・世界のいろんな音楽を聞くだけで、世界のいろんな言語の習得につながるのか?
・音楽がどのように言語の脳領域に関係するのか?
たまに、洋楽を聞いて英語のリスニングができるようになったと言う人がいます。
私も英語の授業で、先生に「英語が聞き取りやすいから」と50分の授業のほとんどを洋楽の聞き取りに費やした授業がありました。
個人的には、あまりリスニング力が向上した覚えはありませんが、この「音楽を聞くと言語習得が促される」ことは本当なのでしょうか?
特に、英語が苦手な方は英語の音楽を聞けば、英語力は本当に身につくのでしょうか?
実は、心理学や脳の研究でも音楽が言語習得を促すかを調べた研究はあります。
その中で有名な研究をいくつかご紹介しながら、外国語の音楽が外国語言語の習得につながるかを考えます。
本記事では以下のことが学べます。

2. 音楽が外国語の言語習得力を上げるなら、どのような脳のメカニズムなのか?
3. 音楽が言語習得を促すのか?それとも、もともとの耳の能力で言語習得力が高いのか?
- もくじ
- ①音楽は、子どもの外国語言語の習得を促す!?
- ②9か月児の赤ちゃんでも音楽トレーニングによって外国語習得が促される?
- ③言語学習で重要な音の聞き分けは、もともとの耳の能力が高いからなのか?
- ④まとめ
- ⑤参考文献
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①音楽は、子どもの外国語言語の習得を促す!?
音楽と言葉の習得を脳の観点から調べた研究は少し前から出てきています。
Carpetirら(2016)は、英語圏の4~6歳の子どもを対象に、音楽トレーニングを受けさせる群とフランス語の訓練をさせる群に分けて、フランス語の語彙を聞き分けられるかを検証しました。
まず、音楽トレーニングでは何をしたのか?
それは、リズムや音の高低など基本的な音楽の要素を体や頭を使って遊ぶことです。
4~6歳の未就学児がメインなので、リズムに乗って遊んだりするのが音楽トレーニングになります。
一方、フランス語のトレーニングはでは何をしたのか?
それは、月曜日や火曜日のフランス語の言い方や身体の部位のフランス語の言い方、そして、動物のフランス語など、身近にあるものの名前を覚えたり、ゲームを通してフランス語でコミュニケーションしたりすることです。
各群のトレーニングは、一日一セッション一時間を二セッションし、それを四週間続けました。
その後、フランス語の単音と音の高低の聞き分けテストと映画を見せてその映画の内容をまとめて答えさせるテストをさせた時の脳波の結果が以下の図です。

縦軸は、脳波の反応の強さを示します。
強ければ強いほど、フランス語の聞き分けができていることを示します。
preがトレーニング前で、postがトレーニング後を表します。
左半分がフランス語トレーニング群で、右半分が音楽トレーニング群です。
すると、図のように、左半分のフランス語トレーニング群では、トレーニング前後で、フランス語の単音の聞き分けも音の高低の聞き分けもあまり変わりませんでした。
しかし、右半分の音楽トレーニング群では、トレーニング前より後で、フランス語の単音の聞き分けも音の高低の聞き分けも両方脳活動が上がり、反応が上がっています。
そのため、4~6歳の未就学児で、母国語をちゃんと学んでいな時期でも、音楽を聞くことで母国語ではない外国語の聞き分けができるようになる可能性があります。
しかし、単に外国語の単音を聞き分けるくらいなら、外国語習得が促されていると言えるのかはわかりません。
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②9か月児の赤ちゃんでも音楽トレーニングによって外国語習得が促される?
実は、もっと年齢をさかのぼって同じような研究をした人がいます。
それが、Zhao & Kuhl(2016)の研究です。
彼らは、9か月児の赤ちゃんに、三拍子のワルツを聞かせる音楽群と実験者と触れ合うコミュニケーション群(比較のためのコントロール群)に分けて、脳波を使い、音楽の効果と脳の関係を見ています。
すると、以下のような結果になりました。

トレーニング後のテストは、音の単音の聞き分けと、英語のスピーチでの単語の聞き分けです。
図Cをご覧ください。
これは音の高低の聞き分けテストの脳活動の結果です。
縦軸は脳活動の強さです。
左半分が側頭葉の言語理解に関する領域の活動で、右半分が前頭葉の言語発話に関する領域の活動を示しています。
すると、青と赤の音楽トレーニング群の方が、コントロール群と比べて脳活動が高くなっています。
トレーニング群の方が、より聞き分けができている可能性があります。
これは、スピーチでの単語の聞き分けテストでも同様の結果が出ています。
二つの研究結果を見てみると、音楽トレーニングをさせると、子どもの言語学習が促進される印象があります。
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③言語学習で重要な音の聞き分けは、もともとの耳の能力が高いからなのか?
実は、この二つの研究に少しだけ反論するような研究論文が出ています。
それが、Mankel & Bidelman(2018)の研究です。
彼らは、雑音、つまりノイズがある環境下での音の聞き分けと、ノイズがない音の聞き分けを平均年齢20歳の若者にさせています。
また、音楽をどれくらい聞いているかや音楽をしているのかなどを聞いて、音楽の耳の能力の高さを測り、耳の能力が高い群と低い群に分けて聞き分けテストを受けさせました。
すると、結果は以下の図のようになりました。

図Eは、ベースラインの音が聞こえているかを示します。
つまり、素の状態の耳の良さです。
縦軸は、脳波の活動の強さを示します。
ノイズのない(Clean)環境下では、耳の能力の高低で差はありません。
しかし、ノイズ(Noise)のある環境では、耳の能力が低い群で聞き分けテストの成績が落ちます。
一方、図Fは、メインの音が流れている時の音の聞き分け反応の速度を表します。
下に行くほど、早く反応し、上に行くほど遅く反応しています。
すると、ノイズがないクリーンな環境下では、耳の能力の高低で差はありませんでした。
しかし、ノイズがある環境下では、耳の能力が低い群で上がり、音への反応が遅くなっています。
このように、耳の能力が、実は言語習得や音の聞き分けには関係しているのではないかとこの研究では主張しているのです。
つまり、先ほどまで見てきた二つの研究は、主に音や単音の聞き分けテストがメインで使われた研究なので、耳の能力が結果に影響している可能性をこの研究が示したのです。
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④まとめ
以上より、音楽が外国語学習に関係するかをまとめると以下のようになります。
- 音の聞き分けや言葉の単音の聞き分けレベルでは、音楽トレーニングによって成績が向上する可能性がある。
- 将来的にどうかまではわからないが、音楽トレーニングが母国語以外の言葉の習得を促す可能性はある。
- しかし、聞き分ける耳の能力の高低で、結果は変わりうる可能性がある。
- そのため、音楽による言語学習の向上効果はまだ謎のまま。
今のところはこのような結論になると思います。
確かに、言葉の音の聞き分けは外国語学習では大事です。
日本人なら、英語のLとRの聞き分けが小さい頃からできれば、英語の上達も早くなるかもしれません。
音楽による言語学習の促進効果は可能性はありますが、研究が限定的で明確な回答が出せないのが今の現状たと思います。
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⑤参考文献
Carpentier, S. M., Moreno, S., & McIntosh, A. R. (2016). Short-term music training enhances complex, distributed neural communication during music and linguistic tasks. Journal of Cognitive Neuroscience, 28(10), 1603–1612.
Mankel & Bidelman. (2018). Inherent auditory skills rather than formal music training shape the neural encoding of speech. PNAS, 115 (51) 13129-13134.
Zhao & Kuhl. (2016). Musical intervention enhances infants’ neural processing of temporal structure in music and speech. PNAS, 113 (19) 5212-5217.
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