- 目次
- ①はじめに
- ②具体的提言①顧客の声を拾うことで既存の失敗を成功へと導く。
- ③具体的提言②既存製品やサービスを別の視点から見直すことで新たな価値を創造する。
- ④具体的提言③生産性向上やイノベーションに繋がる組織編成
- ⑤まとめと限界
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①はじめに
労働組合運動が劇と化している。
毎年春闘の時期になると労働組合側の賃金交渉が話題となり、数百円規模の賃金上昇に一喜一憂している姿をテレビのニュースを通して目にする。
労働運動を詳しく知らない一般市民からすると、「何をもって賃金交渉ができるのか?」「何の権言や理由があって交渉なんてできるのか?」、厳しい意見だと「どの口が賃金を上げろと言っているのか?」という言葉が飛び交う。
このような意見は、もちろん労働組合運動についての無知から生じる。
しかし、山垣(2001)1)が「企業内組合が、・・・合理化は企業基盤の強化になるとして、(経営者側に)むしろ協力するという立場をとっているのが現状」と述べているように、そもそも労働組合側の要求が受け入れられることが少ない現状では、あながち素人の意見も無下にはできない。
そもそも労働組合の主な役割は、日本労働組合総連合会のサイトによると、「職場環境や待遇などの改善」である。
確かに、労働環境改善の取り組みは多く行われているが、企業別労働組合が多い日本では、全社的に取り組みを行わない限り、これらの役割は果たせないのではないだろうか。
近年では、労働組合が期待されず、組合離れが叫ばれている。
特に、20代から30代の若者世代ではその傾向が顕著である。
つまり、労働組合のあり方自体を従来のあり方から変えなければならない。
上記の問題から言えるのは、労働組合の活動に「説得力がない」ことが原因として挙げられる。
ここでの「説得力のなさ」とは、何の業績も実力も専門性もない者が、社会を変革するのでお金の寄付を求める場合の意味合いとして近い。
つまり、賃金交渉をするにしても、労働組合側がそれ相応の生産性を上げ、会社に大きく貢献しているという事実が必要なのである。
日本の労働生産性は世界的にも低い。
そして、野田(1998)2)や林(2018)3)の研究によると、労働組合の存在は生産性や賃金の向上に結びつかないことが実証されている。
そのため、労働組合が様々な活動を行うためには、まず活動の土台となる労働組合の会社への貢献度を高めなければならない。
人手不足とはいえ、一斉にストライキをすることは現実的ではなく、会社と共倒れに終わるだけである。
あるいは、別の人材への入れ替えが生じるだけで、不穏分子を排除でき、経営陣はそっと微笑むことになる。
会社への貢献度が低い組織に何を言われても経営陣が聞く耳を持たないのは当然である。
「辞めてもらっては事業が成り立たなくなり困る」という状況を作れるような労働組合にしないと、どんなに体の良い改革を行おうが徒労に終わる。
そこで、本論では、労働組合の地盤とも言える説得力を上げるための提案を行う。
具体的には、身近にできるイノベーションにより生産性を向上させ、会社への貢献度を上げるための三つの施策を提言する。
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②具体的提言①顧客の声を拾うことで既存の失敗を成功へと導く。
労働組合がコミュニティとして取り組めるイノベーション施策の一つが、顧客の声を拾い、そこから既存の製品やサービスを改善し、売上げを伸ばすことである。
多くの企業では、様々な製品やサービスに関するアンケートや感想を顧客に求める。
しかし、それらの顧客の声は時間をかけて顧客に負担を負わせた割には、活用されていないのが現状である。
顧客の声は、市場の大まかなニーズを把握するために使用されるが、徹底的に分析を行えば、イノベーションへの近道にもなる。
私は以前、大阪の町工場の勉強会に参加したことがある。
その勉強会で発表されていたのが、どんなネジをも外すことができる「ネジザウルス」という工具を開発し、ヒットさせた方の功績でした。
「ネジザウルス」に関しては、高崎(2015)4)が書籍の形で開発秘話からヒット商品に至るまでの経緯が記されている。
ネジザウルスは、その機能性の高さから「売れること間違いなし」と言われていたが、思うようには売上が伸びなかった。
そこで、売上につながる改良へと導いたのが、顧客の声である。
ネジザウルスを製造した会社では、一つ一つの製品に「実際にネジザウルスを使っていただいているお客様からの生の声」を聞くために「ご愛用カード」が同封されている。
ネジザウルスでは、「ご愛用カード」が1000通も届いたという。
その1000通もの「ご愛用カード」を従業員とともに、一通ずつ精読して、「新製品を開発するにあたって、お客様の声というヒントを手がかりに市場に潜在する不満やニーズを探り当て、それを顕在化させる」作業を行った。
この作業により、最も改善要望の高い5つの要因から、「担当者さんやお客さんから最も高く評価された」ものは、5つのうち最も数が少ない要望だった。
その要望こそ、潜在ニーズだと探り当てた開発者は、その要望に沿って改良を行い、「ネジザウルス」を大ヒットに導いた。
このように、顧客の声を集めて精査すれば、売れなかった既存製品やサービスをもイノベーションに導くことができる。
この話には実は続きがある。
私が勉強会で聞いたのは、「ご愛用カード」から導き出された要望とは別に、開発者が思う改善点を用意していたことである。
重要なのは、顧客の声から導き出された要望と開発者が思う改善点には、類似点もあるが、異なる点もあったことである。
その相違点が、先ほど潜在ニーズと呼んだ要望であり、開発者自身の見解を抑えて、顧客の声に基づいた改良を行ったところ、見事に「ネジザウルス」が大ヒットしたのである。
これは一事例であり、一般化するには注意が必要ではあるが、顧客の声に真摯に向き合うことと、顧客の要望と開発者の想定とが食い違うことがありうることが教訓として読み取れる。
後者の相違点は、どの企業でも起こりえることである。
実際、小林ら(2010)5)は、「失敗知識データベース」の事例分析を行い、技術者が通常想定すると思われる失敗要因である「変更」「改造」「疲労」「軽量化」「量産」「材料選定ミス」などのキーワードを含む事例は意外と少なく、代わって「溶接」「腐食」「疲労」「バルブ」「応力腐食割れ」などのキーワードを含む事例が圧倒的に多いことを示し、技術者の考える失敗要因と現実の失敗要因とでは大きな乖離があることが明確となった。
この乖離は、新製品や新サービスの開発時に致命的となる。
他にも、顧客の声を拾うことの利点はある。
ヒッペル(1991)6)は、イノベーションが生じる場所は主にユーザーであることを複数の事例と数値で示している。
このユーザーが行うイノベーティブな改良を声として拾い、製品化やサービス化するのも顧客の声を聞くことで可能となる。
野中と勝見(2004)7)は、多くの日本企業でのイノベーション事例を通して、成功事例の多くは、顧客の声を拾い、顧客目線に徹底してこだわることで実現されることを主張している。
今や失敗学の古典とも呼ばれる戸部ら(2013)の『失敗の本質』8)では、日本軍が諜報や情報などの現場情報の軽視という点が敗因として強調されている。
現場軽視の発想は、ビジネスでは顧客の声の軽視とも言い換えられる。
過去の失敗の教訓に学び、顧客の声を分析することで、自社との相違点を理解し、潜在ニーズにアプローチすれば、比較的費用も少なくかつ人手を要することもなく、イノベーションを起すことができる。
このことによって、労働組合の生産性向上にもつながり、会社への貢献度を高めることになる。
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③具体的提言②既存製品やサービスを別の視点から見直すことで新たな価値を創造する。
イノベーションは全く何もないところから画期的な製品やサービスを作ることだけではない。
身近なものや企業の既存の商品やサービスに新たな意味づけを行うことで達成できるイノベーションもある。
それが、ベッテンコートとベッテンコート(2012)9)の提唱する「掌中のイノベーション」である。
彼らは、「順風満帆な時ですら、イノベーション投資は重荷になることがある。概して、成功率は低く、投資回収も確実ではない。たとえ回収できたとしても、短期間で済むことはまずない。まして現金が逼迫している時は、長期的な成功にイノベーションは欠かせないとわかっていても、正当化しづらい」と言及しており、現状への理解を示している。
そして、過去の取り組みや既存製品を過去と異なる新たな視点で改めて評価し直すことで、十分に新しいソリューションが生まれることを事例分析により示している。
さらに、「過去の企画や既存商品のなかにも、見過ごされてきた萌芽がある。環境や顧客ニーズは常に変化するものであり、それゆえ、過去と異なる視点であらためて評価し直すことで生まれる十分に新たなソリューション」として、「掌中のイノベーション」を定義している。
どの領域のビジネスであろうと、新しい市場を生み出すような新規開発を行うには多大な労力と費用がかかる。
それを労働組合員だけで達成するのは非現実的である。
私が「掌中のイノベーション」を重視するのには理由がある。
それは、新規開発が多くの企業で行われているのにも関わらず生産性の向上や利益につながっているとは言えない実態があるからである。
科学技術・学術政策研究所第1研究グループ(2019)10)は、「2015 年から2017 年までの3 年間に,従業者数10人以上の企業(一部の産業を除く)である対象母集団(505,917 社)において,38% の企業(194,197 社)がイノベーション活動(着手され,当該企業にとってのイノベーションに帰着することが意図されているあらゆる活動)を実行した。プロダクト・イノベーション(市場に導入した新しい又は改善した製品又はサービス)を実現した企業の割合は12%(62,879 社)であり,ビジネス・プロセス・イノベーション(自社内に導入した新しい又は改善したビジネス・プロセス)を実現した企業の割合は31%(155,275 社)であった。また,イノベーション(プロダクト・イノベーション又はビジネス・プロセス・イノベーション)を実現した企業の割合は34%(171,776 社)であった」と報告している。
つまり、日々改善は行われており、それに伴う新製品や新プロセスの導入も現に数多くの企業で行われている。
しかし、科学技術・学術政策研究所第1研究グループ(2019)10)の研究が示すほどには、実際にこれらの新規開発が生産性の増加に結びついている証拠はない。
私は、特許庁と日本生産性本部のデータを利用し、新規開発の指標として使用されている国際特許出願数と日本の労働生産性との推移を図1のように図示した。
特許庁「特許行政年次報告書2019年版」15)と日本生産性本部「OECD加盟国の労働生産性(1人当たり)」16)から著者作成
図1より、特許出願数と労働生産性との間には関係性があるとは言えない。
逆に、図2は特許出願数と労働生産性との散布図であるが、両者の指標の間には有意な非常に強い負の相関関係が見られた(r= -.094, p< .001)。
特許庁「特許行政年次報告書2019年版」15)と日本生産性本部「OECD加盟国の労働生産性(1人当たり)」16)から著者作成
つまり、毎年多くの新規開発が行われているが、それらの製品やサービスは実際の生産性に結びついていない。
むしろ、新規開発が労働生産性にマイナスに働きかけている可能性すらある。
せっかく行った新規開発投資を生かすうえでも、開発した製品やサービスだけではなく、既存の製品を見直して、現在の市場に合う意味づけを行うだけで新たな価値を創造することができる。
戸部ら(2013)8)は、組織学習の鉄則として「組織の行為と成果の間にギャップがあった場合には、既存の知識を疑い、新たな知識を獲得する側面」が必要だと強調し現状に合わせる柔軟さが求められると説いている。
イノベーションを起した事例でも、ベッテンコートら(2012)9)以外に、製品やサービスを見直すことによりヒットに結び付いた商品は数多い。
それゆえ、労働組合員による自社製品の見直し作業と市場に合わせた意味づけは、身近にできるイノベーションだと思われる。
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④具体的提言③生産性向上やイノベーションに繋がる組織編成
最後の提言は、前者①と②を完遂するためにも必要な改革である。労働組合の役割の一つとして、「職場環境の改善」が挙げられる。
労働組合がいくら経営者側に提案を行ったとしても、会社の経営自体が傾いていては、労働組合運動も徒労に終わり、経営者側と運命共同体の関係になる。
そのため、労働組合の意味が生じるのも、会社が成果を出し続けていて、ある程度安定しているときである。
また、これまで提言した生産性向上やイノベーションの促進方法の基盤としての組織が、整備されない状態では、私の提言はまさに砂上の楼閣となる。
労働組合として現実的であり、成果に結びつく運動の一つとして組織編成を行わねばならない。
実際に、イノベーションを起すには組織改革が不可欠であることを、ディッド, ベサント, パビット(2004)11)は述べている。
ディッドら(2004)11)の組織としての成功の定義は、「全体としてのイノベーション・プロセスが、持続的な成長に寄与することができるかどうか」である。
重要なのは、イノベーションをプロセスとして扱うこととそれゆえにマネジメントが可能だと述べている点である(デッィドら, 2004)11)。
彼らが重要視するのは、「各局面での効果的な成果の達成に貢献していると見なされるルーティン…を構築し組織の中に組み込んでいくことである。さらに、常に変化する環境に対応するためにルーティンをレビューし、改良し、場合によっては新しく適切なものと置き換えていくこと」である。
このルーティンをこなせる組織は、「学習する組織」であり、常に見直しを行い、その組織内で進行するプロセスを微調整するサイクルが上手く回る組織である。
では、このような組織編成を行うには、具体的に何をすればいいのか。
野中(2010)12)は、「50年以上の歴史があり、30年以上にわたって持続的に株価が概ね上昇トレンドにある日本企業」を「持続的成長企業」と定義しており、ディッドら(2004)11)と同様の見解を示している。
野中(2010)12)は、持続的成長企業が備える三つの組織能力として「実行・変革力」「知の創出力」「ビジョン共有力」を挙げている。
この三つの力を備えた組織にするべきなのである。
まず、「実行・変革力」とは「日々変化する現実に徹底して対応していく力」である実行力と「将来に向けた価値創造や自己革新にチャレンジする力」である変革力とに分けられる。
次に、「知の創出力」とは、部門や指示命令系統などの既存の組織の壁を越えた交流や年齢に関係なく発言の場が設けられるなどの「横断展開力」、職場内や上下間での信頼関係や気配りなど相互に感情的なコミュニケーションがとれる「意思疎通力」、そして、日常的な話し合いや情報交換の場があるなどの「知の交流力」の三つに分けられる。
最後に、「ビジョン共有力」とは、「組織が大事にしている価値観や方向性を背景・意味・文脈を含めて組織の隅々に浸透させる力」である。
まとめると、日々変化する現実に対処できる柔軟性を持ちながら、職場での知識や情報の交換とコミュニケーションが活発にかつ円滑に行われ、トップが掲げる方向性を理解し団結して進む組織だと言える。
この組織を実現するために、野中(2010)12)は、組織マネジメントの調整を提案している。
その内容は、「組織自体に動きが内在し(柔軟な組織構造・人材配置)、動きを生み出す場があり(場の構築)、動きが評価され(プロセスの評価)、組織を自在に動きまわる人が存在し(長期視点での人材採用・開発)、仕組みも動きに合わせて進化していく(制度の意味づけと進化)、ということ」である。
多くの課題を解決する必要はあるが、持続的成長企業としての組織編成が行われ、習慣化されると、ルーティンの構築が進み、柔軟性のある「学習する組織」となる。
また、この組織では、学習する過程で提言①と②の活動を同時に行うことができる。
全ての提言を実現するためにも、労働組合員だけでも「職場環境の改善」としてこのような組織を志すことで生産性向上やイノベーションの実現へと近づく。
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⑤まとめと限界
労働組合が説得力を持つために、現実的に行うことが可能な提言をした。
一つ目は、顧客の声を拾うことであり、現在行っているアンケート調査等の見直しや顧客からのヒアリングを行うことで実現することが可能である。
「ネジザウルス」は顧客の声を製品改良に反映させた成功例の一つであるが、企業側の考えるニーズと顧客が考えるニーズとの間に乖離があるため、顧客の声を重視することでこれからの開発が有益なものとなりうる。
二つ目は、既存製品やサービスの見直しにより、新たな価値づけを行い、「掌中のイノベーション」を達成することである。
一つ目と少し内容が重なるが、既存の製品やサービスと失敗作を当時とは異なる観点から評価し直し、現状のニーズに合わせることで生産性や利益の向上に直結する活動を行うことができる。
現在までの統計的資料から、企業の新規開発は生産性向上などの利益を生み出しているとは到底思えない。
ニーズの把握には、一つ目の顧客の声を基本にすることもできるが、市場分析とモニタリングやヒアリングを駆使して把握する。
刻々と変化するニーズに対応するためにもこの手法は有効である。
三つ目は、これら二つの提言を実現するためにも、「学習する組織」として柔軟性があり、イノベーションのルーティンを確立する組織編成を行うことである。
個々のイノベーション施策は、施策を持続的に行える組織があってこそ機能する。
そのために、労働組合が率先して組織編成に臨むのはイノベーション施策への良い契機となる。
上記の三つの提言がこれからの労働組合が社会をよくするために取り組むべき最低限のことだと私は考える。
しかし、このような活動を行う労働組合は組織として意味があるのだろうか。
眞野と佐藤(1983)13)は、北海道に本社を持つ企業で50名以上の組合員を持つ代表的企業の500社を選び、118社から回答を得て、108社について分析を行ったところ、労働組合が経営者側の考えを伝えて組合員の協力を求める場や生産性向上のための研究協議の場となると企業業績の上でも必ずしも望ましい結果を生み出さないということを示している。
つまり、労働組合を単なるイノベーション組織としてしまうと会社に貢献し得ないということである。
眞野ら(1983)13)の研究は一定の妥当性があるものの、本提言とは相いれない。
というのも、本提言は、労働組合が組合側の主張を通すために、会社への貢献度を高める提言であり、労働組合を生産性向上のためだけの組織にするべきだとは私は考えていないからである。
イノベーションや生産性向上の施策とは別に、経営者側との労働争議を行うべきだと私は考えている。
それゆえ、労働組合を単一の生産性向上組織やイノベーション組織として考える眞野ら(1983)13)の批判は当てはまらない。
しかし、この場合、残業の問題が生じる。
確かに、私の提言だと、日常業務を行う中で、さらに生産性の向上やイノベーションのための活動を行うことになる。
しかし、これらの提言は、企業が持続的に成長するための必要条件であり、当然行われることである。
むしろ、現在の利益や生産性の向上に結びついていない業務を減らす機会にもなる。
また、提言内容は、比較的費用もかからず、すぐに取り組めるため、時間も労力もあまりかからない。
普段の労働組合活動に少し業務が増える程度の問題であり、反対されるほど問題視されるべき点ではない。
私の提言を行い、説得力を持てば、労働組合活動自体にも好影響を及ぼす。
無駄な活動をしなくても済むという点では、むしろ必要な提言であると思われる。
本提言は、労働組合活動の形骸化を解消するとともに、梅崎と田口(2018)14)が調査した労働組合活動の課題解決にもつながる。
梅崎ら(2018)14)は、17の中小労働組合と13の産別組織に聞き取り調査を行い、「組合員の減少」「経営業績悪化と雇用不安の高まりによる離職者の増加」「労使関係制度に関する経営側, 管理職の関心の低下」「経営業績悪化による雇用不安の増大」という労働組合の課題を明らかにした。
本論の提言では、労働組合による生産性の向上と労働組合の発言権の向上を目的とするため、「組合員の減少」以外の項目への解決につながる。
他方、「組合員の減少」に関しても、影響力のある労働組合になり、加入することのメリットが明確になれば、解決しうる課題である。
私の提言は労働組合が現在直面する課題の克服にもなるのである。
以上より、本提言の実現は労働組合の活動を円滑に行うための必須条件となり、労働環境だけではなく、会社自体の生産性や賃金の向上等にもつながる。
労働者の処遇改善という労働組合の原点に直結する提言だと思われる。本提言が、少しでも社会に貢献できれば幸いである。
心理学・神経科学(脳科学)・精神医学の発展のために寄付をお願いいたします。
Please donate for the development of Psychology, Neuroscience, and Psychiatry
参考文献
1) 山垣 真浩(2001) 日本型《労働組合主義》労組の経営参加とその限界. 社会政策学会誌, 5(0), 199-218.
2) 野田 知彦(1998) 労働組合と生産性--上場企業のパネルデ-タを用いた分析 桃山学院大学経済経営論集, 40(1), 145-163.
3) 林 嶺那(2019)公共部門労働組合が有する賃金と雇用量への効果 : 一般市データを用いた実証分析. 行政社会論集, 32(2), 61-91.
4) 高橋 充弘(2015)『「ネジザウルス」の逆襲 類型250万丁の大ヒット工具は、なぜ売れ続けるのか』日本実業出版社
5) 小林 正樹, 余頃 祐介, & 菊池 俊一. (2010). 企業の技術者は「失敗」に何を学ぶべきか―’失敗知識データベース’の事例分析結果―. 工学・工業教育研究講演会講演論文集 平成22年度, 64-65.
6) E・フォン・ヒッペル(1991)『イノベーションの源泉―真のイノベーターはだれか―』ダイヤモンド社
7) 野中 郁次郎, 勝見 明(2004)『イノベーションの本質』日経BP社
8) 戸部 良一, 寺本 義也, 鎌田 伸一, 杉之尾 孝生, 村井 友秀, 野中 郁次郎(2013)『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』中央公論社
9) L・Aベッテンコート, S・L・ベッテンコート(2012). 過去の失敗にも技術やアイデアの種がある 低予算イノベーションのすすめ. Harvard business review 37(8), 54-63.
10) 科学技術・学術政策研究所第1研究グループ(2019)全国イノベーション調査 2018年調査統計報告. NISTEP REPORT, 182.
11) ジョー・ティッド, ジョン・ベサント, キース・パビット(2004)『イノベーションの経営学―技術・市場・組織の統合的マネジメント―』NTT出版株式会社
12) 野中 郁次郎 監修(2010)『日本の持続的成長企業』東洋経済新報社
13) 眞野 脩, 佐藤 芳彰(1983)労働組合の参加形態と企業成長 : 実態分析(産業技術の新展開と経営管理の課題). 経榮學論集, 53, 149-158.
14) 梅崎 治, 田口 和雄(2018). 中小労働組合運動における企業別労働組合・産別組織の関係―ユニオン・リーダーの聞き取り調査から―. 日本労務学会誌, 19(1), 43-57.
15) 特許庁「特許行政年次報告書2019年版」
16) 日本生産性本部「OECD加盟国の労働生産性(1人当たり)」
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