これまでこのブログではたびたびメタ分析について触れてきました。
メタ分析の論文を引用したり、軽くメタ分析を説明したりなど。
そこで、「結局、メタ分析とは何なのか?」という疑問を持たれる方は数多くいらっしゃると思います。
なので、今回は、Rothenthal & DiMatteo(2001)の研究を参考にしながらメタ分析の解説をします。
なお、最近になってきてメタ分析の書籍が刊行されるようになりました。
もし、ご興味がありましたら、そちらをぜひ読んでいただければと思います。
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①メタ分析(meta-analysis)とは?
メタ分析とは、簡単に言えば、あるトピックに関する実験論文を集めてきて、それらをさらに分析することを指します。
各実験論文は、たとえ同じような実験であっても結論が異なることがあります。
例えば、ある癌の治療の効果を確かめる研究があったとします。
ある場合は癌が消滅するほどの効果が統計的に示されいます。
また、別の場合は癌に全く何の変化もないという結果が出ます。
つまり、同じ癌の治療法を適用しているのに、治療効果が論文によって異なることがしばしばあるのです。
このように、研究ごとでしばしば結果にばらつきが出ます。
しかし、このままだと医療現場の応用したり、さらなる研究をしたりするのが難しくなりあます。
なので、研究を前進させるためにも、このばらつきを考慮して結局どっちが正しいのか判定する必要が出ます。
そこでメタ分析です。
メタ分析は、その同じ治療法を試した論文を集めて、分析しなおし、その治療法の効果を再確認します。
そうすることで、
メタ分析は、少ない研究や多くの研究の様々な結果を結語させ、正確な統計的値を可能にし、不一致な結果を説明できるようにし、さらに、多くの研究に関わる仲介変数や媒介変数の発見をも可能にする。
このような利点をメタ分析はもっています。
ただ、論文研究の中には、レビュー論文というものがあります。
レビュー論文とは、ある研究トピックに関する研究をまとめて、自身の見解を表明する論文のことです。
このレビュー論文でもいいじゃないかと思われるかもしれません。
しかし、レビュー論文の場合、関連する研究を単に集めて主観的に述べたものですから、レビュー論文の結果の解釈の妥当性などはわかりません。
その点、メタ分析は統計的分析を施しますので、客観的で比較的妥当性の高い結果が得られます。
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②メタ分析の方法と流れ
では、メタ分析はどのように行われているのでしょうか?
最初にざっくりと述べましたが、ここではもっと踏み込んでみましょう。
1)研究の対象あるいは興味関心の的となる独立変数と従属変数を定義する。
例えば、うつ病患者への医学療法の効果などですね。
独立変数とは、実験者が操作する変数(原因)で、従属変数は独立変数を操作した後に変化する変数(結果)のことです。
うつ病治療の例の場合、どのような医学療法を試すのかというのが独立変数で、うつ病患者の症状の改善度が従属変数となります。
2)次に、包括的に論文として出版されている研究をできるだけ集めます。
論文の収集段階ですね。
そのときに、研究論文の中の実験方法や実験結果について念入りに研究者は見ていきます。
特に1)のように、どれが独立変数でどれが従属変数かを見分けるためです。
3)そして、ようやく分析を施します。グラフやチャートなどで2)で集めた変数を分析します。
4)最後に、これらの変数の結果が統計的に有意か(意味のあるものかどうか)を分析します。
このような流れになります。
メタ分析は新しい研究をしないと言う意味では楽に思われるかもしれませんが、出版されている論文を集めて、時には何百とある論文を読み込まないといけないので結構大変な作業になります。
集めてきた研究の中には、統計値がはっきりしない論文もあれば、重要な数値が欠けている論文もあったりします。
その場合、実際に論文の著者に問い合わせて、その数値を教えてもらったりしないといけないのである意味体力勝負になります。
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③メタ分析の限界点と批判点
研究として至れり尽くせりに見えるメタ分析にも、批判されている点が結構あります。
1)サンプリング・バイアス
一つ目はサンプリング・バイアスです。
これは何か?
本来メタ分析をするときは、「すべての」研究論文を集めることが望ましいのですが、残念ながらそれは物理的に不可能です。
そして、研究の中には、結果が芳しくないという理由で出版されていないものも多数(というよりかなり)あります。
一般的に、出版されている論文は、なんらかの点で、統計的に有意義な論文ばかりです。
なので、もしメタ分析するときに出版された論文を集めた場合、自然と統計的に有意義のある研究ばかりが集まってしまいます。
これを、サンプリング・バイアスと言います。
メタ分析を行っている研究の中には、出版されていない研究を含めているものもありますが、これこそすべて集めるのは不可能です。
なので、必ずといっていいほど、サンプリング・バイアスはメタ分析に付きまといます。
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2)"Garbage In and Garbage Out"
メタ分析を行うときには、基本的にすべての研究論文を同等に扱います。
なので、質の高い研究や質の低い研究も同じ一つの論文として扱ってしまいます。
この問題を"Garbage In and Garbage Out"と呼びます。
この問題点を解消するために、ある研究には重み付けを行うという方法もあるらしいですが、そうするとメタ分析の客観性やメタ分析のそもそもの目的自体が崩れてしまう可能性が出てきます。
なので、この問題もメタ分析にとっては深刻と言えるでしょう。
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3)"Combining Apples and Oranges"
この批判は、メタ分析の方法論にあたります。
メタ分析では、独立変数や従属変数があきらかに様々に異なっていたり、異なるサンプリング手法を使っていたりして、似ているけど同じではない問題を扱う場合が多いです。
それらも、全部ごっちゃにしてしまって分析しているものもあります。
それを"Combining Apples and Oranges"と呼びます。リンゴとみかんという違う物を一緒にしてしまうことですね。
メタ分析の方法論の問題点として挙げられます。
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④終わりとまとめ
最後にまとめとすると、メタ分析とは、あるトピックを扱った研究論文をできるだけ集めて分析し直す手法です。
メタ分析によって、結果の食い違う研究分野でも一定の評価を下すことができるようになり、研究としての進展が図れます。
この図はhttps://www.jspm.ne.jp/guidelines/respira/2016/pdf/01_03.pdfを参照
最後に、このメタ分析は、その研究手法から、エビデンスとして最も信頼性の高い研究に位置づけられています(上図)。
なので、メタ分析の研究は引用されやすく、かつインパクトの高い研究になりがちです。
しかし、上記のように問題点もあります。
その長所と短所両方を知っておくと研究の奥深さがよりわかりやすくなるでしょう。
いろいろと省略している部分もありますので、ご興味のある方はぜひ原著に当たって下さい。
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参考文献
Rosenthal & DiMatteo. (2001). META-ANALYSIS: Recent Developments in Quantitative Methods for Literature Reviews. Anual Review of Psychology, 52, 59-82.
https://www.jspm.ne.jp/guidelines/respira/2016/pdf/01_03.pdf
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