・外国人はリアクションが大げさなのはなぜ?
・そもそも日本人と外国人では感情の捉え方が違うのか?
外国の方と接していると彼らの表情や表現が豊かなことに驚かされます。
顔の表情が明確で、リアクションも大げさなので、外国人の感情は読み取りやすいです。
しかし、日本人はそれに比べて感情表現が苦手です。
相手が何を考えているのか、表情やリアクションだけでは読めないことが多いです。
では、そもそも外国人(特に西洋人)は、感情表現が心理学的にも豊かなのか?
今回は、西洋人と東洋人の感情を比べた文化心理学の研究を紹介します。
本記事では以下のことが学べます。
1. 西洋人と東洋人では感情表現が異なること。
2. 特に、個人主義の傾向の強さが感情表現の豊かさと関係する!?
3. 西洋人と東洋人では感情の読み取り能力に違いがあること。
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①西洋人と東洋人では感情表現の豊かさが違う!個人主義と集団主義の違い。
西洋人の方が東洋人よりも表情が豊かな証拠
日本人の我々からすると西洋文化圏の外国人は、感情表現が豊かに見えます。
この西洋と東洋との感情に対する違いは結構古くから研究があります。
その中で、西洋人と東洋人で表情の違いを調査したわかりやすい研究が、Hughston et al. (2021)です。
彼らはYouTubeの動画に出ていている顔の動画をたくさん分析し、西洋人と東洋人でどのような表情の違いが生じるのかをグラフ化しています。
すると、結果は以下のようになりました。
この図は、感情とそれに伴う表情の動きを可視化したものです。
左から、Contempt(軽蔑)、Anger(怒り)、Disgust(嫌悪)です。
また、一番上が北アメリカ人で、真中がペルシア人、下がフィリピン人です。
赤く色づいているのが、顔のパーツでよく動く部分です。
すると、上の北アメリカ人(西洋人)では、表情毎に動く顔のパーツがバラバラなのがわかりますが、下のフィリピン人(東洋人)は表情毎であまり顔のパーツに変化がないように見えます。
なので、感情によって顔のパーツがよく動いてはっきりと表情が違う西洋人の方が、感情表現が豊かなのがこの図から見てわかります。
250以上のYouTube動画の分析であり、無理に表情を作っているものに限定しているわけでもなさそうですので、自然な表情の文化的違いを反映していると思われます。
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なぜ西洋人と東洋人で表情の豊かさに差があるのか?
このように西洋人と東洋人とでは感情表現の豊かさに差があります。
特に、西洋人の方が表情は豊かです。
では、なぜ感情表現の豊かさに違いがあるのでしょうか?
その手掛かりになりそうな研究が、Matsumoto et al. (2008)の研究です。
彼らは32か国、5000以上の人のサンプルを集めて、感情表現を公的な場やプライベートでどれくらい出すかを質問紙調査しています。
また、「集団よりも自分の自己実現が大事」などのような個人主義傾向との関連性を分析しました。
すると、国ごとの感情表現と個人主義傾向の関係性として以下の図のようになりました。
縦軸は、感情表現をどれくらいするかを示しており、上に行くほど感情表現が豊かだと答えている国です。
横軸は、個人主義傾向で、右に行くほど個人主義傾向が高いことを示します。
すると、なんとなく右上に上がっていく感じがあります。
実際に分析した結果、個人主義傾向が強い国ほど感情表現が豊かだという関係性が見られました。
一般的に、西洋文化圏では個人主義傾向が強く、東洋文化圏では「自分より集団や他人との絆を重視する」集団主義傾向が強いです。
すると、感情表現が豊かなアメリカ人などの西洋人は、個人主義傾向が強く、表情も豊かになると思われます。
このように、感情の豊かさは個人主義傾向と関わっていそうです。
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②西洋人と東洋人では感情の読み取り能力に差がある⁉個人主義と集団主義。
感情表現だけではなく、相手の感情の読み取り能力にも西洋と東洋の文化差があると心理学では示されています。
Stanley et al. (2013)はアメリカ人と中国人を対象に、様々な顔写真から表情を読み取らせる実験をしました。
その時に、視線を計測して、顔のどこを見ているのかも探っています。
すると、アメリカ人の方が中国人よりも感情の読み取り成績が良いという結果になりました。
なので、西洋人の方が東洋人よりも表情から感情を読み取る能力が高そうです。
では、視線を計測してどのような文化差が出たのか?
それを示すのが、以下の図です。
左側がアメリカ人の視線で、右側が中国人の視線を示しています。
白い線で示されているのが、視線の動きです。
なんとなくですが、アメリカ人は顔のパーツごとに細かく見ていて、中国人は顔を含めて広い範囲を全体的に見ている傾向がある気がします。
実際に、視線に差があると示したのが以下の図です。
縦軸は、ターゲットとなる一つだけ表情の違う顔を、他の同じ表情の顔よりもどれくらい見ているかを示しています。
横軸は、ターゲットとなる表情で、それぞれAnger(怒り)、Disgust(嫌悪)、Fear(恐れ)、Happy(嬉しさ)、Sad(悲しさ)、Surprise(驚き)の場合を表しています。
白がアメリカ人で、ねずみ色が中国人です。
すると、怒り・嬉しさ・驚きの三つでアメリカ人の方が中国人よりもターゲットとなる顔写真をよく見ています。
また、以下の図は、一度ターゲットとなった顔写真から目線を離して別の写真を見比べる回数を調べた結果になります。
すると、恐れ・嬉しさ・悲しさ・驚きの四つで、アメリカ人の方が中国人よりもより顔を見比べています。
この研究結果より、西洋であるアメリカ人の方が東洋である中国人よりも表情から感情を読み取るのが得意で、アメリカ人の方がより顔の細かいパーツを見ながら顔を認識していることが分かります。
表情の読み取りにまで分化差が関係している驚きの結果ですね。
では、なぜ西洋人と東洋人で感情の読み取り能力に差があるのか?
あまり良い研究ではないですが、表情を見せないように抑える傾向が強いと感情の読み取り能力が低くなることを示したものがあります(Sun & Lau, 2018)。
つまり、東洋人は表情を抑制する文化圏であるため、感情の読み取り能力も低い可能性があり、西洋人よりも感情を読み取るのが苦手なのかもしれません。
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③まとめ
以上より、感情表現と感情の読み取りの文化差について見てきました。
まとめると以下のようになります。
- アメリカなどの西洋人は中国などの東洋人よりも表情や感情表現が豊か。
- 個人主義傾向が高いと感情表現が豊かになる傾向があるので、西洋人の方が感情表現が豊かな可能性がある。
- 西洋人の方が東洋人よりも表情からの感情の読み取り能力が高い。
- 感情表現を抑えるほど感情の読み取り能力が低くなる傾向があるので、東洋人の方が表情からの感情の読み取りが苦手な可能性がある。
文化によって、感情表現が異なることが少しずつわかってきました。
しかし、個人主義傾向や感情を抑える傾向くらいで、まだまだわかっていることは少ないです。
感情表現が豊かだから別に正しいわけではなく、文化にあった表現ができると幸せに過ごせそうですね。
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参考文献
Hughston et al. (2021). Investigating the Role of Culture on Negative Emotion Expressions in the Wild. Frontiers in Integrative Neuroscience, 15, Article 699667.
Matsumoto et al. (2008). Mapping Expressive Differences Around the World: The Relationship Between Emotional Display and Individualism Versus Collectivism. Journal of Cross-Cultural Psychology, 39, 55-74.
Stanley et al. (2013). Cultural Differences in Gaze and Emotion Recognition: American Contrast More than Chinese. Emotion, 13(1), 36-46.
Sun & Lau. (2018). Exploring Cultural Differences in Expressive Suppression and Emotion Recognition. Journal of Cross-Cultural Psychology, 49(4), 664-672.
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