、ASDの方は敏感で大きく聞こえるのです。
この点に関しても膨大な研究があります。
詳しくは以下の記事を合わせて読んでいただきたいのですが、脳科学の研究でも取り上げられているほどです。
音だけではなく、五感のどこかが敏感な子が多いです。
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③診断基準になる症状のレベルとは?
これまで、コミュニケーション及び対人相互反応の障害とこだわりについて見てきました。
「このような症状なら、当てはまる人は多いじゃないのか?」という疑問を持たれる方もいらっしゃると思います。
しかし、重要なのは以下の二つの点です。
ⅰ) これらの症状が社会生活に影響するか?
一つ目は、この基準レベルまで症状が重い場合に自閉症スペクトラム障害の診断が下ります。
具体的には、学校や会社に行けないとか、他人とトラブルになったことがあるレベルです。
あるいは、周りの人がかなり配慮しないと本人が適応できない程度です。
ジュリアの行動では、普通の鬼ごっこができず、ボンボンと飛び跳ねながらの鬼ごっこでないとできないこだわりの強さが見受けられます。
一緒に遊ぶだけでも、周りの人がかなり理解し、配慮しないとできない状態です。
(この遊びに関しては、「飛び跳ねる」という特徴を持つ子を反映しただけかもしれませんが、このようにも解釈できます。)
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ⅱ) 発達の早期に発現していないといけない。
最後に、これらの症状が発達過程の最初の段階に表れていることです。
最初の段階とは、大体3歳時までの年齢くらいには症状が表れていることを指します。
発達の最初の段階からというのが重要で、単に「(能力不足で)できない」というレベルとは異なるということです。
元々、二つの症状があってできないので、本人の努力や親の躾とは全く関係がありません。
この点を勘違いすると、本人さんにとってもしんどくなります。
では、大人の発達障害とは何か?
それは、大半が本来発達の初期段階で症状が見られたのに見過ごされてきた場合です。
大人になって困りごとが出てきて、インターネット等で発達障害の存在を知って精神科に受診される方はいらっしゃいます。
本来は、できるだけ早くに発達障害は見つけないといけません。
本人さんの苦しさがずっと続くことになるからです。
だからこそ、親御さんや周りの方の発達障害への理解が必要なのです。
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④まとめ
以上より、セサミストリートの自閉症キャラ「ジュリア」から見る自閉症スペクトラム障害の症状と診断基準でした。
自閉症スペクトラム障害の主な症状と診断基準は「コミュニケーション及び対人相互反応の障害」と「こだわり」の二つです。
この二つの症状でトラブったり、学校や会社に行けなくレベルになると自閉症スペクトラム障害に相当します。
そして、発達の初期の段階から見られることも重要です。
自閉症スペクトラム障害を含めた発達障害は、見過ごされることが多いです。
普段の日常生活で、「あれ?」と少しでも思ったなら、できるだけ早く精神科に受診していただくことが、本人さんの今後の幸せに関わります。
早期診断と早期発見ができるのも、発達障害の知識があるかどうかにかかっています。
しんどい思いをする人を減らすには、知ることが第一歩だと思います。
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