・音楽を聴いていると気分が上がる!
・なぜ音楽はずっと聴いていられるのだろうか?
勉強は10分でも集中力が続かないのに、音楽なら何時間でも聞いてられる。
そんな経験をする方は多いと思います。
では、音楽はそもそもなぜ心地よく、ずっと聞いてられるのでしょうか?
心理学や脳の研究では、音楽を聴いた人の脳のメカニズムを特定しつつあります。
そのエビデンスから、なぜ音楽ならずっと聴いていられるのかをご紹介します。
本記事では以下のことが学べます。

2. 音楽がなぜ気分を上げるのか?
3. 音楽で気分が上がらない人もいる⁉
- もくじ
- ①音楽はなぜ心地よく聞いていられるのか?音楽と脳の報酬系
- ②音楽と脳と身体の反応の関係:なぜ音楽で気分が上がるのか?
- ③音楽で高揚しない人がいる⁉ 音楽だけ報酬にならない不思議な人たち。
- ④まとめ
- ⑤参考文献
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①音楽はなぜ心地よく聞いていられるのか?音楽と脳の報酬系
心理学では音楽がどのように人に影響を与えるかを研究したものが1990年代には出てきています。
しかし、音楽と脳の関係は、脳の計測装置ができた2000年代初期前後くらいに研究が行われ始めています。
その中でも、Bloodら(1999)の研究は記念碑的なものです。
彼らは、音楽のコード(和音)を使って、心地よい和音とそうでない音を実験参加者に聞かせて、音楽による脳活動を測定しました。
すると結果は以下の通りです。

まず、左側の縦軸が心地よさを表します。
右に行くほど和音ではなくなっていくことが示されています。
すると、左の和音ほど心地よいと判断されています。
右側は嬉しいか悲しいかを判断させています。
横軸は同じで数字が高いほど和音ではなくなっていきます。
しかし、嬉しさや悲しみなどの感情はあまり和音かどうかで変化はありませんでした。
和音程度ではあまり感情に変化はありませんが、心地よさに違いがあると言えます、
この心地よさによる脳活動の変化を見た結果が以下の図です。

この図のa~cの図は、和音から外れた心地よくない音を聞いた時の脳活動です。
心地よくない時は、海馬周辺部や後帯状回など、不快な気持ちの時に活動する脳領域が赤く光っています。
一方、dとeの図は、心地よい和音を聞いた時の脳活動です。
心地よい時は、前頭眼窩野など報酬系と呼ばれる部分に関わる脳領域が活動していることがわかります。
つまり、音楽は、人間にとって報酬となりうることを示したのです。
お金や気持ちよさなど、音楽が報酬になりうるのはずっと音楽を聴いていられる理由の一つになります。
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②音楽と脳と身体の反応の関係:なぜ音楽で気分が上がるのか?
先ほどは、音の心地よさに関する研究ですが、今回はミュージシャンを対象に、自分が好きな音楽を提出させて、実験参加者がそれぞれ思う好きな音楽を聞かせる研究をしました(Blood & Zatorre, 2001)。
自分は好きでも他の人が好きとは限らないところが大事で、自分が選んだり、他の人が選んだりした音楽でも気分が上がると答えた場合と、他の人の音楽で気分が上がらない場合とを比較しています。
また、この研究は脳の測定だけではなく、音楽による心拍数などの身体の反応も見ています。
まず身体の反応の結果が以下の図です。

この図の上のHRが心拍数で、Chillが自分の気分が高揚した時で、Ctrlが気分が高揚しなかった時を表します。
すると、左側の傍線では、気分が高揚したと報告した時により心拍数が高くなっていることがわかります。
また、右側の点で表現されたグラフで、Chillの部分に行くほど心拍がだんだん上がっていくのがわかります。
音楽による気分の高揚に合わせて、身体も反応していることがこの図からわかります。
その時の脳活動を表した結果が以下の図です。

この図で大事なのが、bになります。
いずれもChillに反応した脳領域になります。
これらの領域では、先ほど出てきた前頭葉の領域と、視床下部の報酬系の領域の活動が見られます。
つまり、身体が高揚し、さらに脳活動でも報酬となる領域の活動が見られています。
後の研究ではミュージシャンだけではなく、一般人でも同じ結果が出ています。
さらに、視床下部の領域でも、Nacc(側坐核)と呼ばれる領域が特に音楽で活動することが示されています(Menon & Levitin, 2005)。
このように、音楽による身体の高揚感と脳の報酬系は密接に関係していると言えます。
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③音楽で高揚しない人がいる⁉ 音楽だけ報酬にならない不思議な人たち。
最後に、音楽で身体が高揚せず、音楽だけ報酬にならない人たちがいることを報告した研究があります。
それが、Martinez-Molinaら(2016)の研究です。
彼らは、自分が心地よいと思う音楽を提出させ、その音楽を聞かせた後に、どれくらい気分が高揚したかで、三つのグループに分けました。
一つ目は、とても高揚するグループ。
二つ目は、それなりに高揚するグループ。
三つ目は、全く高揚しないグループです。
この三つのグループに提出された音楽を聞かせて、音楽の高揚感・心地よさとその脳活動を計測しています。
すると、結果は以下のようになりました。

この図は、先ほど登場した報酬系の側坐核(Nacc)の活動を表しています。
棒グラフの縦軸は、脳活動の強さです。
横軸は、グループと条件で、左のオレンジが全く高揚しないグループ、真ん中の緑が少しそれなりに高揚するグループ、右の青がかなり高揚するグループです。
ストライプがギャンブル課題をさせてお金と言う報酬を得た時の活動で、塗られているのが音楽を聴いた時の活動です。
すると、オレンジで塗られた傍線だけ活動が下がっていることがわかります。
つまり、音楽で全く高揚しない人は、むしろ音楽で報酬系の活動が下がるのです。
全く高揚しないか、それ以上に嫌に感じている可能性はありそうです。
また、この側坐核(NAcc)は、聴覚の脳領域とつながりがあることが示されており、聴覚と報酬系との関係も示されました。
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④まとめ
以上より、音楽と脳の報酬系との関係をまとめると以下のようになります。
- 心地よい音楽は脳の報酬系を活動させる。
- 心地よい音楽は脳だけではなく、身体の反応を上げ、高揚感が生じる可能性がある。
- 音楽と身体の反応と脳の報酬系は密接に関係している可能性が高い。
- 音楽と聴覚の領域のつながり具合は、音楽を報酬と感じるかに関係しそう。
音楽をずっと聴けるという人は、音楽が報酬になっているのではないかと今のところ結論できそうです。
音楽と身体の高揚感と脳の報酬系が関係するからです。
しかし、研究の中には、音楽自体が大事ではなく、身体が高揚するから脳の報酬系が活動すると主張する研究論文もあります(Salimpoorら, 2009)。
音楽・身体・心・脳がどう関係しているかが今後研究で明らかにされるでしょう。
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⑤参考文献
Blood AJ & Zatorre RJ. (2001). Intensely pleasurable responses to music correlate with activity in brain regions implicated in reward and emotion. Proc Natl Acad Sci U S A, 98(20), 11818-23.
Blood, A., Zatorre, R., Bermudez, P. et al. (1999). Emotional responses to pleasant and unpleasant music correlate with activity in paralimbic brain regions. Nat Neurosci 2, 382–387.
Martínez-Molina N, Mas-Herrero E, Rodríguez-Fornells A, Zatorre RJ, Marco-Pallarés J. (2016). Neural correlates of specific musical anhedonia. Proc Natl Acad Sci U S, 113(46), E7337-E7345.
Menon V & Levitin DJ.(2005). The rewards of music listening: response and physiological connectivity of the mesolimbic system. Neuroimage, 28(1), 175-84.
Salimpoor VN, Benovoy M, Longo G, Cooperstock JR, Zatorre RJ.(2009). The rewarding aspects of music listening are related to degree of emotional arousal. PLoS One, 4(10), e7487.
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