心理学によるタフな心の作り方

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2024/12/3

【心理学の実験結果】プレッシャー下で手厚いサポートの練習でタフになる(Youtube専門家対談企画スポーツ心理学与太話の第三十三回目)

・前回の心理学の実験結果を公開!あのサッカー漫画と似ている⁉ ・トップに君臨する伸びにくい選手でも、タフな心を育てるとパフォーマンスは伸びる! ・タフな心を作るには、適度なプレッシャーが必要! 現場に携わる専門家をお招きして、専門家同士が対談するYoutube専門家対談企画。 今回は、パーソナルトレーナーでスポーツ選手も指導される前田さんとスポーツ心理学についてお話します。 今回のトピックは、「タフな心の作り方」 日常のスポーツ解説でよく耳にするタフさやタフな心。 タフな心の意味と作り方をめ ...

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母親の話しかけの効果とと子どもの語彙力

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2024/12/1

【心理学の衝撃的な研究】空気を読めるお母さんの子どもは語彙力が高い(Youtube専門家対談企画子育ての心理学の第二十七回目)

・お母さんの言葉のバリエーションだけでははなく、言葉の質も子どもの語彙力に影響する。 ・言葉の質とは、文脈に適した言葉を言えるかどうか。 ・言葉の質が高いお母さんほど、子どもの語彙力が高い傾向があり、幼稚園生になるまで影響する! 現場に携わる専門家をお招きして、専門家同士が対談するYoutube専門家対談企画。 今回は、保育歴7年で「親子の愛情構築専門家」保育士ライターのゆうさんと子育ての心理学についてお話します。 トピックは、「赤ちゃんの言葉の語彙力」です。 赤ちゃんの語彙力の心理学シリーズの第二弾とし ...

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心理学・脳科学/Psychology・Neuroscience 記事/Article

2024/11/30

お母さんの言葉数が多くても子どもの語彙力は増えない⁉【心理学の事実】

・子どもの語彙力を高めたい。 ・子どもの語彙力を高めるために親にできることはあるのか? ・母親がたくさん子どもに話しければ語彙力は上がるのか? ビジネスでも日常でも大切にされている一つが、「言語化力」です。 しかし、言語化をするには、語彙力が豊富であることが必須です。 そのため、大人になって焦って語彙力を高めようと様々な取り組みをされる方がいらっしゃいますが、時間はかかりますし、なかなか語彙力が上がらない。 そんなときに、自分の子ども時代を後悔することになるのです。 では、子どもの語彙力を伸ばすには何が必 ...

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精神医学/Psychiatry 記事/Article

ネガティブ感情への異常反応とポジティブ感情が枯渇するうつ病の認知脳科学

・わくわくしません。

・感情に乏しいです。

・ネガティブな感情はなるべく抱きたくないです。

感情は我々人間の生活を豊かにしてくれる機能です。

恋人からプレゼントをもらって嬉しくなったり、新しいことをするのにわくわくしたり、他人とおしゃべりするのが楽しくなったり。

こうしたポジティブな感情は生きる楽しさを教えてくれます。

一方、人生はポジティブだけではありません。

試験で合格できず悲しくなったり、態度の悪い人にイラっとしたり、一人で寂しくなったり。

こうしたネガティブな感情を抱く時もあります

もちろん、ポジティブな感情もネガティブな感情も正常な範囲であれば問題ありません。

しかし、うつ病患者さんは、ネガティブな感情を激しく抱いたり、ポジティブな感情を全く示さなくなることがあります。

うつ病は感情障害とも呼ばれるくらいです。

患者さんの手記なんかを読むと「灰色の世界」という表現が出てきます。

それくらい感情の無い世界は、苦しいのです。

では、現代の精神医学ではどこまでうつ病の感情の謎を解明できているのか?

今回はうつ病患者さんの感情の脳内メカニズムについて解説します。

本記事では以下のことが学べます。

1. うつ病患者は、ネガティブな刺激に過剰に反応する。

2. うつ病患者は、ポジティブな刺激にあまり反応しなくなる。

3. ネガティブな記憶が優れており、脳活動も健常者と異なる。

4. 脳活動的にもポジティブな感情が続かない。

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①うつ病患者はネガティブな刺激に過剰反応し、ポジティブな刺激にあまり反応しない。

うつ病患者さんが苦しむのは、ネガティブな感情が強く出てしまうことです。

そして、ポジティブな感情が普通の方よりも表にでないことです。

うつ病患者の脳はネガティブな刺激に過剰反応する。

この研究は20年くらい前からあります。

Siegle et al.(2002)は、ポジティブな単語、ネガティブな単語、ニュートラルな単語をうつ病患者に見せて、健常者と比較しながら脳活動を測定しました。

すると結果は以下のようになりました。

depression amygdala negative emotion brain

図の脳領域は偏桃体と呼ばれる領域です。

この領域は感情を司ることで有名な部位です。

とくにネガティブな感情に関わります

図の左側が左脳の偏桃体で右側が右脳の偏桃体です。

上の図がうつ病患者の脳活動。

真中の図が健常者の脳活動を示しています。

下は無視で結構です。

黒い太線が、ネガティブな単語を見た時。

細い黒線が、ポジティブな単語を見た時。

点線が、ニュートラルな単語を見た時です。

すると、右脳でも左脳でも同様の結果が出ていますが、うつ病患者のネガティブな単語を見ている時の活動がグンと上がっていることがわかります。

一方、健常者はポジティブでもネガティブも関係なく、それほど違いはありません。

つまり、うつ病患者さんはネガティブな情報に脳が過剰反応することを示唆しています。

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うつ病患者の脳はポジティブな感情にあまり反応しない。

では、ポジティブな感情についてはどうか?

それを調べたのが、Surguladze et al. (2005)です。

彼らは、嬉しい表情をしているポジティブな顔、悲しい表情をしているネガティブな顔、ニュートラルな表情の顔の写真を見せて、健常者と比較して脳活動を測定しています。

顔の表情を使っているところがより日常生活に関係する実験ですね。

すると、脳活動は以下のようになりました。

depression positive emotion fusiform area brain

縦軸は、顔の処理に関係する領域の活動量を示しています。

ポジティブな喜びの表情を見ている時です。

黒がニュートラルな顔。

青が嬉しさ50%の顔。

赤が嬉しさ100%の顔です。

つまり、嬉しさの表情の度合いが異なるだけです。

左側が健常者で右側がうつ病患者です。

すると明らかに、うつ病患者の脳活動は嬉しい表情を見て下がっています

本来なら、健常者と同様に活動が上がるはずなのにです。

うつ病患者はポジティブな感情があまり出ないのだと思われます。

depression negative emotion brain amygdala

この図は、悲しみのネガティブな表情を見せた時の偏桃体の活動を示しています。

すると、先ほどの研究と整合的で、うつ病患者の脳活動がかなり上がっています

健常者は逆に下がっているほどです。

うつ病患者さんは、ポジティブな感情が湧かず、ネガティブな感情が強く出るのです。

fusiform are positive emotion depression correlate

この図の縦軸は、嬉しさのポジティブな感情を見ている時の顔を処理する脳領域の活動量です。

横軸は、うつ病の重症度を表します。

すると、うつ病が重症なほどポジティブな感情への脳活動が低くなっています。

うつ病が重い人ほど喜びの感情が出ないのです。

これはかなりつらいと思います。

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②うつ病患者は、ネガティブな情報の記憶が優れており、健常者と脳活動も異なる。

ネガティブな感情に対して強く反応してしまうことが記憶にまで影響しています。

Hamilton & Gotlib (2008)は、ネガティブな絵とポジティブな絵を見せて、一週間後にどれくらい見た覚えがあるかを健常者と比較してテストしました。

すると、以下のような結果になりました。

depression emotion memory

縦軸は記憶成績。

横軸のNEGがネガティブな絵で、POSがポジティブな絵です。

黒がうつ病患者で、白が健常者です。

図より、ポジティブな記憶はそれほど違いがありませんが、ネガティブな記憶はうつ病患者の方が成績は統計的に有意に高いです。

解釈が難しい結果ですが、健常者よりもネガティブな情報をよく記憶しているということです。

その時の脳活動が以下の図です。

depression negative memory amygdala brain

この図は、ネガティブな単語を見た時と同じ偏桃体の領域です。

左側が右脳の偏桃体で右側が左脳の偏桃体です(ややこしいです)。

すると、左脳の偏桃体では健常者とあまり違いは見られませんでした。

しかし、右脳の偏桃体では、うつ病患者はネガティブな絵を見た時の活動がかなり高くなっています

偏桃体の活動が高くなり、ネガティブ情報に過剰反応しています。

depression negative memory hippocampus brain connectivity

さらにこの図は記憶に関係する右脳の海馬とのつながりを示しています。

うつ病患者でネガティブな情報を見た時に海馬の活動がより強く出ていることがわかります。

この図の縦軸は、偏桃体とのつながりの強度を表しています。

つまり、感情に関する偏桃体と記憶に関する海馬のつながりがうつ病患者で強くなっています

感情的な情報が覚えやすいということは健常者の研究で複数示されています。

この研究はうつ病患者さんの記憶とネガティブ感情との関連を示したのです。

でも、うつ病患者さんは、ただでさえネガティブな情報に過剰反応します。

その上、ネガティブな記憶も頭の中に残ると、ネガティブなループが出来上がってしまいます

これは、辛い感情を反芻するメカニズムとしても考えられます。

ネガティブな感情に支配されて、ループして続くのです。

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③うつ病患者は、ポジティブな感情が脳科学的に続かない。

最後は、ポジティブな感情についてです。

ポジティブな感情に関しては①でご紹介しました。

ポジティブな感情があまり湧かず、脳活動も低いことが示されました。

その上で、ポジティブな感情が出ても、持続しないという特性もあります。

それを示したのが、Heller et al. (2009)です。

彼らは、うつ病患者と健常差者に、ネガティブな絵とポジティブな絵を見せました。

この絵を見ている時に、以下の三つの条件を行わせました。

一つ目は、ただ見るだけ。

二つ目は、絵を見てよりその感情が湧くように想像力を働かせます(Enhance)。

三つ目は、絵を見て感情が湧かないよう抑制します(Suppress)。

すると、以下のような結果になりました。

depression positive emotion reward system brain

図Aはいわゆる報酬系に関わる脳領域です。

以前の記事「うつ病の認知脳科学:中核症状の一つである気分の落ち込みの脳内メカニズム」ではうつ病患者は報酬系に異常があることを解説しました。

合わせて読んでいただけると幸いです。

図Cは、ポジティブな絵を見ている時の報酬系の活動量を示しています。

青がうつ病患者で、赤が健常者です。

この実験では、感情を抱いてどれくらい長く持続するのかを測定しています。

その測定時間の前半と後半に分けています。

1st Halfが前半で、2st Halfが後半です。

すると、前半でうつ病患者は健常者とそれほど違いは見られませんが、後半になるとうつ病患者の活動量が下がり、健常者の活動が上がったままです。

図Dも同様の結果です。

図Bは無視で結構です。

また、条件間で前半と後半の活動差を見たのが以下の図です。

depression positive emotion reward system brain activation

左が健常者で、右側がうつ病患者。

青が前半で、黄色が後半です。

上が、絵を見て感情を強めさせる条件。

真中が、絵をただ見ているだけ。

下が、感情を抑える条件です。

脳領域はポジティブな絵を見ている時の報酬系です。

すると顕著に差が出ているのが、うつ病患者の上の図です。

前半と後半で大きく活動がことなります。

後半の活動はかなり弱くなっています。

つまり、これらの結果から、うつ病患者は喜びなどのポジティブな感情が続かないことがわかります。

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④まとめ

以上より、うつ病患者のポジティブな感情とネガティブな感情の脳内メカニズムについて見てきました。

まとめると以下のようになります。

  • うつ病患者の脳は、ネガティブ情報に過剰反応する。
  • うつ病患者の脳は、ポジティブ情報にあまり反応しない。
  • ネガティブ感情では偏桃体の活動が過剰になる。
  • うつ病患者は、ネガティブ情報の記憶力が高い。
  • 偏桃体の活動が高く、海馬の活動も高まり、両者の領域のつながりが強い。
  • うつ病患者の頭の中は、ネガティブ感情の負のループが続く。
  • うつ病患者の脳は、ポジティブな感情が続かないようになっている。
  • 特に報酬系の活動が関係している。

うつ病の辛い点は、ネガティブ感情の負のループがずっと続きうることです。

それなのに、ポジティブな感情は続かず、頭の中が不幸の連鎖になっています。

反芻思考とも言いますが、ネガティブで頭がいっぱいになったりします。

最近では、心理療法なども活用されてきています。

中には、瞑想などのマインドフルネスの効果も謳われています。

マインドフルネスに関しては「マインドフルネスとは?科学から見るその効果と副作用」こちらの記事で解説しています。

ネガティブなループを断ち切り、ポジティブな感情を持続させられるか

これこそが、うつ病患者の治療の根本的な解決になるかもしれません。

本記事がうつ病に悩む方の一助になれば幸いです。

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参考文献

Hamilton & Gotlib et al. (2008). Neural Substrates of Increased Memory Sensitivity for Negative Stimuli in Major Depression. Biological Psychiatry, 63(12), 1155-1162.

Heller et al. (2009). Reduced capacity to sustain positive emotion in major depression reflects diminished maintenance of fronto-striatal brain activation. PNAS, 106(52), 22445-22450.

Siegle et al. (2002). Can't Shake that Feeling: Event-Related fMRI Assessment of Sustained Amygdala Activity in Response to Emotional Information in Depressed Individuals. Biological Psychiatry, 51, 693-707.

Surguladze et al. (2005). A Differential Pattern of Neural Response Toward Sad Versus Happy Facial Expressions in Major Depressive Disorder. Biological Psychiatry, 57, 201-209.

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