安心して発言できません。
長く働きたいけれど、人間関係が悪い。
人は人生で多くの時間を仕事に費やします。
しかし、仕事のストレスでほとんどの方が悩まれていると思います。
悩みの中で大きな要因が、「上司-部下」関係や人間関係などの職場環境です。
人が長く一つの職場で働いて、昇進して、会社や社会に貢献するには、職場改善が不可欠です。
最近では、組織開発の研究や動きが盛んで、多くの有識者が組織を良くする施策について発言されています。
では、その施策の中で、いったいどれが有効なのでしょうか?
今回は心理学のエビデンスをもとに、ストレスが少なく、安心して、長く働ける職場に備わる条件をいくつか紹介します。
本記事では以下のことが学べます。

2. 企業や組織風土が働く人の仕事満足度を左右する!?
3. 従業員の仕事満足度を高め、かつ仕事の生産性を上げるには結局何が大事か?
スポンサーリンク
①仕事の意味と職場の安全性は、働く人が仕事に没頭するための基本条件
では、そもそも仕事にモチベーション高く取り組めるような職場はどのような場所なのでしょうか?
それを示したのが、Mayら(2004)の研究です。
彼らは大手保険会社の従業員200人以上を調査して、「仕事にモチベーション高く取り組める」エンゲージメントに関係する要因を、心理的安全性や権限移譲(エンパワーメント)など最近提唱された概念などをもとに調べました。
どのような要因で、働く人がよりお仕事に没頭できるのか?
その結果が以下の図です。

この図では、エンゲージメント(Engagement)に影響する要因として、仕事の意味(Meaningful)・心理的安全性(Safety)・能力(Availability)の三つを挙げています。
能力が高く、仕事をするキャパに余裕があることが仕事のエンゲージメントを高めることはわかりますが、大事なのが、「仕事の意味」と「心理的安全性」です。
この二つは、エンゲージメントを上げる両輪のような気がします。
仕事の意味とは、働く人本人がその仕事に自分なりの意義や意味を見出している状態を指します。
それに影響するのが、仕事が合っているか(Work Role Fit)などの要因です。
次に、心理的安全性とは、いろんなところで言われていますが、「恐怖や緊張もなく、自分の意見が発言できる安全性」を指します。
これに影響するのが、同僚や上司との関係です(Coworker Relationship, Supervisor Relationship)。
心理的安全性に関しては、それだけで従業員のエンゲージメントを向上させる可能性はありますが、基本的には人間関係が下敷きにあると思われます。
人間関係の構築と仕事の意義を見つけるのは、自分で何とかできそうですよね。
もちろん、上司や仲のいい人と一緒に仕事の意義を見つけたり、良い人間関係を構築することもできます。
働きやすい職場は、自分でも上司の働きかけでもできそうです。
スポンサーリンク
②会社や組織の風土が働く人の仕事満足度を高める!
このように、従業員のエンゲージメントが高く、仕事に没頭できる会社や組織は理想的な職場環境だと言えます。
会社・組織風土は、働く人の仕事満足度にも影響しそうです。
その会社・組織風土と働く人の仕事満足度の関係を示したのが、Tsai(2011)です。
彼は、病院の看護師さんを200人以上調査しました。
その調査結果が以下の図です。

この図は、論文の図をもとに心理のしろくまが作成しました。
まず、大事なのが、組織風土です。
「従業員の意見に気を配る」「お客様目線で仕事をする」「仕事の責任を意識する」「協力を意識する」などの指標で、組織風土が測られています。
これらの働く上での規律が、仕事満足度向上につながります。
さらに、上のリーダーの行動とは、「メンバーと信頼性のあるコミュニケーションを頻繁に取る」「目標(ビジョン)を実現するための行動を呼びかけ、達成に向けた言動をする」「目標(ビジョン)の意義を何度もメンバーと話し合う」などコミュニケーションを積極的にすることとビジョン実現のための言動が当てはまります。
上記の図から、「組織風土→リーダーの行動→仕事満足度」という関係が一部成り立ちます。
そのため、組織風土とリーダーの行動の両方が働く人の仕事満足度を高めます。
職場環境や会社・組織風土など、働きやすい環境には、仕事の意義(ビジョンの理解)や心理的安全性の両輪が大事だと思われます。
スポンサーリンク
③理想の職場環境実現のためには、会社・組織要因と個人要因の二つが必要!
これまで、ストレスが少なく、安全に、長く働きやすい職場環境や会社・組織風土について見てきました。
最後に、では、働く人が自ら働きやすいと思えるようになる(個人要因)には、どうすればいいのでしょうか?
Seibertら(2011)は、たくさんの働きやすさの研究をまとめて、分析し直し、一定の結論を出すメタ分析の手法を駆使して、この問題に取り組みました。
メタ分析の詳細はこちらの記事をご覧ください↓
メタ分析は、ちゃんとした手続きのもとで行われると、最もエビデンスレベルの高い信頼できる研究だと言われています。
では、メタ分析の結果わかったことは何か?
それをまとめたのが、以下の図です。

この図も、論文の図をもとに心理のしろくまが作成しました。
左上の文脈要因は、これまで見てきた会社・組織風土などの環境要因です。
左下の個人的要因に焦点を当てると、働きやすく仕事の成果がでやすい職場になるには、「前向きな自己評価」「人的資本(良好な人間関係)」「性別」が必要だと示されています。
性別はあまり大事ではありませんが、前向きな自己評価と人的資本(良好な人間関係)は大切です。
前向きな自己評価とは、「自分の評価軸を持つこと」「課題が与えられても何となくできそうだと思うこと」「達成したい。責任をもって仕事をしたい」などで測られます。
つまり、自分で自分の仕事をより意味のあるように考えることです。
人的資本とは、良好な人間関係とほぼ同じ意味です。
ここでも、自分なりの仕事の意義が個人要因として大事になります。
文脈的要因の社会的サポートには、心理的安全性が入っています。
自分なりの仕事の意義と心理的安全性。
それらがありつつも、他の要因があるとより、仕事への満足度や組織へのコミットメントが高まり、仕事パフォーマンス向上などのつながります。
スポンサーリンク
④まとめ
以上より、ストレスなく、安心して、長く働ける職場の条件について心理学の研究を参考に紹介しました。
まとめると以下のようになります。
- 仕事に対する自分なりの意義・意味と心理的安全性は、仕事にモチベーション高く取り組むエンゲージメント向上に影響する。
- 会社・組織風土とメンバーに配慮するリーダーの言動が、働く人の仕事満足度に影響する。
- 会社・組織風土と個人要因の二つとも、仕事満足度や仕事のパフォーマンスを上げる。
少しだけ最初の方に書きましたが、「ストレスなく、安心して、長く働ける」職場は、ある程度自分で作る努力はできそうです。
上司や管理職などと良好な関係を構築して、より良い職場を作ることも可能ではあります。
しかし、言うは易し、行うは難しです。
まずは、研究結果にもあった通り、「今している仕事が自分にとってどんな意味があるのか?」を考えるところから始めるといいかもしれません。
今働く職場の意外な長所に気づくかもしれませんし、短所を見つけて自分なりに変える努力ができるようになるかもしれませんね。
スポンサーリンク
参考文献
May, D. R., Gilson, R. L., & Harter, L. M. (2004). The psychological conditions of meaningfulness, safety and availability and the engagement of the human spirit at work. Journal of Occupational and Organizational Psychology, 77(1), 11–37.
Seibert, S. E., Wang, G., & Courtright, S. H. (2011). Antecedents and consequences of psychological and team empowerment in organizations: A meta-analytic review. Journal of Applied Psychology, 96(5), 981–1003.
Tsai Y. Relationship between organizational culture, leadership behavior and job satisfaction. BMC Health Serv Res. 2011 May 14;11:98.
スポンサーリンク
