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不眠症を改善!ぐっすり眠るための心理学:運動・心理療法・マインドフルネス

・不眠が続いてしんどい。

・ぐっすり眠りたい。

・寝付くまで時間がかかるし、夜途中で起きてしまいます。

このような悩みを抱えていませんか?

特に三つ目の症状は不眠症のサインです。

統計では、約10%~15%の人が慢性的な不眠症で悩んでいます。

不眠症には睡眠薬という選択肢はありますが、日中に眠くなったり、頭がぼーっとしたりなど副作用が気になります。

そこで今回は、不眠症の研究から心理学的にぐっすりと眠る方法を探ります。

睡眠薬に頼らなくても、日常生活の中で取り入れることで、睡眠改善につながる具体的な方法をご紹介します。

本記事では以下のことが学べます。

1. 睡眠を阻害する日常生活の要因

2. 不眠症の心理学的改善方法

3. 睡眠の悩みを解消する具体的方法

4. 代表的な心理療法について

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①不眠症を解消するための心理学的方法の模索は古くからある?

睡眠は、日常生活の要です。

睡眠がとれないと日常生活を上手く過ごせません。

眠気に襲われて集中することもできません。

このような経験は誰にもあることで、実は不眠に関しては結構古くから研究されています。

心理学的方法としても、1994年のMorin et al.の研究は代表的です。

彼らは、これまでの研究を集めて分析し直すメタ分析を用いて、どのような心理学的方法が不眠症の改善につながっているのかを検証しました。

ちなみに、メタ分析の詳しい解説はこちらです。

メタ分析とは何か?心理学論文から見るメタ分析の方法と限界

合わせて読んでいただけると幸いです。

Morin et al. (1994)の結果は以下のようになりました。

insomnia psychological sleep method

この図は、当時まで知られていた心理学的方法が、本当に睡眠の改善につながっているのかを検証した結果です。

左の欄に書かれているのが、睡眠の指標です。

例えば、Sleep-onset latencyは、寝入りの時間です。何分で寝入ることができたかを表しています。

他にも、一番下の欄は、トータルの睡眠時間です。

Treatmentが心理学的方法を施した群。

Control conditionが比較のために心理学的処置をしなかった群です。

重要なのは、Pretreatment ValuePost-treatment Valueの差分です。

前者は、心理学的処置を施す前のベースライン。

後者は処置を施した後にどのくらい効果があったかを示します。

例えば、誰もが気になる一番下のトータルな睡眠時間(Total sleep time)では、処置前だと349.4分でしたが、処置後は377.9分に睡眠時間が伸びています。

一方、比較のためのコントロール群では、処置前が357.2分で、処置後が361.4分であり、あまり変化はありません。

このことから、心理学的方法は睡眠時間の改善に効果的であることがわかります。

その他のほぼすべての指標で改善しています。

また、Follow-Upという処置後数か月した後にも効果が持続していることを表す欄でも、大体の指標で効果が持続していることが確かめられています。

では、具体的に心理学的な不眠症改善の方法とは何か?

それは以下の図に表れています。

insomnia psychological sleep method

この図も先ほどと同じ図です。

違うのは、左の欄で、Individual treatmentが具体的な心理学的睡眠改善法を示しています。

Stimulus Control Therapy:以下の五つの指導を守る方法です。

(1)眠くなった時のみベッドに行く。(2)ベッドは睡眠か性行為のためだけに使用する。(3)15分~20分程度で眠れない時は、ベッドから起き上がって別の部屋に行く。眠くなった時に戻る。(4)睡眠時間に関係なく、朝の同じ時間に起き上がる。(5)日中での昼寝は禁止。

Sleep Restriction Therapy:実際の睡眠時間に対して、ベッドで過ごす時間を制限する方法。

Relaxation Therapy:リラックス法のこと。

Paradoxical Intention:ずっと起きるというような最も嫌なことをやってもらい、そのことに対する不安感を無くすことによって睡眠に入りやすくする方法。

Sleep Hygiene Education:睡眠と健康や日常生活の睡眠を阻害するものについて学ぶこと。

代表的なのがこの五つです。

上の図より、いずれも効果がありそうですね。

このように、不眠症に関する心理学的研究は結構古くからあります。

これらの五つの方法もある程度効果があると言えそうです。

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②睡眠を阻害する日常生活の身の回りの要因

ぐっすり眠るには、それを阻害する要因を回避しないと意味がありません。

たくさんの要因がありますが、日常生活で我々が接しているものを今回はご紹介します。

それが、Arora et al. (2014)の研究です。

彼らは、テレビや携帯電話などの機器が睡眠に悪影響を及ぼすことを示しました。

それが以下の図です。

sleep disturbed factors

この図は、各機器の使用状況と睡眠時間の長さを表しています。

Neverは「全く使わない」。

Sometimesは「時々使用する」。

Usually/alwaysは「いつも使っている」。

それぞれ上から順に使用頻度が示されています。

この使用頻度が上がるとどの機器でも睡眠時間が短くなることが読み取れます。

テレビ、ビデオゲーム、携帯電話、音楽、パソコン、SNSなどどれを使用していても睡眠時間に悪影響が出ます。

音楽でも睡眠時間が短くなることは意外に思われる方もいるかもしれません。

音楽をかけて眠るのは実はあまり良くありません。

これらは気をつけた方がいいと思います。

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③不眠症研究から見るぐっすり眠るための心理学的方法論

先ほど心理学的な不眠症改善方法を見てきましたが、現在ではどうなのでしょうか?

比較的最新の研究を振り返って、具体的な不眠症改善の心理学的方法を見ていきます。

運動すると不眠が解消されてぐっすり眠れる。

まず重要なのは、日中に運動をすると不眠症が改善されるという研究です。

Reid et al. (2010)は、55歳以上のお年寄りの不眠症の方を対象に運動を行わせて、睡眠が改善されるかどうかを検証しました。

どれくらいの運動量か?

研究では、週によって異なりますが、大体10分~30分程度の運動でいいみたいです。

10分~30分くらいの運動をした群とリクリエーションを受けたコントロール群との差を見ています。

すると結果は以下のようになりました。

exercise and insomnia

上の図が、睡眠度合いを示しています。

点数が高いほど、不眠の傾向があることを示します。

左が運動群で、右がリクリエーションをしたコントロール群です。

黒が運動前のベースライン。

ねずみ色が運動後の睡眠度合いです。

すると、図より、リクリエーションを行ったコントロール群ではベースラインと変わりませんが、運動群では有意に睡眠が改善されています

真中の図がうつ病指標で、下の図が日中の眠気です。

いずれも同じ傾向を示しており、運動がうつ病や日中の眠気の改善にもつながっています

つまり、運動することで睡眠の質が上がるということです。

不眠症はお年寄りの方で多いので、今回の研究はお年寄りを対象にしています。

さらに、運動による不眠症改善の効果はかなり確かであることが示されています。

それが、Yang et al. (2012)の研究です。

彼らは、メタ分析の方法を用いて運動と不眠症改善との関係を調べました。

すると、以下のような結果になりました。

exercise and sleep

この図の、黒い◆を見ると分かるように、運動は睡眠の改善に効果があることが示されています。

0よりも統計的に有意に効果があるということです。

不眠に悩む方は、日中にちょっとした運動を取り入れてもいいかもしれません。

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心理療法による不眠の解消:認知行動療法

次は、不眠症の改善効果が高い認知行動療法(CBT)についてです。

認知行動療法とは心理療法の一つです。

日本でも保険点数化されていて効果が認められている数少ない心理療法です。

では、認知行動療法とはどのような心理療法なのでしょうか?

簡単に言うと、歪んだ認識を正して上手く対処する方法を学び、実践することです。

いろんな方法がありますが、睡眠研究で使用されている方法をまとめると以下のようになります。

各週で30分~60分程度、心理士とセッションを行う。

各セッションでは以下のことをします。

(1)睡眠に関する誤解と正しい知識を得る。

(2)正しい睡眠の知識の基に以下の4つの方法を行います。

a)基準となる起床時間を決める。

b)起きている間は、ベッドから離れる。

c)ベッドでは睡眠を阻害する行動は行わない。

d)日中の昼寝は禁止

(3)心理士とのセッションでできているかを確認して修正する。

これらのことを行い、睡眠に対する間違った認識を改めて正しく行動します。

この認知行動療法を行った群と、リラクゼーションを行った群とプラセボ群とを調べた結果が以下の図です(Edinger et al., 2001)。

cognitive behavior therapy sleep

この図は、施術後の睡眠指標の結果です。

分かりやすいのが、下の方にあるInsomnia Symptom Questionnaireです。

リラクゼーション(RT)群とプラセボ群(PT)よりも認知行動療法群(CBT)の方が数値が低くなっています

つまり、不眠症が改善されているのです。

他の睡眠指標でも統計的に有意に改善されており、認知行動療法は不眠症改善に効果的であることが示されています。

この研究では、心理士と対面で行っていますが、もっと簡易にインターネットでのやり取りでも効果があることが示されています(van Straten et al., 2013)。

最近では、マンガで認知行動療法の方法が学べる本やサイト動画などがありますので、不眠に悩む方はチェックしてみることをお勧めします。

認知行動療法は、メタ分析でも、いろんな睡眠指標で高い効果が示されています(van Straten et al., 2018)。

科学的に確かな方法だと言えそうです。

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不眠症改善とぐっすり眠るためのマインドフルネス

最後に、近年話題のマインドフルネスについてです。

マインドフルネスとは、瞑想法を応用した心理療法で、「今ここ」焦点を置いて自分を見つめる方法です。

詳しくは、以前の記事「マインドフルネスとは?科学から見るその効果と副作用」をご覧ください。

合わせて読んでいただけるとより理解が深まると思います。

このマインドフルネスが不眠症改善に効果があることを示したのが、Black et al. (2015)です。

彼らの研究もお年寄りを対象にしていますが、マインドフルネスを行った群(MAPs)と睡眠教育を行った群(SHE)とを比較しています。

その結果が以下の通りです。

mindfulness sleep insomnia

縦軸が、不眠症の度合い。

上に行くほど不眠に悩んでいることを表します。

左が、施術前で右が施術後です。

青がマインドフルネス群でねずみ色が睡眠教育群です。

すると、マインドフルネス群で統計的に有意に睡眠指標で改善されていることが示されています。

つまり、単に睡眠の正しい教育を行うよりも、マインドフルネスの方が不眠に効果的です。

比較的最近の研究なので、お年寄りの研究しかご紹介できませんが、おそらく年齢に関係なくマインドフルネスは睡眠に効果があると思われます。

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④まとめ

以上より、不眠症の研究から睡眠改善の心理学的方法をご紹介しました。

まとめると以下のようになります。

  • 不眠症の研究は古くからあり、効果的な心理学的方法も模索されている。
  • パソコンや携帯電話やテレビなどの電子機器の使用は睡眠時間に悪影響を及ぼす。
  • 運動すると不眠症が改善される。
  • 運動するとうつ症状や日中の眠気も改善される。
  • 認知行動療法は不眠症の改善に効果的。
  • マインドフルネスも不眠症に効果的であり、今後の研究しだいではどの年齢層でも有効であることが示されうる。

私自身も不眠症に悩まされています。

かなり慢性的な不眠症です。

睡眠薬で眠るも、次の日の朝まで眠かったり、頭が働かなかったりします。

なので、今回ご紹介した心理学的不眠症改善方法は、比較的副作用も少なく、自分でもなんとかできる方法です。

不眠に悩んでいるのなら、運動やマインドフルネスなど比較的やりやすい方法を取り入れてみてはいかがでしょうか?

不眠に悩む方に本記事が少しでもお役に立てられれば幸いです。

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参考文献

Arora et al. (2014). Associations between specific technologies and adolescent sleep quantity, sleep quality, and parasomnias. Sleep Medicine, 15, 240-247.

Black et al. (2015). Mindfulness Meditation and Improvement in Sleep Quality and Daytime Impairement Among Older Adults With Sleep Disturbances: A Randomized Clinical trial. JAMA International Medicine, 175(4), 494-501.

Edinger et al. (2001). Cognitive Behavioral Therapy for Treatment of Chronic Primary Insomnia: A Randomized Controlled Trial. JAMA, 285(14), 1856-1864.

Morin et al. (1994). nonpharmacological Interventions for Insomnia: A Meta-Analysis of Treatment Efficacy. American Journal of Psychiatry, 151(8), 1172-1180.

Reid et al. (2010). Aerobic exercise improves self-reported sleep and quality of life in older adults with insomnia. Sleep Medicine, 11(9), 934-940.

van Straten et al. (2013). Guided Internet-delivered cognitive behavioral treatment for insomnia: a randomized trial. Psychological Medicine, 1-12.

van Straten et al. (2018). Cognitive and behavioral therapies in the treatment of insomnia: A meta-analysis. Sleep Medicine Reviews, 38, 3-16.

Yang et al. (2012). Exercise training improves sleep quality in middle-aged and older adults with sleep problems: a systematic review. Journal of Physiothrapy, 58, 157-163.

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