・どっちを選べばいいのかいつも迷います。
・結果を考えると優柔不断になってしまいます。
人は何かを決めるとき不安を抱くもの。
すぐに「こうだ!」と決められる人はなかなかいません。
「これをしたらどうなるのだろう?」
「これしても大丈夫かな?」
「後々に影響しないかな?」
こうした不安は誰もが抱きます。
でも、不安を抱かず自信満々に決断するにはどうしたらいいのかわからない。
いつも平気な顔で物事をてきぱきと決断する人を見ると羨ましい。
今回はそんな不安を抱いている人の意思決定を取り上げます。
実は、心理学的に不安を抱いている人とそうでない人とで意思決定に差が出ます。
また、どうしたら不安にならずに普通に決断できるようになるのか。
その具体的方法もご紹介します。
本記事では以下のことが学べます。
2. 不安な人の決断時の行動傾向
3. 不安時に決断する時の脳内メカニズム
4. 不安を取り除く具体的方法
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①不安を抱いている時の決断は保守的になりがち
まずご紹介するのが、不安障害を抱えている人の研究です。
不安障害は普通の方よりも、将来のことや身近なことで不安になります。
Giogetta et al. (2012)は、健常者と不安障害を抱えた方にギャンブル課題をしてもらいました。
その結果が下図になります。
この図の左右は気にしないでください。
黒が健常者。
ねずみ色が不安障害の方です。
縦軸は、ギャンブルでリスキーな行動を取る割合を示しています。
ここでリスキーな行動とは、低い確率でも報酬が高い場合に賭けたりする大胆な行動のことです。
図のように、不安障害の方はあまりリスキーな行動を取らないことがわかります。
ギャンブル場面で保守的になり、より安全な方を選んでしまいます。
つまり、大胆な行動に踏み切ることができず、あまり稼げません。
この図は、一回限りのギャンブルではなく、複数回のギャンブル期間の時系列です。
どの時系列でも、不安障害の方はリスキーな行動をあまりとらないことがわかります。
比較的ずっと保守的であるということですね。
ちなみに、同研究では、大きく勝った後でも不安障害の方はあまり寛大なリスク行動を取りません。
安全圏をひたすら選ぶ傾向があります。
他方、Gambetti & Giusberti (2012)は、日ごろ不安感が強い方は、あまり投資行動をしないということを様々な指標から示しています。
不安感の高い人は、ギャンブルだけではなく、資産の構築など日ごろの日常生活の決断まで保守的になります。
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②不安時の意思決定の脳内メカニズム
先ほど不安感が高い方は、不安感が低い方よりも保守的になることを示しました。
では、そのメカニズムはどのようになっているのでしょうか?
本元のメカニズムを知ることで、不安を抱いていた時の対処法が分かるかもしれません。
Xu et al. (2013)は、健常者を対象に不安感の高低によってどのように意思決定時の脳活動が異なるのかを研究しました。
彼らは少し複雑な研究をしています。
同じくギャンブル課題なのですが、ギャンブルの内容が異なります。
課題条件が二つあります。
一つ目が、今100ポイント持っている状態で以下の選択を迫られる条件です(Gain frame)。
・80ポイントキープする。
・80%の割合で100ポイントキープできて20%の確率で全て失う。
二つ目が、今100ポイント持っている状態で以下の選択を迫られる条件です(Loss frame)。
・20ポイント失う。
・80%の確率で100ポイントキープか20%の確立で全て失う。
この二条件を作り、行動経済学的知見を利用した実験を行いました。
行動経済学的知見とは、Gain frameの時に、人間は失うのが怖く、安全な選択肢を選び、Loss frameの時に、人間は失う怖さに反してリスキーな行動を取るという傾向のことです。
この典型的な行動を示すかどうかを見ました。
この図は、不安感が高い人ほど行動経済学的知見の典型的行動をよく示すことを表しています。
つまり、不安が高いほどリスキーなギャンブル選択をしないということです。
不安感が高い人ほど保守的であることを示しています。
この時の脳活動が以下の図になります。
図の真ん中より少し左側の赤く光っているところが、典型的な行動をする人の脳領域です。
この部位は、偏桃体と呼ばれ、感情に関わる脳領域です。
特に、嫌悪などの負の感情に関わると言われています。
不安感が高い人ほど感情的になっていると解釈できます。
この図は、不安感が高いほどあまり活動しない脳領域です。
図の青く光っている部分です。
この領域は、前帯状回と呼ばれる領域です。
この領域は、葛藤状態の時によく活動する脳領域です。
つまり、選択肢に対して迷ったりする場合に活動します。
不安感が高いほど前帯状回の活動が低くなります。
不安感の高い方は、感情的に判断してあまり迷っていないのかもしれません。
この図は、脳のつながりを表したものです。
先ほどご説明した偏桃体と同じように活動する脳領域です。
赤く光っていますね。
この領域は前頭葉です。
前頭葉と言うと、意思決定に関わる脳領域です。
この図から、不安感の高い人ほど偏桃体と前頭葉のつながりが強いことがわかります。
つまり、決断をするときに感情に左右されやすいことを示しています。
この図も、脳のつながりを表したものです。
先ほどご説明した前帯状回と逆の活動を示す領域を表しています。
青く光っている部分です。
前頭葉の部分です。
つまり、前頭葉が活動すると前帯状回の活動が下がるという関係性。
意思決定をしているときに、前帯状回の活動が下がるので、あまり迷っていないことが伺えます。
これらの結果をまとめると、不安感の強い人の脳内メカニズムは、
・偏桃体↑
・前頭葉↑
・前帯状回↓
となります。
感情をつかさどる偏桃体が上がり、意思決定に関する前頭葉が上がり、葛藤状態を表す前帯状回が下がるという図式です。
結論として、不安感の強い人は、感情的になり、迷ったりすることなく保守的な選択を行うということです。
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③不安を抱かずに意思決定するには?
これまで、不安感の強い人は、保守的な決断をする傾向があることが示されました。
また、その脳内メカニズムとして、不安感の強い人は感情に流されやすいこともわかりました。
最後に、では、不安を抱かずにちゃんと物事を決断するにはどうしたらいいのか?
その具体的方法をご紹介します。
それを示したのが、Yip & Cote (2013)です。
彼らは、自分の感情を把握しているかという感情理解度の高さによって、不安にさらされても正確に意思決定ができることを示しました。
実験者参加者を、不安感をあおる条件とそうでない条件とに分けて、ギャンブル課題をさせました。
結果が以下の図です。
まず、上の図です。
縦軸がリスキーな行動をする割合。
左側が感情理解度が低い人です。
赤が不安感をあおる条件です。
図のように、感情理解度が低い人の場合、不安感を抱くと保守的になります。
逆に、感情理解度が高いと不安を抱いてもリスキーな行動をとるようになります。
次に、下の図です。
この図は、実験参加者に、「自分の感情とギャンブル行動とは関係ない」と言い聞かせた場合の図です。
つまり、感情への理解を促したのです。
すると、感情理解度が低い人でも、リスキーな行動をとるようになりました。
この結果は、今までの研究と整合的です。
不安感の強い人は感情的になり、保守的な行動を取ります。
だから、感情への理解を上げて、感情的にならないようにすると、普通の決断ができるようになったということです。
不安になってもちゃんとした行動をとる具体的な方法は、感情への理解度を上げること。
例えば、実験のように「感情と行動とは関係ない」と考えたり、不安感にさいなまれたら一旦冷静に自分の感情と向き合ってみたりすることが良いと思われます。
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④まとめ
まとめると以下のようになります。
- 不安感の強い人は保守的な決断をしやすい。
- 不安感の強い人の脳内メカニズムは、偏桃体と前頭葉の活動が上がり、前帯状回の活動が下がるという図式になります。
- 不安感の強い人は感情に流されて意思決定を行っている。
- 不安を抱いてもちゃんとした決断をするには、感情へ注意を向けて冷静に考え、感情理解度を上げること。
このように解説してきた私も実は不安感が強いタイプの人間です。
これらの研究は私のような人間には痛いほど分かります。
保守的になってチャレンジできなくなったり・・・。
しかし、これからは前向きに決断ができそうです。
そうした方が少しでも増えると幸いです。
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参考文献
Gambetti & Giusberi (2012). The effect of anger and anxiety traits on investment decisions. Journal of Economic Psychology, 33, 1059-1069.
Giorgetta et al. (2012). Reduced Risk-Taking Behavior as a Trait Feature of Anxiety. Emotion, Advance online publication. doi: 10.1037/a0029119.
Xu et al. (2013). Neural Basis of Emotional Decision Making in Trait Anxiety. Journal of Neuroscience, 33(47), 18641-18653.
Yip & Cote (2013). The Emotionally Intelligent Decision Maker: Emotion-Understanding Ability Reduces the Effect of Incidental Anxiety on Risk Taking. Psychological Science, 24(1), 48-55.
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