・IQが高いと評価されるし、人生の満足度も高いよね?
・IQ以外の能力の方が幸福には重要だ!
人は幸せになるために努力します。
一生懸命勉強して頭が良くなって、良い職について…なども幸せになるためです。
では、頭の良い人やIQの高い人は本当に幸せなのでしょうか?
頭の良さはモテることにもつながりますし、仕事パフォーマンスの高さから社会的にも評価されます。
よって、頭の良い人やIQの高い人は幸せになるようなイメージがあります。
でも、個人的な経験ではどれくらい高学歴で頭がよかろうが必ずしも本人が幸せそうではない気がします。
むしろ、頭が良くいろんなことに気を回せるがゆえに、悩みが多い気もします。
今回はそんな頭の良さと幸せとの関係性を心理学のエビデンスを基に見ていきます。
本記事では以下のことが学べます。
2. 幸せに直結するIQ以外の要因
3. IQが非常に高いギフテッド(Gifted)は幸せなのか?
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①個々人のIQの高さは幸福度と関係しない!?
頭の良さと幸福度を調べた研究は結構ありますが、どの研究でも両者の関係性は「薄い」か「ない」というのが現状です。
Hartog & Oosterbeek (1998)は、個々人を何年にもわたって調べた長期的な研究データを利用して、IQと幸福度との関係性を調べました。
すると結果は以下のようになりました。
この図は、左の項目が幸福度と関係するかを示した表です。
数字の欄に*が付いている項目は幸福と関係があることを示しています。
大切なのは、一番右側のModel IVの欄です。
Intelligent Variablesと書かれた二つの項目を見てください。
この項目の数字には、*がありません。
なので、IQの項目と幸福度との間に関連性があるとは言えないという結果です。
ただ、この研究で示されていることは興味深いです。
例えば、一番上のSchooling Variablesの欄はいわゆる本人の学歴の高さを示しています。
学歴の高さだと大卒ぐらいまでは幸福度と正の関係性があり、大卒ぐらいまでは幸福度が上がります。
つまり、IQと幸福度は関係があるとは言えませんが、学歴的な頭の良さはある程度幸福に繋がると言えます。
この図も見方は先ほどの表と同じですが、今回は項目が異なります。
この項目でも、IQと幸福度との関係性はあるとは言えないという結果です。
しかし、高卒までの学歴や結婚の有無が幸福度と関係することが示されています。
特に結婚の有無では、離婚した方や旦那さんと死に別れた女性である未亡人の方は幸福度が下がるという結果です。
もう一つ注目したいのが、Health statusの欄の健康度です。
健康的だと答える人ほど幸福度が高いです。
よって、個々人のIQと幸せには関係性がなさそうです。
大切なのは、IQ的な頭の良さではなく、自分の学びを示す学歴や結婚の有無、そして健康度などの指標だと言えます。
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②個々人ではなく国単位でのマクロな頭の良さと幸福度との関係性
先ほど、個々人のIQと幸福度との間には関連性があるとは言えないという結果でしたが、国レベルのマクロなIQと国レベルの幸福度には関係があるという研究は複数あります。
Stolarski et al. (2015)は、各国で国民のデータを平均したIQと幸福度との関係性を調べました。
すると以下のような結果になりました。
この図の縦軸は、幸福度で上に行けば行くほど幸せであることを示します。
横軸は、国レベルでのIQで、右に行けば行くほどその国の国民のIQが高いことを示します。
傍線が個人主義の高い国を、荒い点線が個人主義の傾向が中間レベルの国を、細かい点線が個人主義の低い国をそれぞれ示しています。
すると、まず国レベルのIQが高ければ高いほど幸福度が高くなる右肩あがりのグラフが示されています。
また、個人主義の高い国ほどより傾きが大きく、IQと幸福度との関係性は強くなります。
なので、国レベルというマクロなIQ指標では幸福度と関係するという結果です。
特に、個人主義が強い国では国民のIQが高いほど幸せと答える傾向があります。
この図は、他の要因との関係を図示したものです。
GDPは、各国の国内総生産(GDP)の高さを示します。
IDVは個人主義の強さです。
すると、図より、IQは生活満足度(Life Satisfaction)に関係しますが、それはIQが上がれば上がるほどGDPが上がり、GDPが上がることによって生活満足度も上がるという関係性です。
なお、国レベルのIQと幸福度の関係には、その国の人口密度と社会性も影響を与えるとも言われています(Norman & Kanazawa, 2016)です。
幸福度に影響を与える要因はたくさんあり、それらを全部考慮してもなおIQと幸福度との関係性が残るのかはまだ不明です。
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③IQが非常に高いギフテッドは果たして幸せなのか?
最後に、IQが元々高い人は幸せなのかについて見ていきます。
これまで、国レベルのマクロなIQは幸福度と関係するが、個々人のIQは幸福度と関係しないという研究をご紹介しました。
では、最近教育界でも話題の、IQが非常に高いギフテッドな人は幸せなのか?
「そうではない」ことを示した研究がPoller & Schnell(2017)です。
彼らは、MENSA会員のギフテッドと学業が優れている人と普通の人で幸福度の違いを調べました。
すると結果として、幸福度の指標となるWell-Beingは、ギフテッドの人だけ低かったという結果になりました。
他にも、人生の意味を感じている度合いや自分の仕事に意味を感じている度合いもギフテッドの方が低いという結果でした。
この研究はギフテッドと学業が優れている人と普通の人で様々な要因で差があり、単純比較は難しいですが、それでもギフテッドの方が他の二群よりも複数の要因で低いという結果です。
なので、IQが高くても必ずしも幸せなわけではありません。
この図は、各群の自分への慈しみの感情(Self-compassion)が人生の意味にどれくらい影響するのかを調べた結果です。
縦軸が、人生の意味をどれくらい感じているかを示します。
横軸は、自分への慈しみの感情で、左側があまり自分を大切にしていない場合であり、右側が自分を大切にしている場合です。
傍線が学業が優れた人、細かい点線が普通の人、荒い点線がギフテッドを示します。
すると、ギフテッドが他の群よりも人生の意味を感じにくいことがわかります。
しかし、自分を慈しむ感情があれば、人生の意味をより感じられるようになります。
なので、IQの高さが大事なのではなく、自分を見つめることが大事なのです。
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④まとめ
以上より、IQを指標にした頭の良さが幸福度と関係するかを見てきました。
まとめると以下のようになります。
- 個々人のIQと幸福度とは関係するとは言えない。
- IQよりも、学歴や健康度の方が幸福度に影響する。
- 国レベルのマクロな国民のIQはその国での国民の幸福度と関係する。
- しかし、個人主義や人口密度や社会性など他の要因との関係も指摘されている。
- 元々IQが非常に高いギフテッドは、学業が優れた人や普通の人よりも幸福度は低い。
- 自分を慈しむ感情があると、人生に意味を感じられるようになる。
ギフテッドの研究から、IQが高くても必ずしも幸福になるとは限らず、むしろIQが高いと生活満足度も低く、人生の意味もあまり感じられない。
幸せは頭の良さではなく、自分と向き合えているかであり、その上で自分の幸福の形を探すことが大切だと思います。
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参考文献
Hartog & Oosterbeek (1998). Health, Wealth, Happiness: Why Pursue a Highet Education ? Economics of Education Review, 17(3), 245-256.
Norman & Kanazawa (2016). Country road, take me home ... tomy friends: How intelligence, population density, and friendship affect modern happiness. British Journal of Psychology, 107(4), 675-697.
Poller & Schnell (2017). Brilliant: But What for ? Meaning and Subjective Well-Being in the Intellectually Gifted and Academically High-Achieving Adults. Journal of Happiness Study, 18, 1459-1484.
Stolarski et al. (2015). Are all smart nations happier ? Country aggregate IQ predicts happiness, but the relationship is moderated by individualism-collectivism. Intelligence, 50, 153-158.
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