・親の学歴が子供の性格に影響するのか?
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子供の性格は様々な要因によって形成されます。
遺伝子や育った環境など数えるとキリがありません。
でも、自分の家庭状況(親の要因)が子供の性格に影響することが最近の研究で示されてきています。
その中でも、親の学歴は、子供の学歴だけではなく性格傾向にも影響するという衝撃的な研究もあります。
今回は、そんな目からうろこの研究を紹介します。
本記事では以下のことが学べます。
1. 親の学歴が子供の学歴に影響すること。
2. 親の学歴が子供の正確に影響すること。
3. 遺伝子レベルで学歴が性格に影響すること。
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①親の学歴が子供の学歴と性格傾向に与える影響
親の収入が子どもに影響を与えることは数多くの研究で示されています。
例えば、以前の記事「正社員になる前に注目すべき仕事探しの三つの事実」では、親の職業が子供の職業選択と関連することが示されていました。
しかし、親の学歴が子供の学歴や性格に関係することも最近の研究で示されてきています。
Lundberg (2013)は、約一万五千人もの男女を調査し、親の学歴と同居状態が子供の学歴や性格に影響することを示しました。
Lundberg (2013)は、親のタイプを四つに分けています。
グループ①:高学歴で一緒に暮らしている親
グループ②:高学歴で別々に暮らしている親
グループ③:低学歴で一緒に暮らしている親
グループ④:低学歴で別々に暮らしている親
これら四つのタイプです。
親のタイプを四つに分けた時の子供の学歴を示したのが以下の図です。
上の図が子供が男性で、下の図が子供が女性です。
ねずみ色が高卒の割合、黒が大学で、白が大卒以上の割合を示します。
Group①~④は先ほどの親のタイプと一致します。
すると、男女とも同じような傾向を示し、親の学歴が高いグループ1とグループ2で、大学や大卒以上の割合が多いことがわかります。
一方、低学歴の親のグループ3とグループ4では高卒の割合が高いです。
一緒に住むかどうかよりも親の学歴が強いと思われます。
次の図は、グループ①~④と子供の性格傾向との関係を示した図です。
性格傾向は、ビッグ5と呼ばれる検査指標を使っています。
ビッグ5とは、
Openness(開放性):知的好奇心や創造性など人が持つ目新しさや多様性を好む度合い。
Agreeableness(協調性):思いやりや協力的であるなど同調性の度合い。
Neuroticism(神経症傾向):心理的ストレスを受けやすいなど情緒不安定性の度合い。
Extraversion(外向性):エネルギッシュや外向きなど他人との付き合いなどで刺激を求める度合い。
Consciousness(誠実性):頑固さや集中力など信頼できる傾向や忠実性の度合い。
の五つの指標によってその人の性格傾向を表す心理学の方法です。
この図から、特に関係がありそうなのが、Openness(開放性)とAgreeableness(協調性)とNeuroticism(神経症傾向)です。
男女で同様の傾向が出ていて、学歴が高い親の子供ほど、開放性と協調性が高く、神経症系統が低いという結果です。
※神経症傾向に関しては、こう項目を反転させています。なので、この図では高いほど低いことを示します。
これらの研究結果より、親の学歴が高いと、子供の学歴も高くなり、開放性と協調性が高く神経症傾向が低いという性格傾向になることが分かります。
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親の学歴が子供の性格傾向に直接影響を与える?
先ほどの研究は、親の学歴と同居状態の二つの要因について大まか分類した時の子供への影響を見てきました。
では、これらを裏付ける直接的な研究はないのか?
もちろんあります。
それが、Sutin et al. (2017)の研究です。
Sutin et al. (2017)は、家庭環境と性格傾向を調査した様々な公的統計調査を集めて、数万人規模のサンプルからなるデータを基に、親の学歴がどのように子供の性格傾向に影響するのかを調べました。
こちらも性格検査としてビッグ5を使用しています。
親の学歴と子供の性格傾向との間に統計学的に有意な関係性があったのが以下の指標です。
この図は、縦線の0のところから離れているほど親の学歴が子供の性格傾向に影響することを示しています。
左右の図は気にしなくてもいいです。
プラスの値では、親の学歴が高いほどその性格傾向が高くなります。
マイナスの値では、親の学歴が高いほどその性格傾向が低くなります。
図を見ると以下の関係が読み取れます。
Aは、神経症傾向であり、マイナスの値をとり、親の学歴が高いほど子供の神経症傾向が低いことが示されています。
Bは、外向性であり、プラスの値をとり、親の学歴が高いほど子供の外向性が高いことが示されています。
Cは、開放性であり、プラスの値をとり、親の学歴が高いほど子供の開放性が高いことが示されています。
一方、協調性と誠実性は統計的に関係があるとは言えませんでした。
概ね、Lundberg (2013)と同様の結果を示しており、特に、神経症傾向と開放性は一致しています。
つまり、親の学歴が高いほど、子供の神経症傾向が低く、開放性が高くなりやすいのです。
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②学歴の高さとその人の性格傾向は遺伝子レベルで関係する⁉
最後に、学歴がその人本人の性格傾向に与える影響が遺伝子レベルで関係することを示した研究を紹介します。
Mottus et al. (2017)は、3000人以上の遺伝子バンクデータを分析して、学歴と性格傾向との関係性を遺伝子レベルで調べました。
その結果が以下の図です、
この図は、実際の教育歴と、教育遺伝子スコアという遺伝子をも含めた教育指標と、ビッグ5による性格傾向との関係性を示した図です。
図の左側半分のPhenotype educationが実際の教育歴とビッグ5のそれぞれの指標との関係性を示します。
右半分のEducation polygenic scoreが遺伝子と教育歴を合わせた指標で、このスコアとビッグ5の指標との関係性を示します。
ビッグ5の指標は、上から、Neuroticism(神経症傾向)、Extraversion(外向性)、Openness(開放性)、Agreeableness(協調性)、Consciousness(誠実性)を示します。
なお、統計的に有意な関係性があるのが太字で表されています。
重要なのが、左半分と右半分で大体似たような傾向を示していることです。
特に大切なのが、神経症傾向と開放性で、左右両方の指標で有意に関係性があります。
つまり、神経症傾向は、教育歴が高いほど低くなり、遺伝子的にも当てはまります。
一方、開放性は、教育歴が高いほど高くなり、遺伝子的にも当てはまる結果です。
前の二つの研究を考慮すると、神経症傾向と開放性で学歴がどのように性格傾向に影響するのかがわかります。
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③まとめ
以上より、親の学歴が子供の学歴と性格傾向に影響することがわかりました。
まとめると以下のようになります。
- 高学歴の親の子供ほど大卒以上の割合が多くなり、学歴が高くなる。
- 高学歴な親の子供ほど、神経症傾向が低くなり開放性の性格傾向が高くなる。
- 教育歴と神経症傾向・開放性の関係性は、遺伝子レベルで関係する可能性がある。
子供が育つ環境要因では、これまで親の年収が大きく影響していることが知られていました。
今回の記事では、親の学歴も子供の発達に大きな影響を及ぼすことがわかりました。
重要なのは、あくまでも傾向であって、必ずしもそうなるとは限らないことです。
親が高学歴だから、必ず子供が高学歴で開放性が高くなるわけではありませんし、親が低学歴だから、子供の学歴も低くなるわけではありません。
あくまでも、傾向として親の学歴が影響しうるよということです。
親のどのような特性が子供に影響するのか、まだまだわからないことが多いですが、面白い研究だと思います。
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参考文献
Lundberg (2013). the College Type: Personality and Educational Inequality. IZA Discussion Paper No. 7305.
Mottus et al. (2017). Educational Attainment and Personality Are Genetically Intertwined. Psychological Science, 1-9.
Sutin et al. (2017). Parental Educational Attainment and Adult Offspring Personality: An Intergenerational Life Span Approach to the Origin of Adult Personality Traits. Journal of Personality and Social Psychology, 113(1), 144-166.
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