心理学・脳科学/Psychology・Neuroscience 記事/Article

脳トレや頭の体操で頭は良くなるのか?脳トレの認知機能向上についてのまとめ

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・脳トレで頭は良くなるのか?

・右脳を鍛えればいいんだっけ?

・頭の良い子供に育ってほしいな

結構前に、脳トレがブームになりました。

現在もそのブームは続いています。

巷では、脳トレの本で溢れています。

他にも、認知症予防のために高齢者がこぞって脳トレをしたり、今では無料アプリで脳トレが誰でもできたりする。

有名な心理学者が『頭の体操』という本を出したほどです。

しかし、問題なのが、果たして脳トレや頭の体操が本当に我々の頭を良くするのか?

あるいは、

何かの認知機能が脳トレや頭の体操によって向上するのか?

ということ。

以前の記事「血液型性格診断・脳トレ・アドラー心理学の事実」でこのことについて言及しました。

そこでは、結局脳トレでは頭は良くならないし、脳トレで鍛えた機能以外の認知機能の向上には結びつかないと結論づけました。

この記事で参照した研究はかなり信頼性も高いですが、問題が一つだけあります。

それは、一つの研究でしか示せていないことです。

脳トレ問題については、古くから膨大な議論があり、それらをまとめて分析した研究を参照して結論を出す方が良いかと思い、今回記事を書きました。

なので、本記事は前の続きかつ脳トレ問題を深めるものです。

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①脳トレで見ているのはワーキングメモリ(作動記憶: working memory)

脳トレ問題でまず頭に置いておきたいのは、脳トレで測定している能力のことです。

これはどの研究でも一貫していて、ワーキングメモリ(作動記憶: working memory)と呼ばれる記憶能力です。

ワーキングメモリを簡単に説明すると、今誰かが「1」「5」「8」と言ったとします。

それを記憶して一定時間が経った後に順番通り「1」「5」「8」と言える記憶能力のことを指すします(これを専門用語で「digit span」と呼ぶ)。

記憶すべきものを頭の中に置いておいて、必要な時に出す能力とでもいえます。

これが狭義のワーキングメモリの定義ですが、広義のワーキングメモリは、頭に置いておいた記憶を操作したり、過去の記憶と結びつけたりなど多様な用途に使えるようにするという意味も含まれます。

操作の例では、例えば「1」「5」「8」の順番を逆にしてそらんじられるかどうかです。

このように、ワーキングメモリは記憶の基軸となる能力です。

過去の研究では、ワーキングメモリをトレーニングすればこの能力を伸ばすことができるという研究結果が出ています

では、脳トレ問題はいったい何が問題なのか?

それは、ワーキングメモリを鍛えて、例えばIQテストや注意力を必要とする課題など記憶以外の他の認知機能や一般的な頭の良さが向上するのかという点です。

前の記事でも紹介した研究は、言語的なワーキングメモリのトレーニングをしても、図形の配置などのような空間的・図形的なワーキングメモリの能力は向上しないことを示したものです。

これが心理学と神経科学(脳科学)では大問題となっています。

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②脳トレで頭が良くなるのか?

脳トレ問題がいかなる問題なのかがはっきりしたところで、脳トレがIQなどの一般的な頭の良さを測るテストの向上につながるのかを検討します。

過去の研究をまとめて分析し直すメタ分析を行ったAu et al. (2015)によると、論理推論能力を測るGf(General fluid)かなり小さいが脳トレによって向上しうることを主張しています。

ちなみに、メタ分析の詳しい記事はこちらです。「メタ分析とは何か?心理学論文から見るメタ分析の方法と限界

この図のように、微妙ですが、脳トレは一般的な頭の良さの向上につながるらしい

しかし、ここで注意が必要なのが、彼らの研究でも使用されている頭の良さを測るGfという指標は、ワーキングメモリの概念を含んでいるということです。

つまり、GFの一部がワーキングメモリだということ。

だから、ワーキングメモリを向上させる脳トレをすれば、Gfが向上するのは当たり前のことで、一般的な頭の良さが向上したわけではない。

ゆえに、脳トレで頭が良くなるとはこの研究では言えないのです。

テトリスをやるとテトリスがやたらと上手くなるみたいに、脳トレで鍛えた能力が向上しただけなのです。

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③脳トレが他の能力に波及するかどうかを調べた研究

最後に、脳トレが他の認知能力にも効果が波及するかどうかを調べた研究をご紹介します。

それが、Gathercole et al. (2019)の研究である。

彼らは、なぜワーキングメモリを鍛えても他の認知機能が向上しないのかについて仮説を立てました。

それが、ワーキングメモリのトレーニングは、全体的に能力が向上するのではなく、似ているが少し新しい課題の場合にのみ波及効果が見られるというものです。

彼らも、同じようにメタ分析を利用して、脳トレ(ワーキングメモリトレーニング)が他の認知機能にも効果的かどうかを調べました。

結果として、彼らの仮説を立証するものでしたが、かなり微妙だと言わざるをえないです。

良い図がないので、言葉での説明となりますが、彼らの出した効果量は小さく、結論としても微妙な状態です

ただし、部分的に彼らの仮説を支持したということです。

彼らの研究から、脳トレはやはり脳トレで鍛えた認知能力かあるいは若干派生した認知能力しか向上させないということが結論できます。

以上より、脳トレは、頭を良くするわけではなく、脳トレで鍛えたことしか向上しないということです。

最近では、無料アプリで脳トレや頭のトレーニングができますが、無駄とは言わないまでも、あまり効果は期待できないでしょう。

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参考文献

Au et al. (2015). Improving fluid intelligence with training on working memory: a meta-analysis. Psychon Bull Rev, 22, 366-377.

Gathercole et al. (2019). Working memory training involves learning new skills. Journal of Memory and Language, 105, 19-42.

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