・先生と仲良くして意味はあるのか?
・先生と生徒の関係は大事なのか?
学校の先生とよくケンカする生徒はいますが、逆に学校の先生と仲の良い生徒もいます。
肌間では、学校の先生とケンカする生徒は不良や勉強が苦手な子が多く、逆に先生と仲の良い生徒は勉強ができてお利巧な子が多い印象です。
そもそも学校の先生との関係性が子どもの発達に影響するのか?
実は、勉強成績だけではなく、多方面に影響します。
今回は、心理学の実際の研究をもとに、そんな学校の先生と生徒の関係性が生徒にどのように影響するのかを紹介します。
本記事では以下のことが学べます。
2. 学校の先生との生徒の関係性が勉強の自信や没頭度に影響すること
3. 学校の先生と生徒の関係性にはどのような種類があるのか?
- 目次
- ①学校の先生と生徒の関係性が勉強成績を上げ下げする!?
- ②学校の先生と生徒の関係性が勉強の自信や勉強の没頭度にも影響する!?
- ③学校の先生と生徒の関係性はどのように発達していくのか?その種類はと知的能力との関係性
- ④まとめ
スポンサーリンク
①学校の先生と生徒の関係性が勉強成績を上げ下げする!?
学校の先生と生徒の関係性を調べた研究は結構古くからあります。
その中でも、Hamre & Pianta(2000)の研究は、幼稚園の先生との関係性が小学校や中学校の勉強成績まで影響することを調査しました。
幼稚園の先生に「生徒とどれくらい仲が良かったのか」「生徒とどれくらい仲が悪かったのか」をそれぞれアンケートを取り、生徒との関係性を調べています。
また、彼らは、勉強成績として数学と言語能力を取り上げ、小学校低学年時点・小学校高学年時点・中学校時点の三つの時期までの記録を分析しています。
先生と生徒の関係性が数学と言語能力にどう影響するのか?
結果をまとめると以下のようになりました。
1) 先生と仲が悪いほど、男女ともに小学校の低学年と高学年の両方で数学と言語能力の成績が悪い傾向
2) 特に男子は、先生と仲が悪いほど、中学での数学と言語能力の成績が悪い傾向
3) 男子の場合、先生との仲が悪いほど、小学校低学年と高学年の両方で知的能力が低い傾向
つまり、学校の先生に仲が悪いと評価された生徒は、学校の成績と知的能力全般が低い傾向にあるのです。
学校の先生との関係性によって、その先生が担当する勉強科目が好きになるかに影響します。
それを考慮すると、仲の悪い先生の教科は勉強したくなくなります。
肌間とあっている納得の結果ですね。
スポンサーリンク
②学校の先生と生徒の関係性が勉強の自信や勉強の没頭度にも影響する!?
学校の先生と生徒の関係性は、成績だけに影響するわけではありません。
Hughes (2011)の研究では、勉強の自信や没頭度などにも影響することが示されています。
彼女の研究では、小学二年生から四年生まで、勉強が真ん中より下の普通よりも勉強が苦手な子を対象に、追跡調査を行いました。
この時、学校の先生と子どもが、それぞれお互いの関係性をどう捉えているのかをアンケートで調査しています。
・学校の先生が生徒との関係をどうみているのか?
・生徒が学校の先生との関係をどう見ているのか?
・そして、それらが勉強の自信と没頭度にどう影響するのか?
結果をまとめると以下のようになりました。
1) 生徒が学校の先生と仲が良いと思うほど、「ここにいてもいいんだ」という所属意識が高く、数学と読解力の自信度が高い傾向
2) 学校の先生が生徒と仲が悪いと思うほど、生徒は勉強に没頭しなくなる傾向
つまり、生徒視点と先生視点の関係性の良し悪しが、生徒の勉強の態度に影響しうるのです。
たかが学校の先生ではなく、先生と仲良くできる生徒は勉強もできる傾向があります。
スポンサーリンク
③学校の先生と生徒の関係性はどのように発達していくのか?その種類はと知的能力との関係性
最後に、学校の先生と生徒の関係性を長期にわたって調べ、どのような変遷をたどるのかを調査した研究を紹介します。
Spiltら(2012)は、小学一年生から六年間、勉強が真ん中より下の普通よりも勉強が苦手な子を対象に、追跡調査を行いました。
この長期的な追跡調査を行うことで、先生と生徒との関係性がどのように変わっていくのか、その変遷を調べました。
また、その変遷過程がどのようにIQや態度の悪さに影響するのかも見ています。
まず、先生と生徒との仲の良さの関係性の変遷過程は以下のようになりました。
縦軸は、先生と生徒の仲の良さを表します。
上に行くほど先生と生徒は仲が良いです。
横軸は学年で、0が一年生で4が五年生の時点を示しています。
点線が女子で、傍線が男子です。
すると、男女とも主に二種類に分かれることがわかります。
一つ目は、最初は仲が良かったけど、だんだんと仲の良さが低くなっていくパターンです。
このパターンが、85%~90%の大半を占めます。
なので、お利巧さんタイプです。
他方、二つ目は、最初は仲がそれほど良くはなかったけど、だんだんと仲良くなるパターンです。
このパターンは、少数派になります。
最初は先生が嫌だったけど、後に先生を見直すパターンは、ヤンキーや不良タイプに多そうです。
男女で二つのパターンがありますが、このパターンでどのようにIQと態度の悪さに影響するのか?
その結果をまとめると以下のようになります。
1) 男女ともに最初は仲が良かったけど、だんだんと仲の良さが下がるパターンだともう一つのパターンに比べて、IQは高い傾向にある。
2) 男女ともに最初はそれほど仲は良くなかったけど、だんだんと仲が良くなるパターンだともう一つのパターンと比べて、学校生活での態度が悪い傾向にある。
生活態度の悪さとは、「他の生徒をたたく」など素行の悪さを示します。
先生との仲良さのパターンによって、IQと素行の悪さに影響するのは驚きです。
一方、先生との仲の悪さのパターンもあります。
こちらは少し複雑ですので、詳細は割愛しますが、一般的に先生との仲の悪さは学年通して一定か、だんだん増加する傾向です。
このような一般的なパターンだと、その他のパターンに比べてIQは良く、素行の悪さも少ない傾向にあります。
私が経験してきた学校の実態と合致していて面白いなと思いました。
スポンサーリンク
④まとめ
以上より、学校の先生と生徒の関係性が勉強や知的能力や行動に影響することがわかりました。
まとめると以下のようになります。
- 男女ともに学校の先生と仲が良いほど、勉強成績が良い傾向にある。
- 男女ともに学校の先生と仲が悪いほど、勉強の自信がなく、勉強に没頭できない傾向にある。
- 男女ともに学校の先生との関係性のパターンが、IQや素行の悪さに影響する。
お利巧さんタイプと不良タイプが明確に見えてきたのは個人的にはとても面白いと思います。
学校で先生との折り合いがつかずに悩まれる生徒は多いと思います。
これらの研究は、学校の先生も生徒も自分の状態を知るのに大事だと思います。
お互いの歩み寄りが促せるのでしたら、この記事を書いた意味もあります。
スポンサーリンク
参考文献
Hamre & Pianta (2001). Early teacher–child relationships and the trajectory of children's school outcomes through eighth grade. Child Development, 72(2), 625–638.
Hughes (2011). Longitudinal Effects of Teacher and Student Perceptions of Teacher-Student Relationship Qualities on Academic Adjustment. The Elementary School Journal,112(1), 38–60.
Spilt et al. (2012). Dynamics of Teacher-Student Relationships: Stability and Change across Elementary School and the Influence on Children’s Academic Success. Child Development, 83(4), 1180-1195.
スポンサーリンク