・占いや風水って効果あるの?
・昔の人の名残りでは?
科学技術が進歩したのに、工事現場や建築現場は占いや風水に頼っています。
着工前に行う儀式のようなものがまさに該当します。
テレビなどでは、「今日の運勢占い」とか「風水に基づく運気アップの方法」の話題で持ちきり。
全く根拠もないのに、私たちの生活(あるいは人生)が論理で説明できない何かによって動いているような印象を抱くときもある。
なぜなのだろうか?
このような儀式や占いなどに頼ってしまう人間の心理を描いたのが、エリアーデ『永遠回帰の神話―祖型と反復―』です。
実は本書は、有名な文学者である大江健三郎が好んだ書籍であり、『小説のたくらみ、知の楽しみ』で頻繁に引用しているほどです。
本記事では、エリアーデの『永遠回帰の神話―祖型と反復―』を紹介しつつ、上記の儀式や占いの疑問に答えたいと思います。
本記事では以下のことが学べます。
2. 未だに風水や占いに頼っている理由
3. 古代人の行動や神話が私たちの行動に影響していること
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①行為の原型である「祖型」が私たちの行動を左右する
エリアーデの主張を簡単にまとめると、我々の行為にはその原型となる神話のタイプがあり、それを繰り返し現代でも反復しているということ。
ではどういうことなのか?
エリアーデは、まず問題提起している。
われわれが古代人の一般的行動を観察する場合、次のような事実につきあたる。即ち、外界の事象も人間の行為も正しくいって何ら自律的本来的な価値を持たないということである。事象とか行為とかは、一つの様式、また他の様式に従って、それらを超越する実在とかかわりあうゆえに価値を獲得し、そのことによって真実なるものとなる、ということである。
人間の行為の問題に立ち戻ろう。―これらもまた、純粋に自律作用によって起こるものではない。行為の意義とか価値とかは、その生な肉体的データとかかわるものではなくて、原初の行為を再生し、神話的類例を反復するところの特性とかかわるものである。
エリアーデが挙げる例だと、無数の石の中で一つの石が「聖なる石」として崇められるには、その石が神話的な何かになぞらえる必要があるということ。
神話的に重要な位置にその石があるとか、英雄のような神話的に重要な人物が持っていたとか。
人間の行為に関しても同じで、例えば「食べる」という行為は「神との交わりの更新」をそのままなぞっただけだということ。
このように、何か人間を超越したものと関係しない限り、意味というのは生まれないというのがエリアーデの主張。
人間単体の行動にはそれ自体で重要な意味を持つのではなく、神や神話と同様の行動をすることでそこで語られる意味が付与される。
だから全ての事象や人間の行為には、神話的なモデルである祖型(アーキタイプ)が存在するという考え方を取る。
ここで、儀式や儀礼の疑問に戻ると、どのような儀式や儀礼においても神話的祖型(アーキタイプ)が存在して、それに沿って私たちはただ繰り返しているだけなのである。
アーキタイプに沿った行為を行うことで、神話から意味が付与されて、その行為や事象が有意味なものとなります。
人間の行動は、それ単体では単なる肉体の移動にすぎないが、アーキタイプに沿った行為であるため、「食べる」ということや「結婚する」ということの意味が見出されるというのです。
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②まとめ
エリアーデの言葉を使ってまとめると、
ある事物もしくは行為が真実なものとなるのは、ただその祖型を模倣するか、それを繰り返す限りにおいて、しかあるということだ。つまり、実在(リアリティ)とはただ反復もしくは分与を通して獲得される。模範的モデルを欠くものは何であれ「無意味」なこと、すなわちリアリティを欠くのである。
ということ。
ごく簡単にかいつまんで、エリアーデ『永遠回帰の神話―祖型と反復―』の核心部を述べました。
これだけでは、詳細は伝わりずらいですし、細かい神話的な話は割愛しています。
本当は、歴史について述べたり、神話の話で混沌と秩序の関係について述べたりしていて、興味深い論稿がまだまだあります。
また、人間の行為の神話的祖型の具体例なども今回は省いています。
緻密に論理が構築されており、面白い書籍だと思います。
最後に、儀式や占いの疑問を解消したいと思います。
エリアーデの話をまとめると、神話という祖型の反復により、我々の行動に意味づけがなされ、存在価値が与えられる。
儀式や占いの類も、アーキタイプの反復を表現したものである。
それゆえ意味がある。
今では安全祈願などのために行うことが多いですが、だいたいの儀式や占いには神話的裏付けがあるということです。
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