・注意散漫になりがちです。
・どうやったら集中力を高められますか?
勉強・仕事・趣味
いずれも集中力が必要とされます。
けれども、集中力を維持するのはとても難しいです。
自宅の外や周囲の環境は、集中力を阻害するものばかり。
そんな方のために、今回は心理学とADHDの精神医学の研究をもと集中力について考えます。
特に、集中力が続かない原因や要因、集中力を高める具体的な方法についてご紹介します。
この記事を機会に、集中力が維持できる環境を整えて目標達成を目指しましょう!
本記事では以下のことが学べます。
2. 集中力を阻害する要因
3. 集中力が切れるときの脳内メカニズム
4. 集中力を高める具体的な方法
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①集中力や注意力を阻害する二つの要因:ネガティブと他者との関連性
「集中力がない」
「集中力が続かない」
「注意散漫になる」
という悩みは誰もが抱えている。
その原因として、集中力を阻害する要因に触れている可能性があります。
その二つをご紹介します。
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集中力を阻害する要因1:ネガティブ刺激
一つ目は、ネガティブな刺激です。
つまり、嫌悪や不快など負の感情を抱かせるような要因に触れると集中力が途切れます。
Pratto & John (1991)は、実験参加者に色付きの形容詞が書かれた画面を見せて、その書かれている色を答える課題をさせました。
この課題はストループ課題と呼ばれるものです。
例えば、「あか」と「オレンジ」では、それぞれ「オレンジ」「あか」と答えるのが正解です。
この課題はかなり集中力を必要とします。
それゆえ、答える速さによって集中力が続いているかどうか見ました。
すると以下の結果になりました。
縦軸が、色を答える速さで、下に行くほど早いことを示します。
●がネガティブな形容詞が書かれている場合
〇がポジティブな形容詞(幸せやおいしいなど)が書かれている場合です。
すると図のように、ネガティブな形容詞はポジティブな形容詞よりも答える速度が遅くなっています。
つまり、集中力が途切れていること示しています。
人間は危険察知のためにネガティブな情報を重視します。
なので、ネガティブな形容詞だと集中力が刺激の方にもっていかれるのです。
例えば、カフェで勉強や読書をしている時に、隣のカップルが別れ話をしていたら勉強や読書に集中できないという経験はありませんか?
どうしても、別れ話の方に耳を傾けてしまいます。
他にも、隣の人が悪口を言っていたり、誰かを批判していたりすると気になりませんか?
そういう意味で、ネガティブ情報は集中力を阻害します。
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集中力を阻害する要因2:他者と関わる刺激
他者と関わる刺激というと少し抽象的ですが、論文では、「頭がいい」とか「アグレッシブ」などが挙げられています。
例えば、「誠実な」とか「憂鬱な」という言葉は、自分だけで完結します。
「誰がどうだ」という比較対象が存在しません。
一方、「頭がいい」だと「誰と比べて」とか「どう頭がいいのか」という他との比較が必要になります。
他者と関わる「頭がいい」というような刺激が、集中力を阻害するというのです。
Wentura et al. (2000)は、先ほどのストループ課題と同様の課題をさせました。
もちろん、形容詞には他者と関わる「頭がいい」というような形容詞と他者と関わらない「誠実だ」というような形容詞とを使用しています。
すると結果は以下のようになりました。
この図の、Color-naming timeが答える速さを示しています。
Other-relevantが他者と関わる形容詞。
Possessor-relevantが自分で完結する形容詞です。
すると、他者が関わる形容詞の方が自分で完結する形容詞よりも、答えるのが遅い傾向にあります。
つまり、他者が関わる刺激は集中力を切らせるのです。
例えば、若い方ですと、喫茶店で隣の人が、「最近の若いやつは・・・」と言っているのを聞くと、自分の作業に集中できなかったりします。
自分に関係しているからです。
「自分と関係するかも」という疑念が集中力や注意力を阻害します。
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②集中力が続かない時の脳内メカニズム:ADHDの症例と合わせて
では、集中力が続かないとき脳内でどのようなことが起きているのでしょうか?
そのメカニズムや原理を知れば、集中力を高める方法もわかるかもしれません。
その前に、ADHDとは何でしょうか?
ADHDとは「注意欠陥多動性障害」のことを指す発達障害です。
主な症状として、忘れ物が多かったり友達との約束を忘れたりする注意力の欠陥。
勉強をしていても、すぐに別のことに注意が向いてしまう集中力の欠如。
学校で勉強時間にも関わらず、歩いたりしていないと気が済まないという多動性。
これらの症状がある精神医学的な障害です。
まだ根治する治療法がないことで知られています。
そして、脳科学(神経科学)の世界では、ADHDの方と健常者とを見比べることで集中力の研究が進められています。
Lenartowicz et al. (2014)は、健常者とADHDの方に、ワーキングメモリ課題をさせました。
ワーキングメモリとは、ある数字や物などを一旦頭の中に置いて覚えておくという記憶のことです。
以前「脳トレや頭の体操で頭は良くなるのか?脳トレの認知機能向上についてのまとめ」の記事でワーキングメモリのことについて詳しく触れていますので、あわせて読んでいただけると幸いです。
今回のワーキングメモリ課題は、図形の配置を覚える課題です。
図形の配置が一定時間呈示されて、その後に提示された位置がさっきと同じかどうかを判断します。
Lenartowicz et al. (2014)は、課題に集中できているのかどうかを課題が始まる前の脳活動を測定することで研究しました。
すると以下のようになりました。
青が健常者
赤がADHDの方の脳活動です。
すると、P2のところで青の方が赤よりも活動量が高いことが示されています。
つまり、課題が始まる前に、ADHDの方は集中力が健常者の方よりも続いていないことになります。
そして、この活動は、左上にあります前頭葉の領域です。
前頭葉は集中力にも関わっています。
Bonnelle et al. (2011)もADHDと健常者の脳活動を集中力が持続しないトラウマを抱えた方とを見比べて脳内メカニズムの解明を行いました。
彼らは、ある刺激(矢印)が出た時はそれに合わせたキーを押すという課題を行わせました。
何度も行い、どれくらい早くキー押しができるかを見て集中力が続いているのかを確かめました。
すると、時間が経つにつれてキー押しが遅くなります。
しかも、トラウマの方の方がキー押しが遅くなります。
その時の脳活動がこちらです。
上の二つがキー押しの脳活動です。
脳の前の方である前頭葉が関係しています。
図の下の二つは、休憩時の脳活動です。
集中力が切れている時は、休憩時にも後ろの方の頭頂葉が活動しています。
つまり、集中力を要する時には前頭葉が活性化。
集中力を要しない時は、頭頂葉が活性化します。
もう少し踏み込むと、集中力が続いている時は、前頭葉が活動し、頭頂葉が休んでいないといけません。
トラウマの方は、集中時の頭頂葉の活動が高まっているという結果が出ています。
つまり、トラウマの方は集中力が続かず、その時に頭頂葉がより活性化してしまっています。
本来休まないといけない脳領域である頭頂葉が活性化しているのです。
このことから、集中力が持続する時には脳活動が
①前頭葉が↑
②頭頂葉が↓
という関係性が脳内メカニズムとして重要だということ。
集中力が続かない人は、「前頭葉の活動が低い」か「頭頂葉の活動が高い」かあるいは「両方」かのどれかに当てはまります。
逆に、集中力を高める方法としては、「前頭葉の活動を上げる」か「頭頂葉の活動を下げる」か「両方」のどれかを実施すればいいわけです。
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③集中力を高める具体的な方法:マインドフルネスの応用
最後に、どのように集中力を高めるのかについて考えます。
集中力を高める方法については実はあまり研究が進んでいません。
その中でも、科学的に効果的なのがマインドフルネスの応用です。
マインドフルネスについては「マインドフルネスとは?科学から見るその効果と副作用」の記事に詳しくまとめていますので、是非お読みください。
ここでは、実際の研究で使われた方法をご紹介します。
Maclean et al. (2010)は、マインドフルネスを行った実験参加者とそうでない参加者に分けて、集中力をテストしました。
マインドフルネスではどのようなことを行ったのでしょうか?
例えば、自分が呼吸する時に呼吸している器官に意識を集中させたり、自分の注意を受けた刺激の他の部分に当てるなどのように、注意や集中力をコントロールする方法です。
これを、マインドフルネス群では、一日に2時間程度行わせます。
すると集中力を要する課題をさせたときの成績がこちらです。
縦軸は、下に行くほど集中力が高まっていることを示します。
横軸は、pretrainingがマインドフルネス群がマインドフルネスを開始する前。
それ以外がマインドフルネス群がマインドフルネスをした後です。
黒い棒グラフがマインドフルネス群です。
ねずみ色の棒グラフがそうでない方の群です。
すると、図から、マインドフルネスをした方が、明らかに集中力が高まっています。
さらに、課題を行っている4分間の時系列でみてもその差は歴然です。
縦軸は、上に行くほど集中力が高まっていることを示します。
横軸は一分ごとの集中力課題の成績。
▲がマインドフルネスをしていない群です。
明らかに、他の群よりも、最後の一分で集中力が続かずに成績が落ちていることがわかります。
この研究から、マインドフルネスは集中力を高めるために有効な方法であることがわかります。
では、なぜ有効なのか?
前回の記事「マインドフルネスとは?科学から見るその効果と副作用」でも触れていますが、マインドフルネスは前頭葉の活動に効果的です。
また、先ほどご説明したように、マインドフルネスには注意や集中力を鍛える要素が入っています。
これら二つの理由から、マインドフルネスは集中力の向上に有効だと言えます。
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④まとめ
以上が集中力が続かない原因と集中力を高めるための具体的方法です。
まとめると
- ネガティブな刺激と他者に関わる刺激は集中力を切らせる。
- 集中力が続いている時の脳活動は、前頭葉が活性化し、頭頂葉の活動が低下する。
- 今のところ科学的に有効な集中力を高める方法は、マインドフルネスのみ。
現在は、マインドフルネスのみが集中力を高めるのに有効ですが、脳内メカニズムを理解していれば、自分流の集中力の高め方も発見できるかもしれません。
マインドフルネスの効果は、一日2時間を何か月もしないといけないので、たいへんです。
この記事が集中力に悩む方の一助になれば幸いです。
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参考文献
Bonnelle et al. (2011). Default Mode Network Connectivity Predicts Sustained Attention Deficits after Traumatic Brain Injury. Journal of Neuroscience, 31(38), 13442-13451.
Lenartowicz et al. (2014). Electroencephalography Correlates of Spatial Working Memory Deficits in Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder: Vigilance, Encoding, and Maintenance. Journal of Neuroscience, 34(4), 1171-1182.
MacLean et al. (2010). Intensive Meditation Training Improves Perceptual Discrimination and Sustained Attention. Psychological Science, 21(6), 829-839.
Pratto & John (1991). Automatic Vigilance: The Attention-Grabbing Power of Negative Social Information. Journal of Personality and Social Psychology, 61(3), 380-391.
Wentura et al. (2000). Automatic Vigilance: The Attention-Grabbing Power of Approach- and Avoidance=Related Social Information. Journal of Personality and Social Psychology, 78(6), 1024-1037.
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